さくらインターネット、アカツキ、ピクシブ、メルカリの4社は2月14日、福岡市内で記者会見を開き、同市における事業展開について発表した。今回、4社は同市内に新オフィスを開設し、記者会見には福岡市の髙島宗一郎市長も出席した。

社員が「住みたい街」にオフィスを開設

さくらインターネット 代表取締役社長 田中邦裕氏

最初に、さくらインターネット 代表取締役社長の田中邦裕氏が「スタートアップが盛んな福岡において、われわれとしても成長がしたいと考えている。20年前は全国でスタートアップが加熱していたが、現在は熱量の高い都市から誕生している。その中でも多様性や寛容性といった新たな価値観が芽生える都市こそ成長し、企業が集積する。恵まれた気候など定量的に表せるものは多くあるが、移住したいと思える都市こそ、企業の成長につながるのではないか。効率性を考えれば東京だけで業務を行うのも1つの手段だが、今や効率性から創造性の発揮への転換が求められている。そのような中で福岡市に進出する判断を下したの必然」と述べた。同社では営業、開発、スタートアップ支援の3つを軸に事業を展開していくという。

そして「多くの企業は効率化を追求した上で原価を最適化し、利益を生み出しているが、売り上げが伸び悩んでいる。企業は利益を出さなければならず、その手段は2つある。1つは効率化し、原価を抑えることだ。しかしながら、われわれはもう1つの手段として、売り上げの拡大と企業を成長させることで利益を生み出すことに舵を切る。すなわち、効率性よりも快適性、創造性を求め、社員が住みたい、進出したい場所に拠点を作ることが成長への一番の近道であると考えている。効率性だけを考えればオフィスを設けるよりも出張したほうがコストを抑えられ、かつ短期的な利益を生むが、長期的な売り上げ・利益は生み出さないだろう。今回、福岡市に事務所を開設し、ビジネスの中に組み込むことは成長を目指す手段の象徴と言える。効率性を考えて東京に集中する時代は終わり、企業が持続的に成長し、利益を生み出すためには次の時代に生まれ変わらなければならない。また、成長する人・街とともに、ビジネスに取り組むことで自分自身の成長にもつながる」と、田中氏は力を込めて語った。

アカツキは開発、ピクシブは新事業、メルカリはカスタマーサポートを軸に

アカツキ 共同創業者 取締役COO 香田哲郎氏

続いて、アカツキ 共同創業者 取締役COOの香田哲郎氏が「現在、われわれはゲーム領域とアウトドアやレジャーなどアクティビティの予約サイトの運営を行うリアルライフ領域が柱となっている。今後、デジタル領域とリアルライフ領域を融合させたVRやARなどの新しい体験を提供することに取り組む。福岡では3月中旬から下旬にオフィス開設を予定しており、ゲーム事業を中心に展開する。なぜなら、ゲームソフトの企画・政策・販売を手がけるレベルファイブなどの影響でゲームに関する人材が豊富であり、そのような人材を採用することで共に成長し、日本からグローバルに通用するゲームを開発・提供していきたいと考えているからだ。2年間で60人程度の採用を検討しており、福岡在住者やUターン人材などを想定している」と語り、開発に軸足を置いた事業展開を進めていく方針であることを明かした。

ピクシブ 代表取締役社長 伊藤浩樹氏

次にピクシブ 代表取締役社長の伊藤浩樹氏が「福岡を選択した理由は人が成長するということに加え、今後グローバル展開に注力していく方針であるため、福岡はアジアへの架け橋になると考えているからだ。現在、多方面で事業展開しているが、最終的にはあらゆるクリエーターのインフラになりたいと思っており、それは単にネット上で楽しむだけのサービスで終わるのではなく、クリエーターを支えるほか、オタクコンテンツのファンに楽しさを提供し続けるようなプロダクトを提供していきたい。そのような目標に向けて自社だけではコンテンツの不足が想定されるため、ピクシブを代替するプロダクトを構築していかなければならない。そのような意味で東京とは違う場所や独立した考え方でクリエーターやコンテンツのファン獲得の継続が必要なため、福岡にオフィスを開設する。新事業を展開し、エンジニアなども含めて2017年は10~20人の採用を検討している」と述べた。

メルカリ 取締役 小泉文明氏

サポートセンターを設立するメルカリ 取締役 小泉文明氏は「これまで仙台市で230人の従業員でサポートセンターを運営していたが、手狭となっている。福岡では2017年内に50~60人、将来的には200人を超える規模の採用を検討しており、ユーザーの期待に応えるサポート体制を整える。当初はカスターサポートを中心とした事業となるが、そのほかの職種についても採用していきたいと考えており、会社の成長に合わせて福岡のオフィスを拡大していく。今後は現在の日本、アメリカ、イギリスに加え、アジアを見据えた事業展開も計画している」と語った。

スタートアップ企業にとって魅力的な福岡市の制度

福岡市 髙島宗一郎市長

髙島市長は福岡市について「人口増加率は国内1位であり、税収伸び率は3年間連続で過去最高を更新している。市の施策としては特にスタートアップに注力しており、スタートアップ都市を宣言し、スタートアップ特区を設けている。新規ビジネスを開始する際にスタートアップ法人減税、スタートアップカフェやスタートアップビザなどビジネス環境の構築、規制緩和などで国内外の企業が福岡市に進出するための支援を行っている。また、福岡市独自に市税の負担を抑える条例もあり、これらにより法人税は22%(2016年度:29.97%)に軽減され、スタートアップの開業率は7.04%と3年連続で政令指定都市の中で1位となっている」と胸を張る。

また、スタートアップ関連の施策については「『FUKUOKA Smart East』は地下鉄、JRの3つの駅に囲まれ、また、広さ50ヘクタールの高速道路や空港にも至近な距離に位置する九州大学の箱崎キャンパス跡地において、IoTやモビリティ、セキュリティなど、さまざまな最先端技術を実証する研究開発を行う拠点として整備する。そして、天神地区の中心地に立地する旧大名小学校を活用し、市内のインキュベートを集積させ、さらにはスタートアップカフェを設け、産官学のマッチングなどを行う。加えて、2017年度は市内全域にIoT向けの無線通信規格であるLoRaWANのネットワークを張り巡らせることも計画しており、IoTの事業を展開したいスタートアップの企業はセンサーなどを使い、社会実装でビジネスを試みることも可能になる」と、市長は期待を込めた。

なお、すでに旧大名小学校跡地の利活用については、さくらインターネットとアパマンショップホールディングス、福岡地所の3社による共同事業体が取り組み、2017年春には開設を予定しているという。

左から小泉氏、香田氏、髙島市長、田中氏、伊藤氏