オンラインマーケティングの広告媒体として重要度が高まっているFacebook。広告運用で高い成果を上げたオイシックス株式会社とカゴメ株式会社のEC事業のキーマンが、効果的なクリエイティブを作るポイントや広告運用のノウハウを語りました。
Facebook広告の出稿を行う企業が増える中、近年は通販での成功事例も目立ち始めました。一方、「Facebook広告は通販では費用対効果が合わない」「ブランディグには使えるが、ダイレクトレスポンスには向かない」という意見もまだ根強いようです。Facebook広告は通販に有効か否か。それを確かめるため、アライドアーキテクツ株式会社が開催したFacebook広告をテーマとしたセミナーを取材しました。
【当日のプログラム】
■パネルディスカッション「Oisix、カゴメが取り組むFacebook広告施策とは?」
<スピーカー>
オイシックス株式会社 西井 敏恭 氏
カゴメ株式会社 原 浩晃 氏
アライドアーキテクツ株式会社 鬼山 真記 氏
<モデレーター>
アライドアーキテクツ株式会社 村岡 弥真人 氏
■特別セミナー「効果的なFacebook、Instagram広告活用法について」
<講師>
アライドアーキテクツ株式会社 鬼山 真記 氏
Oisix西井氏、カゴメ原氏が語るFacebook広告の要諦
パネルディスカッションに登壇したのは、オイシックス株式会社の西井敏恭氏とカゴメ株式会社の原浩晃氏。Facebook広告を開始した時期はオイシックスが約2年前、カゴメは今年5月からと異なりますが、共に通販で高い成果を上げています。約1時間の登壇中、西井氏と原氏は、広告効果が高かったクリエイティブの特徴や、費用対効果を上げるための広告運用のノウハウなど、成功事例に裏打ちされた貴重な話を惜しげもなく披露しました。
オイシックス株式会社 CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー) 西井敏恭氏。 |
カゴメ株式会社 マーケティング本部通販事業部 原浩晃氏。 |
<テーマ1>Facebook広告は、通販に効果があるのか?
パネルディスカッションの最初のテーマは「Facebook広告は通販に効果的か」について。早くも核心に迫るテーマです。モデレーターの村岡氏は、Facebook広告の予算を運用開始からわずか3か月で当初の10倍以上に増やしているカゴメの事例に言及し、投資を急拡大させている理由をカゴメ 原氏に質問しました。
原氏「広告効果が高いから投資を増やしている。商品と媒体の相性が良い」
この質問に対して原氏は、「Facebook広告はCPAや定期購入への転換率が高い。効果が高いから投資を増やしている」と回答。Facebook広告を使うことで野菜飲料シリーズ「つぶより野菜」の顧客を効率的に獲得できているとした上で、「『つぶより野菜』とFacebookの相性が良いためだと思う」と見解を示しました。
原氏は、Facebookは他の広告媒体と比べてターゲティングの精度が高いため、顧客分析をしっかり行ってターゲットを絞れば、優れた効果を得られる点がメリットだと指摘しました。カゴメは、「つぶより野菜」の顧客のサイコグラフィックデータ(興味、関心、価値観、ライフスタイルといった心理学的属性)をアンケートハガキなどで調査したところ、「インドア派で、知識欲求が強く、社会情勢や資産形成に対する関心が高い」という特性が顕著に現れたことから、その分析結果に基づき配信先のターゲティングを行い、成果を上げたそうです。
西井氏「顧客獲得と転換率で分析すると、非常にパフォーマンスが良い」
続いて村岡氏は、オイシックス・西井氏にFacebook広告の成果を質問しました。これに対して西井氏は、「新規獲得の効率や、定期購入への引き上げ率を総合的に分析すると、非常にパフォーマンスが良い」と回答。今ではリスティング広告や自然検索と並び、Facebook広告が重要な顧客獲得媒体になっていると説明しました。
また、オイシックスは2年以上前から、相当な金額をFacebook広告に投資しているにもかかわらず、広告効果は下がっていないとのこと。その理由について西井氏は、「約2400万人のFacebookユーザーの半数近くは当社の潜在顧客だと想定しており、まだまだリーチの余地はある」との見解を披露、Facebook広告への期待感を示しました。
<テーマ2>Facebook広告と、他のWeb広告の違い
次のテーマは、「Facebook広告と他のWeb広告にはどのような違いがあるか」について。西井氏と原氏は、Facebook広告の特徴として次の点を上げました。
・広告配信のターゲットを明確に選択できる
・購買前の消費者の声(コメント)を収集し、マーケティングに生かせる
・ネットワーク系広告とFacebook広告のユーザーは重複が少ない
・クリエイティブを工夫すれば広告を認知されやすい
<テーマ3>広告代理店と付き合う上で重視すべき点は?
Facebook広告の運用を外部に委託する場合、代理店とどのように付き合うべきかというテーマにも言及。これに対する西井氏と原氏の意見は概ね一致し、「自社の商品や顧客について、代理店にしっかり理解してもらうことが重要」だと指摘しました。
西井氏はこれまでの経験から、「代理店に任せきりではなく、広告に詳しい人材を社内に置くことも必要だと思う。PDCAを上手く回すには、広告運用について代理店とディスカッションするぐらいの姿勢が必要」と述べました。
SNSでは「広告らしくない写真」が最も効果的
<テーマ4>Facebook広告で効果的なクリエイティブとは?
パネルディスカッションが進行するにつれ、テーマはより実務的な内容に。続いて取り上げたテーマは、「Facebook広告で効果的なクリエイティブは、どのようなものなのか」について。カゴメが実際に配信した広告のクリエイティブを題材として取り上げ、議論しました。
スライドに写した9枚の写真のうち、広告効果が最も高かったのは、右下の写真だったそうです。カゴメ・原氏によると、「CPAも獲得件数も、格段に良かった」とのこと。逆に、左上の広告は、紙媒体などで効果が高かったクリエイティブをSNSに流用したそうですが、実際のクリック数はゼロ。Facebook広告は、宣伝色が強いクリエイティブは効果が低く、逆に、広告らしくない写真がクリックされやすかったと説明しました。
広告らしくない写真のCPAや獲得件数が最も優れていたことに対し、聴講者からは驚きの反応がありました。また、原氏本人も、「右下のクリエイティブを初めて見たときは、手抜き写真かと思ったし、『野菜100%』を訴求しているの商品なのに、氷で薄めている写真を使うのはいかがなものかと思った。しかし、実際は最も効果が高かった」と本音を語っていました。
<テーマ5>「広告らしくない写真」が最もクリックされたのはなぜか?
広告らしくない写真が最もクリックされた理由について、西井氏は、「右下の写真はタイムラインに馴染みやすかった。広告効果が高かったのは、そういう理由ではないか」と指摘。「Facebookユーザーが、実際にカゴメさんの野菜ジュースを飲んで写真を稿するとしたら、右下のような写真になると思う。つまり、リアリティーがあったということでは」と分析しました。
また、西井氏は、「経験上、いかにも広告だとわかるクリエイティブはFacebookで嫌われやすい。このあたりがFacebookの面白いところ」と語った上で、Facebook広告の表示アルゴリズムは、ユーザーが嫌う広告をフィードに表示しにくくするため、そのこともクリック数に影響しているのではないかと分析しました。
Facebookの特性を理解した上でクリエイティブを作れば成功する
パネルディスカッションの終了時刻が迫る中、モデレーターの村岡氏は、「Facebook広告を運用する上で、最も大切なことはなんでしょうか」とパネラーに水を向けると、西井氏は「Facebook広告の特性をきちんと理解した上で、クリエイティブを作れば、高い効果が出ると思う」と回答。原氏もこの意見に同調しました。
最後に、聴講者との質疑応答を実施。聴講者から、「Facebook広告の投資の回収期間は?」、「Facebook広告がクリックされても注文に繋がらない場合、ランディングページに問題があるのか?」、「Facebook以外のSNS広告について、どのように評価しているか」など、多くの質問が上がり、盛況の中でパネルディスカッションを終えました。
オイシックスやカゴメの広告効果、購買データに関する具体的な数字は会場限定で言及されましたが、そうしたクローズドな情報を得られることも、セミナーやパネルディスカッションに実際に参加する魅力の一つかもしれません。
今回、「Facebook広告は通販に役立つのか」という疑問を解消すべく取材した結果、Facebookの特性をしっかり理解した上で、媒体に合ったクリエイティブを制作すれば、高い効果が得られることがわかりました。今後もFacebook広告に注目していきたいと思います。
セミナー「効果的なFacebook、Instagram広告活用法について」売り上げに直結するSNS広告の事例公開
当日は、ご紹介したパネルディスカッションに先立ち、「効果的なFacebook、Instagram広告活用法について」と題するセミナーも行われました。顧客獲得や売上拡大につながった事例に基づき、クリエイティブの作り方や、広告運用で成功させるために必要な考え方について、アライドアーキテクツ株式会社・アドテク事業部の鬼山真記氏が解説しました。
SNSは私的な場と心得るべき
鬼山氏は冒頭、SNS広告で成果を出すには、ユーザーの心理や行動を理解することが必要だと強調。「SNSのタイムラインは、友人の近況報告や知人の私生活の情報が流れてくることが多く、ユーザーにとってプライベートな空間だ。そこに企業の広告が流れてくると、ユーザーは煩わしく感じることがあるということことを理解することが必要」と指摘しました。
【SNS広告の特徴】
(1)リスティング広告は、ユーザーが能動的な状態で向き合うことが多いが、SNS広告は、ユーザーが受け身の状態で向き合う
(2)SNS広告を配信する際は、タイトルを「子供が喜ぶ秋の献立レシピ5選」「『普通に食べたら痩せた』の普通って何?」とするなど、ユーザーが思わず読みたくなるような工夫が必要。
(3)「残りわずか」「いまなら50%オフ」といった、いかにも宣伝的なメッセージは、SNSでは嫌われやすいため、避けるべき。
CPAが半額以下に改善したクリエイティブとは
続いて鬼山氏は、Facebook広告で高い成果を上げたクリエイティブ事例を複数紹介しました。例えば、特定保健用食品のサプリメントの通販を展開している製薬会社は、広告のクリエイティブを、SNSで拡散されやすい記事風にしたことでFacebook広告の関連度スコアが従来の倍以上の7~10点へと上昇。CTRは3%から8%へと上昇し、CPAは8000円から半額以下の3500円に改善したそうです。
FacebookとInstagramの同時運用が効果的
続いて鬼山氏は、広告効果を高めるための運用方法として、FacebookとInstagramへの同時配信を推奨しました。Facebook広告の管理画面でInstagramの広告を運用できる上、Facebook社が提供している広告最適化ツールを使うと、FacebookとInstagramの両方の広告枠の中から、自動的にCPAを最適化して出稿されます。そのため、2つのSNSを併用することで、「配信範囲が広がり、有利な広告枠が見つかりやすくなる。出稿ボリュームも増えるので、CVRを最大化したいときにも便利」と説明しました。
FacebookとInstagramの広告を同時運用したことで、インプレッション単価が15~20%低下したケースや、クリック単価が最大32%改善したケースがあるそうです。
ユーザー心理を理解し、好かれる広告を
鬼山氏は、セミナーのまとめとして、「SNS広告を実施する上で押さえておくべきことは、SNSユーザーの心理や行動を理解し、ユーザーに好かれる広告を展開すること」と総括。思わず読みたくなる記事風のクリエイティブや、ユーザーコンテンツを活用したクチコミ風のクリエイティブの効果が高いことも改めて解説しました。
同社はSNS広告のバナー制作に特化したクラウドソーシングサービスを手がけていることなどにも触れ、「SNS広告に取り組む企業をサポートしていきたい」と話し、セミナーを締めくくりました。
■取材・執筆
ライトプロ株式会社 渡部 和章
本稿は、ソーシャルメディアマーケティングラボにて掲載された記事を転載したものです。
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