東北大学などは12月6日、2次元平面内に並んだガラス固体は、結晶性物質と同じしくみで莫大な音波ゆらぎの増幅が生じることを、スーパーコンピュータを用いたシミュレーション計算により見出したと発表した。
同成果は、東北大学金属材料研究所 芝隼人特任助教、山田泰徳研究員(研究当時、現在は中国・北京計算科学研究センター)、名古屋大学大学院理学研究科 川﨑猛史助教、大阪大学大学院基礎工学研究科 金鋼准教授らの研究グループによるもので、12月6日付けの米国科学誌「Physical Review Letters」オンライン版に掲載された。
ガラス物質は液体のように乱れた原子配列を保ちながら、固体の性質である硬さも伴っており、ガラス物質が示す性質のうち、どこまでが結晶性固体と共通し、どこからが違うのか、長いあいだ議論が続けられてきた。なかでも分子の動き(ゆらぎ)に関しては、規則的な原子配列の結晶と不規則な原子配列のガラス物質とでは異なると考えられてきたが、ガラス物質中の分子が実際どのように動くのか、完全には解明されていない。
規則正しく原子が並んだ結晶では、平面(2次元面)において長い空間距離をカバーする大きな音波振動ゆらぎが発生する(Mermin-Wagnerの定理)ことが知られており、同研究グループは今回、この音波振動に着目。ガラス物質でも同じような運動が起こるのではないかと考え、スーパーコンピュータを用いてシミュレーションを行った。
まず同研究グループは、2次元、3次元のガラス形成体の古典分子動力学計算により、剛性の低い2次元系において特有のゆらぎが見られることを発見した。また、この2次元系特有のゆらぎを再定式化すると、長いスケールの音波が重ね合わさることにより、長さスケールの対数関数に従う振幅の微弱な発散が生じていることを明らかにした。結果として、2次元のガラス物質でも2次元結晶と同様に、熱力学極限で発散する無限大振幅のゆらぎが存在することもわかった。さらに、2次元ガラス形成体には、2つの振動運動が存在し、その2つを区別して解析できることが明らかになった。
今回の成果について、同研究グループは、低次元の分子の自由度が主要な役割を果たすソフトマターなどを始めとする材料のゆらぎについて、今まで見過ごされてきた新たな物性を提案するものであり、また広い意味でのガラス物質の今後の物性解明に大きく寄与するものであると説明している。