人口が減少傾向に突入した日本。少子化がますます進み、教育産業に関わる企業は戦々恐々としている。矢野経済研究所が発表した「教育産業市場に関する調査結果2015」によると、学習塾・予備校市場規模は2013年に9,360億円、2014年に9,380億円、2015年は9,420億円(見込み)となんとか横ばいを維持している。だが、教育市場の対象人口が少なくなっていけば、企業による顧客の奪い合いがますます激化していくことが容易に想像できる。

質問に挙手して能動的に答える。アクティブ・ラーニングのもっともシンプルな姿だ(写真:PIXTA)

そうした中、教育に関わる企業が熱い視線を送っている分野がある。最近、よく耳にするようになった「アクティブ・ラーニング」と呼ばれる教育方法だ。

アクティブ・ラーニングは、生徒が“能動的に学ぶ”ということから名付けられた。2012年に文部科学省中央教育審議会が出した答申の中で、「受動的な受講」から「能動的な学修」への転換が示され、以降、大学を中心にこの言葉が使われ始めた。さらに2014年に下村文科大臣が「小中高の教育の見直しも必要」としたことで、大学以外の学校教育の現場でもアクティブ・ラーニングが取り組まれるようになってきた。

大学入試改革で求められる“知の応用力”

これほどアクティブ・ラーニングが注目されるのは、背景に“大学入試改革”があるからだ。この改革は2020年度(2021年)から実施され、それまでの「センター試験」を廃止。新たに「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」が導入される予定となっている。

この新テストで問われるのが「思考力」「判断力」「表現力」といった“知の応用力”だ。センター試験のペーパーテストのような“知識を記憶”→“試験時に再生”といった知識量を競うような試験ではなく、記述や作図などの解答が求められるとみられる。

こうした試験への対応力を向上させるため、アクティブ・ラーニングが必要になるというわけだ。極端な話、センター試験のような選択式のテストなら、徹夜を重ねるなりして知識を詰め込めば“短期間で何とかなる”場合もある。だが、新テストで問われる思考力・判断力・表現力を磨くには一朝一夕にはいかず、生徒によっては長い期間の学習が必要。この記事のタイトルに“大学入試改革前夜”と表現させていただいたのは、入試改革まで5年を残しているが、それでも準備期間は短いかも、という意味合いからだ。

では、アクティブ・ラーニングの現場では、どのような授業が行われているのだろうか。