このように、偽物の存在は、企業や消費者の双方にとって百害あって一利なしだ。偽物が流通しないように、国内大手のECサイトなどは、独自の対策を行っている。

国内最大手のインターネットオークションサイトやショッピングサイトを運営しているヤフーの社長室 コーポレート制作企画本部 上山達也氏は、「海外では権利者とプラットフォーマーが対立するケースもありますが、国内では『消費者保護』の観点から、権利者と協力し、偽造品の販売を排除する活動を続けています」と語る。

ヤフー 社長室コーポレート制作企画本部 上山達也氏

ヤフーは、実際に権利者から真贋鑑定の情報提供をうけたり、自主パトロールを拡大したりするなどして、早期の段階から偽造品を一掃することに成功しているのだ。

国内最大手のショッピングモールサイトを運営している楽天でも、ユーザーの問い合わせや自主パトロールなどに加え、楽天市場での調査購入や権利者への真贋鑑定依頼などを実施。

「その上で、ニセモノと確定した場合には、出店契約解除といった厳しい措置を実施しています」と楽天・執行役員・河野奈保氏は語る。

楽天・執行役員・河野奈保氏

このように国内においては、権利者とプラットフォーマーの協力により、偽物を流通する機会を最小限に抑えるための努力が続けられているのだ。

しかし、懸念もある。「フリマアプリ」といった新興サービスでは、こういった対策にまで手が回っていないのだ。これらのサービスでも、企業の成長と共に模造品・海賊版対策は強化されていくのだろうが、現状においては、これらのサイトを通じて偽物が流通する可能性は少なくない。

偽物を買いたくない!消費者自身の意識向上も

流通している偽物の被害に遭わないようにするためには、消費者自身の意識向上が不可欠だ。水際で被害に遭わないように、消費者自身が自衛する必要がある。

模造品や海賊版について、消費者自身はどのように考えているのだろうか。内閣府の「知的財産に関する世論調査」によると、模造品や海賊版を「どんな理由でも購入すべきではない」と考える人は、50%以下。半数近くの消費者は「正規品より安いので、購入するのは仕方がない」「正規品にはないデザインしようのものもあるので、購入するのは仕方がない」「公然と売っているので、購入するのは仕方がない」というように、「購入するのは仕方がない」と考えている、という結果だ。これでは、水際での対策も厳しいというのが実情だろう。

しかし、パネラーの多くは、この調査結果と実態とでは大きな隔たりがあると考えている。

たとえば堤氏は、「2014年~2015年にかけて、赤ちゃんの抱っこひも偽物が出回り、市場で流通している半分以上が偽物という状況になりました」と説明。しかしこのケースの場合は、安全面での懸念が大きく、すぐに情報を提供したところ、口コミで広がり、半年ほどで偽物は1%以下になったという。

こういった経験から、「大半の人が、偽物を“購入するのは仕方がない”と考えている、とは到底思えない」と、堤氏。また、販売サイトの口コミなどを見ても、「偽物を掴まされた消費者の怒りはすさまじい」(上山氏)という現場での実体験も報告された。消費者自身も、偽物を購入したくないという心理があることが浮き彫りになった。

商品を安心・安全に商品を利用したい。偽物は、この前提を崩し、消費者を危険にさらすことさえある。偽物は、企業、消費者、プラットフォーマーにとって何の利益も生まない。そればかりか、偽物は犯罪組織の資金源となっており、偽物の購入は、犯罪に間接的に荷担していることにも繋がっている。

企業、消費者、プラットフォーマーが一丸となり、模倣品や海賊版を撲滅するための取り組みをさらに推進していく必要があるだろう。