2015年にシマンテックから分社して1年が経過したベリタステクノロジーズ。米国本社のCEOを務めるビル・コールマン氏は「5年間、ベリタス関連の製品が出ていなかったが、戦略を統合して製品を拡張した」と語る。今回、コールマン氏に、分社後の同社のビジネス概況と2017年度の展望について聞いた。

Veritas Technologies CEO ビル・コールマン氏

データにまつわるあらゆる課題を解決する「360度データ管理」

コールマン氏は2016年について、「われわれは以前、レガシーなデータセンターに最適な製品を提供しているというイメージが強く、"クラウドのインテグレーション""デジタルトランスフォーメーション"を実現するベンダーとして名前が挙がるベンダーではなかった」と振り返った。

そこで、同社は分社化に伴い、2016年は「バックアップ、ストレージのベンダー」から「情報マネジメントのベンダー」への変革に取り組んできたという。

「分社する前は5年間にわたり、Veritasブランドの新製品がリリースされていなかった」と明かしたコールマン氏、情報マネジメントプラットフォームを提供するという戦略の下、製品の拡大を図ってきたと語った。

新たな戦略の下、データをディスカバリーしてカタログ化し、Software Definedストレージを活用し、クラウドを連携することで、企業がデジタルトランスフォーメーションを実現する製品を整備した。

それが、昨年12月に発表された「360度データ管理ソリューション」だ。同ソリューションは、バックアップ製品「Veritas NetBackup」を中核として、非構造化データを可視化する「Veritas Information Map」、事業継続を支援する「Veritas Resiliency Platform」、ならびにコピーデータ管理用の「Veritas Velocity」の3つのソリューションが統合されている。

同ソリューションでは、企業内にクラウドと、あらゆる場所に散在するデータのバックアップとリカバリを行うするとともに、データの可視化、コピーデータの統合管理を実現する。

「360度データ管理」を実現するソリューション群

これらのソリューションは単一のプラットフォームで連携することが可能であり、オープンソースのクラウド構築プラットフォーム「OpenStack」への対応が予定されている。

そして、コールマン氏は「企業にとって『ITコストを抑えること』『コンプライアンスを遵守すること』『GDPRなどのデータ保護の規則に対応すること』が将来の課題となる。加えて、企業はデジタルトランスフォーメーションへの対応が迫られるが、われわれはこうした課題を解決するためのソリューションを提供している」と、コールマン氏は、同社が企業が直面することが予想されるさまざまな課題を解決できるベンダーに変わったことを訴えた。

企業の将来にメリットを与えるソリューションの提供を

コールマン氏はこうした取り組みの成果として、前四半期の受注は当初の目標をはるかに上回っていることを明らかにした。その要因は何か。

同社の成長要因は2つあるという。1つはセールスのメソドロジーの変更だ。そもそも、シマンテック時代はベリタス製品担当の営業が十分ではなかったので、企業のIT戦略のカギをにぎるキーマンにベリタス製品について理解してもらう機会が少なかった。加えて、旧シマンテックはコンシューマーに営業のフォーカスを絞っていたので、チャネルパートナーとの関係を強化する施策をとることにしたという。

「営業プロセスも変更し、ツールもアップグレードした。今までいたメンバーはなじまないところがあるかもしれないが、変えていきたい。今後は、コンサルティングも強化していく」とコールマン氏。

もう1つの成功要因は360度データ管理を実現するプラットフォームだ。企業は、同社が打ち出した新たな戦略を好意的に受け止め、それが導入という形で結実しているそうだ。

コールマン氏はその例として、あるヨーロッパの銀行を紹介した。その銀行は契約更新を迎えるにあたって、700万ドルから800万ドルの契約金額が予定されていたが、同社の360度データ管理プラットフォームを紹介したところ、契約金額が3100万ドルに跳ね上がったという。この金額は「第1段階」のものであり、今後、プロジェクトが進むと、さらに金額が上乗せされることになる。

こうした例を踏まえ、コールマン氏は「自社が将来進みたい方向をサポートする製品を求めている。われわれの製品はそれにこたえるものというわけだ」と自信を見せた。

先に、コールマン氏はかつての同社のビジネスはレガシーのデータセンターを利用している顧客が中心だったと述べたが、そうした顧客も同社の新たな戦略を「待っていたようだ」という。

「企業は今、ビジネスモデルを変える必要に迫られており、それを実現するITモデルを求めている。また、社内のデータを活用して、競争力とすることも必要とされている。それらを実現するのが、われわれの統合された情報マネジメントプラットフォームだ」

昨今、ハイブリッドクラウドが注目を集めているが、そこでは複雑なデータ管理を求められる。オンプレミスやクラウドなど、保存された場所にかかわらず、データを適切かつ容易に管理することを実現するべりタスのソリューションは、ハイブリッドクラウドを検討する企業の一助になるかもしれない。