KDDIは、ホテル業界向けソリューションの展開を強化している。「国際ホテル・レストラン・フードショー」に出展した同社は、光ファイバー向けのG-PONと無線LAN、そしてガラスディスプレイによる新たなインタフェースを展示した。

KDDI ソリューション事業本部 ソリューション推進本部の部長 有泉 健氏は、「無線LAN、バリアフリー、ホスピタリティ、お客さま体験価値(カスタマーエクスペリエンス)を提供する」と話す。

G-PONとは?

同社は12日に全国のプリンスホテルで無線LAN環境を提供すると発表したが、これはこの取り組みの一環として提供されるもの。一度認証すればホテルと関連施設の間でユーザーが手間なく継続利用できる「Wi-Fiローミング」を提供する。

KDDIが出展したウォール型ディスプレイ。タッチパネルを搭載して、ユーザーがタッチすることでさまざまな機能を実現できる

同社のホテル業界に対する取り組み。無線LAN化やホテル内ネットワークのメタル導入は2012~13年以降、順次進めてきているが、さらにバリアフリーやホスピタリティ、通信インフラの刷新といった取り組みを開始している

有泉氏は、ホテル業界への取り組みは「インバウンドの急増に尽きる」と指摘。ホテル業界に限らず、自治体がカンファレンスなどのビジネストラベル誘致を進めていることから、今後もこうした需要は拡大するとみている。

また、単なる無線LANの導入では、昨今の通信量増大に対応できない状況になりつつある。そこで同社は、ホテル内に敷設されたメタルによるLAN回線ではなく、光ファイバー向けG-PON(Gigabit Passive Optical Network)を導入することで、高速・広帯域化に加え、省スペース、省コスト化を実現した。実際に軽井沢プリンスホテルのイーストコテージエリアに導入が行われた実績もある。G-PONはメタルと異なり、スプリッターだけで分岐ができるほか、1本のファイバーが60km程度まで延伸できるので、大型施設でも容易にカバーできる。

G-PONは世界で利用が進んでおり、ホテル内のネットワークをシンプルに、省スペース化できる

光ファイバーの利点

G-PONによってビルやオフィスの"インテリジェント化"が可能になるという

光ファイバーとメタルのスペースの差

今後の高速化も予定されている

このソリューションは省スペースで済むだけでなく、「特にランニングコストに効いてくる」と有泉氏。こうした点を一番のメリットというホテル関係者もいるそうだ。今後の高速化や広帯域化も予定されており、有泉氏は「ファイバー1本ひいておけば、50年間使える」とアピールする。

インフラ以外も事業者をサポート

こうしたインフラの刷新や無線LANの導入だけでなく、KDDIが進めるのは「バリアフリーとホスピタリティの向上」という視点でのソリューション作りだ。これには「(ホテルの)お客さまのペイン(苦痛)を吸い上げてプロアクティブに対応する」(同)というサービスを提供したい考えだ。

ロイヤリティを高めるために顧客の行動を把握し、プロアクティブに対応するという

特に訪日外国人がストレスを感じるのが言語であり、こうしたニーズを把握するために、接点として「タッチスクリーンを使う」という。一般的に、スマートフォンのような1対1のデバイスとしてタッチスクリーンがあるが、より大型のタッチスクリーンを搭載したディスプレイを設置し、マルチタッチによって複数人が同時に利用できるようにすることで、1つのデバイスに来客者が集約される。

スマートフォンが1対1のデバイスなのに対し、多対1のデバイスによって接点を作り出す

複数の人が同時にタッチしてさまざまな操作が可能なタッチスクリーン

これはブラウザで飛行機の予定をチェックしているところ。こうした機能はアプリケーションによって自由に拡張できる。デモで使われているのはOSにWindowsとLinuxを採用しているそうだ

手書きできるホワイトボードのような使い方も可能

ペンのカラーを変えるといったこともできる

表示されている画面を画像として保存し、それを個人に割り当てたボックスに保存し、メールで送信するといった機能も用意。デモでは、個人を認証するために2次元バーコードを使っていた

こうして接点を作ることで、「どういうニーズがあるか」「何が求められるか」を知ることで、事前に対策を取れるようにする。

接点となるタッチスクリーンには、スマートフォンで採用されている「Gorilla Glass」でも知られるCorningの技術を活用。Corningのコーティングは0.2mm厚と薄くて軽量ながら、高い強度や抗菌効果などがあり、「壁面の素材の品質を永久に保てる」と有泉氏。

Corningの特徴

これによってガラスをインテリアや内装として活用でき、このガラスをタッチスクリーン化することで、ホテルのロビーや客室に違和感なく情報端末が溶け込める。部屋の鏡がディスプレイになれば、タッチスクリーンとして利用者が操作したり、室内の環境制御コントローラーをタッチスクリーン化して、その操作情報がフロントに伝わって状況を把握できるといった未来図も描く。また、顧客情報と組み合わせれば、その顧客にあったサービスを分析して、次回のサービス向上につなげるといったことも可能になるという。

ガラスにディスプレイを埋め込んだもの

ホテル客室内の環境制御コントローラー

このソリューションはSANKO TELECOMと協業して構築した。環境制御コントローラーは手動操作だけでなく、人感センサーで「入浴中は部屋の照明を抑える」といった制御を行い、省電力化も図るなどの顧客/ホテル双方のメリットが見いだせるとしている。

室内にiPadのようなタブレットを設置し、コントローラーとして活用できるアプリケーションのデモ。チェックイン時のパスポートの国によって、言語を英語や中国語などに自動で切り替えられ、室内に入ってすぐに自分の言語で利用できるようになるという

環境制御コントローラーとしても利用できる

また、壁面に設置するタッチスクリーン以外に、テーブル型タッチスクリーンも用意した。なお、必要なアプリケーションについてはそれぞれの環境に適したものが重要であるとしており、個別に開発を行い、最適化された顧客との接点を提供できると案内していた。

IPTVの機能も備えている

テーブル型のデバイス

有泉氏は、これらを「ビルまるごとソリューション」と紹介し、年内には壁面ディスプレイを提供する計画。2020年の東京五輪に向け、今後も開業・リニューアルが見込まれるラグジュアリーホテルをメインターゲットに展開していきたい考えだ。

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