2016年で設立30周年を迎える日本マイクロソフトは7月5日、新年度にあたり経営方針記者会見を開催した。会見では、同社代表取締役社長の平野拓也氏による昨年度FY16の振り返りや今期の戦略などが説明された。
会見冒頭、平野社長は、Windows 10の自動アップグレード問題に言及。無償アップグレード期限まで1カ月を切ったが、このアップグレードを巡っては、「強制的にOSがWindows 10になった」という声が上がるなど、移行を希望しないユーザーへ強い混乱を招いた。
平野社長は会見冒頭で「アップグレードに関する情報発信が不十分だった」と詫びた。その上で、コールセンターの人員を4倍に増やすなどサポート体制を強化。通知内容のフィードバックを受け、平野社長自ら米国本社へフィードバックを行い、通知ポップアップの表示も改善。また、政府や消費者庁とも連携し、告知を進めてきたと話した。
2017年度においても昨年同様、「徹底的に変革を推進する」と述べ、今までのPCを核とした販売重視から、利用価値重視へ人を核とした考え方へシフトすると話した。「過去にとらわれず革新と挑戦を進め、Windowsプラットフォームにとどまらない、ユーザー視点の新しいエコシステムを構築したい」(平野社長)とした。
注力する分野としては、人工知能技術を活用した「コグニティブサービスによるイノベーション」と「顧客のデジタルトランスフォーメーションの推進」を挙げた。
現在、Azureで提供している「Microsoft Cognitive Services」では、「知識」「言語」「音声」「視覚」「検索」の機能をAPI経由で利用できるもの。すでに、森林環境分析、交通渋滞予測、患者の再入院予測や医療従事者の配置最適化など世界中で利用されている。日本でも今後、大手金融機関が機械翻訳サービスの活用を検討しているという。
クラウドの利用促進についても、引き続き進めていくが、2016年度第4四半期では32%だったクラウドの売上比率を2017年度末までに、50%へ引き上げるとした。また、各業種でクラウド活用を促進するため、約15名ほどが所属する「クラウドインダストリーソリューションユニット」を立ち上げると発表。「製造、金融、流通・小売、政府・自治体、先端研究、医療の6分野に絞り、各業種や業務に応じたシナリオを提案していく」と述べた。