最後に、長崎県東彼杵町で地方創生のプロジェクトを進めている、INCREF 代表の高島卓也氏の事例を紹介したい。高島氏は九州地域を中心に、中小企業におけるクラウドサービスの普及や事業再生、バックオフィスの効率化を解決すべく、活動している。

高島氏が導入しているクラウドサービスには、以下の4つのサービスがある。

  • Airレジ(タブレット型レジ)
  • Square(スマホ決済)
  • MFクラウド会計(会計)
  • Chatwork(ビジネスチャットツール)

――中小企業のクラウド導入に対する状況はどうでしょうか?

INCREF 代表 高島卓也氏

高島氏: 基本的に、地方はほとんどがアナログです。システムを導入しているとしても、20年前のものを使っていたり、一部しか使っていないということが非常に多い状況です。

会計事務所については、お客さんたちがアナログなので、「自分たちもアナログでいいや」という意識。ほとんどの会計事務所がITやクラウドを使うイメージを持っていません。「記帳代行が自分たちの最も大きな仕事だ」と言っている会計事務所もあり、今は「ScanSnap」などによって領収書を電子化するだけで一括して仕訳を終わらせられるサービスもある中、いまだに記帳代行が仕事だと言っているのは、非常に遅れている状況です。

――実際にクラウドサービスの導入は、どのように進められているのでしょうか?

高島氏: ITリテラシーが「ない」というよりも「マイナス」なので(笑)、まずセミナーで「Airレジ」や「MFクラウド会計」を紹介し、便利だと思ってもらえるようにしました。

導入が決まった後は、必要な情報をもらって、ソフトのセットアップなどはこちらで行い、その後、使い方に関して1日レクチャーを実施しました。その後の1カ月間は、「何かあったら何時でもいいから連絡をしてほしい」と言って、LINEや電話などで24時間対応を行っていました。最初は深夜でも連絡があったものの、2週間もすると電話がかかってこなくなり、1カ月すると自分たちで運用していけるようになりました。

――クラウドサービスを導入した効果は?

高島氏: 地方全体に言えることですが、事業承継問題が多く、2代目・3代目の人が家業を継ぎたがらないというケースが多くあります。その理由をつきつめていくと、最も多いのが、効率の悪いことや大変な仕事を子どもの頃から目の当たりにしていることから、その仕事を継ぎたくないと感じてしまうことにあります。

クラウドサービスによって業務効率を上げていき、仕事がしやすいかたちになり、「これだったら継ぎたい」「このシステムを入れるならやれるんじゃないか」という流れが出てきています。