ロボットとファクトリー オートメーション(FA)のファナックは4月18日、シスコ、産業用オートメーションと情報ソリューションを専門とするRockwell Automation、人工知能ソリューションのPreferred Networksの4社で協業すると発表した。
4社は共同で、CNC(コンピュータ数値制御装置)と産業ロボットのみならず、周辺デバイスやセンサーを接続して製造・生産を最適化するためのアナリティクスを提供するプラットフォーム「FANUC Intelligent Edge Link and Drive(FIELD)system」を開発する。なお、このシステムは、今年の秋から冬にかけてリリースしていく予定だという。
FIELD systemは、ファナックのオートメーション システムで使用されるCNC、ロボット、周辺デバイス、センサー向けのアナリティクスを提供するためのプラットフォームで、ネットワークおよびコンピューティング インフラストラクチャ、アプリケーション、ミドルウェアを含むソリューションを提供する。また、機械学習機能とディープ ラーニング機能も提供する。
このプラットフォームを利用することで、アプリケーション開発者、センサーおよび周辺デバイス メーカー、システム インテグレーターは、設備効率、生産高、品質を向上させるソリューションを構築することができるという。
FIELD systemの目的は、工場設備の稼働状況の把握と迅速な保守だ。保守では、製造装置の異常を事前検知し、修理を迅速に行うことが目的だ。このシステム上では、同社が今年の1月に発表したZDT(Zero Downtime)も動作する。「ZDT」は、ファナックとシスコシステムズが共同開発しているソリュションで、工場内に設置されたサーバでロボットの稼働状況を解析し故障予知を行う。
「ZDT」は、ロボットや制御装置、製造工程に何らかの不具合が発生する可能性をシステムが事前に検知し、ダウンタイムが生じる前に情報を提供するため、事前の保守スケジュールに基づく操業停止時間内に問題への対応を済ませることを可能にする。
4社は連携し、産業用イーサネットスイッチを利用してロボットをCisco UCS(Unified Computing System)に接続することで自動車メーカー向けのシステムを実装。システムはすべて、ファナックとシスコのZDTデータ収集ソフトウェア上で実行され、これにより、製造ダウンタイムの短縮とコスト削減が短期間のうちに実現することができるという。
ファナック 代表取締役社長 稲葉善治氏は、FIELD systemを開発した背景を「現在、人件費の高騰、労働人口の減少などにより製造業において自動化の要求が高まっている、また、海外の生産拠点では、カスマイズが必要で、日本と同等の品質が要求されている。そのため、IoTの開発が最も求められている。ZDTシステムには6,000台、秋までには10,000台が接続される。将来は全ファナック製品が接続される。そのための製品がFIELDsystemだ。今回のシステムは、EdgeHeavyという実際の機械を中心としたプラットフォームという点が他社と一番違う点だ。システムは、オープンプラットフォームで、他社のシステムも接続可能だ、将来は製造業のスタンダードとしていきたい」と述べた。
ファナック 専務取締役 ロボット事業本部長 稲葉清典氏は、FIELD systemは、Edge側で処理することが特徴だと説明する。これまでは、IoTのデータをクラウドなどの上位レイヤで処理することが通常だったが、FIELD systemはEdge側、すなわち工場側で処理するのが特徴だ。
今回、機械学習や人工知能の機能を提供するPreferred Networks 代表取締役社長の西川徹氏も、「これまでデータの分析は上位のレイヤーで行っていたが、クラウドにアップするだけで数百ミリ秒のロスが発生する。エッジデバイスで処理することで、リアルタイム処理が実現する。それには機械学習や人工知能が役に立つ。今回は、個々の機械が学習してそれを集約する分散協調型機械学習を取り入れており、学習効率が高い」と語った。
また、協業する米シスコシステムズ シニア バイス プレジデント IoT 兼 アプリケーション担当 ローワン・トロロープ(Rowan Trollope)氏は、「今回は製造業だけでなく、IT業界においても歴史的ナパートナシップだ。両者はこれまで別々だったが、今回の協業で融合し、未来の工場現場が実現する。今回のシステムにより、構成を市場の変化に応じて柔軟に対応できる」と語った。
なお、ファナックは同日、山梨県忍野村にある同社本社の自然館において、実際FIELD systemで利用する新商品発表展示会を行い、プレスに公開した。