代表取締役社長である菅谷俊二氏が佐賀大学で農業を学んでいたつながりから、現在も本店は佐賀県となっているオプティム。現在、佐賀県および佐賀大学と合同で農業のIT化を推進する「IT農業三者連携協定」に取り組んでいる。キャッチコピーは「"楽しく、かっこよく、稼げる農業"を佐賀からITを使って実現する」。農業分野の抱える課題をITによって解決しようという産学官三者連携協定だ。
農業分野の課題解決をITで佐賀から!
「農業分野では特に高齢化が進み、65歳以上がメインになっているという現状があります。また、農作物の栽培に必要な勘や経験といった大事なものの引き継ぎの難しさもあります。佐賀県では20年前に農家が5万件でしたが、現在は2万5000件と半減しているのに、耕作面積は減っておらず負担が増えるばかり。それでいて、所得が増えないという状態にあります」と語るのは、オプティム 執行役員 セールス&マーケティングユニットの休坂健志氏だ。
若手を増やし、技術の伝承を行うことが急がれる。先に紹介した「楽しく、かっこよく、稼げる農業」は若年層にとって魅力ある仕事に農業を変換していく考えだ。すでに機械化はかなり進んでおり、この先の労力低減や効率化を実現するにはITの力が必要になる。そこでオプティムの持つドローンやウェアラブル端末を活用する技術の活用が着目された形だ。
「佐賀大学の創立60周年講演で社長の菅谷が講演をさせていただいたことをきっかけに、佐賀大学と共同で農業分野に取り組もうという話が出たのですが、研究で終わってしまうのでは意味がない、実際の農家の方々に使っていただくための普及活動も必要ということで、佐賀大学農学部長の渡邉啓一先生から佐賀県に声を掛けていただきました。その結果、佐賀県の農林水産部および農業試験研究センターが加わり、三者合同になりました」と休坂氏は語る。
稼げる農業の実現に最新の研究結果をつぎ込む
「楽しく、かっこよく」は、農業=キツイ・辛いというイメージを払拭する方向で実現する。では「稼げる」はどう実現するのか。それは同じ耕作面積でも病気や害虫の影響を受けずに十分な収量を得ることや、収穫物の質を向上させて買い取り価格を伸ばすこと、また作業時間や労力、農薬・肥料を減らすことで実現するという。
休坂氏は「そこに至るために必要なのが、まずはITを活用して勘や経験に頼っていた部分をデジタル化することです。そして、その効果を実際に減らせるものと増やせるものを指標化します。作物ごとに異なる指標化を実施し、稼げる農業を実現しようという3段階の取り組みです」と説く。
具体的な取り組みとしては「世界No.1の農業ビッグデータ地域になろう」というビジョンを掲げ、佐賀県内7カ所で28品目の作物に対してドローンを活用した生育過程のトレースを行っている。さらに、ウェアラブル端末を利用した作業支援がある。これらの技術を利用して「安心・安全・おいしい」作物を生産するという流れだ。
同氏は「一般的にこういった産学官連携のような取り組みだと、大学からは先生1名が参加することが多く、中には名前が連ねられているだけに近いような場合もあるようですが、この協定は違います。佐賀大学農学部の各専門分野の先生たちが一体となって参加し、農業の専門知識とITの融合を行なっています」と取り組みが順調に進んでいることをうかがわせた。だからこそ、特定品目ではなく28品目を同時に取り組むということが可能になったのだろう。