課題は山積み、一方で可能性も大きい

冒頭から述べているとおり、日本国内でのザクロ栽培はほとんど実績がない。スーパーなどの店頭に並ぶカリフォルニア産ザクロはだいたいが500g前後と大きく、見た目もツヤっとしていて美しい。消費者好みのルックスというわけだ。

カリフォルニア産ザクロには見た目では及ばないが、カットフルーツ(アリルのみ)や果汁なら見た目はそこまで重要な要素にはならない(むしろ、購入者としても皮をむく手間が省ける)。あとはいかにコストを削減できるか、機能性をアピールできるか、といった点がカギとなりそうだ。

とはいっても、「実がならないことにはなんともいえない」(村松氏)。試験栽培が成功し、栽培マニュアルが整えば、本格的にザクロ栽培をスタートできる。店頭に国産ザクロが流通するには数年から数十年かかりそうだが、小宮山氏は「2020年までにはなんとか」と意欲をみせている。2020年の東京オリンピック開催時には、ふだんからザクロを食べている国や地域の人々が日本へやってくるからだ。

小宮山氏と村松氏は中国の泰安で開催された国際シンポジウムにも参加。一面がザクロ畑という、日本では考えられない光景にも出会ったそうだ。そのほか、トルコやイスラエルで栽培・生産が急激に伸びているなど注目度が高いと実感したという

ところで、「第7次ワインブーム」が2012年頃から始まり、今後も息長く続くとみられている。ブームが続いている理由のひとつが国産ワインの品質向上だ。小宮山氏は山梨県ワインセンター支所長などを務め、国産ワインの振興にも貢献した人物。ブドウの栽培技術や醸造技術が数十年かけて研究されてきたからこそ、国産ワインは現在の地位を獲得した。

日本におけるザクロ栽培も現在は"仕込み"の時期といえる。小宮山氏によれば、農家側の関心は低く、積極的に作ってみたいという声はまだあまり聞かないそうだ。しかし、ザクロはアリル部分だけでなく、皮や種子、葉も漢方薬や化粧品として使えるというコストパフォーマンスに優れた果物。特産品になれば花が咲くシーズン(しかも、初夏に比較的長く咲く)には観光需要も喚起できそうだ。今、まだ脚光を浴びていないのが逆にチャンスともいえる。