ネットアップは2月2日、ANAインターコンチネンタルホテル東京において、年次イベント「NetApp Innovation Tokyo 2016」を開催した。同イベントでは、同社が提唱するデータ管理のビジョン「Data Fabric」の概念を紹介するため、さまざまな分科会セッションや展示が行われた。
基調講演は、「Building Data Fabric Together ~ネットアップのData Fabricがもたらす新たなビジネス価値~」というテーマの下、代表取締役社長の岩上純一氏をファシリテーターとして進行した。岩上氏の簡単なあいさつの後、米国NetApp プレジデント兼Go-to-Marketオペレーション責任者 ロブ・サーモン氏が登壇した
サーモン氏は冒頭「ネットアップの成功には『イノベーション』『パートナーシップ』『文化』という3つのポイントがある。今日のイベントではこの3つのポイントを感じてほしい」と語った。続いて、世界的にビジネスの課題は売上向上やコスト削減といったものから変化していない一方で、世界では、デジタルの変革が進んでことを指摘。「われわれの仕事のやり方も家庭での生活もデジタル変革によって変わりつつある。デジタル変革は、ビジネスで重視されるスピードやアジリティを達成するポイントにもなっている」
さらに、サーモン氏はハイブリッドクラウドにおいてネットアップがリーダーシップをとっていることを強調した。エンタープライズの分野でプライベートクラウドの構築を多くサポートしてきた経験を踏まえ、「プライベートクラウドを使う企業の課題は、システムがサイロ化していることにある」として、その状態を打開することがネットアップの役割であると述べた。
サーモン氏の話を引き継いだのは、米国NetApp クラウド・ビッグデータCTO ヴァル・バーコビッチ氏だ。「今や、世界最大のホテル会社はホテルを持っていないAirbnbであり、世界最大の運輸業者は車を持たないUber。彼らはデジタルイノベーターだ。彼らは従来のITを使わずに、アプリケーションに開発者をイネーブルさせたことで、イノベーションを起こした」と語ったバーコビッチ氏は、こうしたデジタル変革を可能にするData Fabricがすでに企業で利用できる状態にあることを強調した。
Data Fabricでは、ローカルにあるデータやクラウド上のデータなど、さまざまな場所でデータの自由度を高めて、シームレスはデータ管理を実現する。
バーコビッチ氏は、同社のストレージOS「clutered Data ONTAP」が同社のハードウェアに加えて、他社製品やクラウドでも利用可能なソフトウェアになっていることを紹介し、クラウド環境にも対応した「Cloud ONTAP」となったことで、弾力性というメリットが得られるようになったことをアピールした。「Data Fabricを使うことで、ロックインされることなく、複数のクラウドのデプロイメントを享受することができる」(バーコビッチ氏)
デモンストレーションは、ネットアップ 常務執行役員CTO 近藤正孝氏とネットアップ ソリューション技術本部SE4部 システムズエンジニア 田端秀敬氏の掛け合いで行われた。近藤氏が企業のIT担当者が持ちそうな疑問を発し、田端氏が答えるという形で進められたデモンストレーションでは、「NPS(NetApp Private Storage)」を使ったマルチクラウド環境における障害対策が紹介された。
デモでは、待機系のSQLサーバがAzure上に、アクティブ側のSQLサーバがAWS上で動いている環境で、AWS側のインスタンスを止めた場合に5秒ほどで切り替わる様子が披露された。近藤氏はこうしたデータベースの切り替えが容量にかかわらず、同じ時間で実現可能であることを紹介し、「データがNPSの中にあり、クラウド内を移動していないから可能になる動き。実行環境だけを動かしている。マルチクラウド環境でシステムを瞬時に移動させて完全なデータ保護を行えるのがNPS」と語った。
「Cloud ONTAP」についても「オンプレミスのclutered Data ONTAPと機能はまったく同じ。動く環境は変わるけれど、すべて同じ管理画面、すべて同じAPIで動作します」と田端氏が語り、同一管理画面でクラウド上のものとオンプレミスのONTAP、NPSをすべて管理できることを見せた。
さらに、バックアップソリューション「NetApp AltaVault」でAWS上のデータをAzure上に展開するデモンストレーションも実施。まだ製品化されていない機能だというが、実際にデータが2つのクラウドをまたいで移動される様子が紹介された。