日本ヒューレット・パッカードは1月27日、リソースを自由に切り出して組み立てることができる「コンポーザブル・インフラストラクチャ」に基づく、オンプレミスとクラウドが共存する「ハイブリッド・インフラ」向けの最新プラットフォーム「HPE Synergy」を発表した。
「HPE Synergy」は、コンピュート、ストレージ、ネットワークスイッチの主要モジュールと各種アダプタを単一または複数のフレーム(筐体)に収納し、コンポーザブル・インフラストラクチャを構成できるよう設計されている。
HPE Synergy自体は、米Hewlett Packard Enterprise(HPE)が2015年12月に開催したイベント「Discover 2015 London」で発表済みだが、今回は具体的な新製品のお披露目となる。
「HPE Synergy」を披露する日本ヒューレット・パッカード 執行役員 サーバー事業統括本部 事業統括本部長の大月剛氏(左)と米HPE HPEシナジー&HPEブレードシステム コンバージドデータセンターインフラストラクチャ VP兼GMのニール・マクドナルド氏(右) |
各モジュールはコンポーネント化されており、数・構成を自由に変えることが可能。例えば、CPUの処理能力を重視する場合は複数のコンピュートモジュールを多く積み、また、ストレージが求められる業務ではストレージを多く積むなど、用途や目的に応じて性能を柔軟に変化させることができる。
また、複数のフレーム間にある物理リソースを、同一のリソースプールとして扱えるのもポイントの1つ。1個のシャーシに4個のフレームを搭載でき、将来的にはシャーシ5台(20フレーム)を単一のリソースプールとして扱えるようになるという。
新スタイルのビジネスに向けてサイロ化を打破
米HPEでは、コンポーザブル・インフラストラクチャの実現に向けた取り組みとして「Project Synergy」を公開している。
このProject Synergyは、「Software Automation Partner Ecosystem(ソフトウェア自動化)」「Infrastructure as Code(インフラストラクチャのアプリケーションコード化)」「Continuous service delivery(継続的サービスデリバリ)」「HPE Machine technology integration(マシンテクノロジーの統合)」という4つのフェーズで進行していくものだ。2015年6月よりフェーズ1がスタートし、現在はフェーズ2の段階にある。
日本ヒューレット・パッカード 執行役員 サーバー事業統括本部 事業統括本部長の大月剛氏は、「近年のIT業界では、ビッグデータやクラウド、モバイルなどを活用して非常に速いスピードでビジネスを展開しているスタートアップ・ベンチャー企業が多い。これはアイデアで勝負ができる時代を示している」と、ビジネスの現状を語る。
もちろん他の企業も、こうした新しいスタイルのビジネスを取り込む必要があるが、現時点では既存環境との整合性や柔軟性に対する課題があるのも事実。そこで同社は、課題解決の実現に向けて必要な改革を「ハイブリッド・インフラへの変革」「デジタル・エンタープライズの保護」「ワークプレイスの生産性向上」「データ指向経営の推進」という4つのトランスフォーメーションエリアに分け、それぞれの整備に取り組んでいる。今回発表されたコンポーザブル・インフラストラクチャ対応の新製品は、このうち「ハイブリッド・インフラへの変革」に当たる。
「現在の企業ITでは、仮想化をベースとしたリソースプールができあがっており、各アプリケーションがビジネスに応じてそれを使用する環境が創られています。新しいスタイルのビジネスが求められている今、こうしたサイロ化を打破する手段としてご提案するのがコンポーザブル・インフラストラクチャです」と、大月氏は新製品の有用性を語った。
アプリケーション稼働に必要なリソースを迅速かつ柔軟に確保
ヒューレット・パッカード エンタープライズ HPE シナジーおよびHPE ブレードシステム コンバージドデータセンターインフラストラクチャ バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのニール・マクドナルド氏 |
続いて登壇したヒューレット・パッカード エンタープライズ HPE シナジーおよびHPE ブレードシステム コンバージドデータセンターインフラストラクチャ バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのニール・マクドナルド氏は、以下のように語った。
「現在のITでは、従来型と新しいクラウド型アプリケーションの両方を運用することが求められている。サイロ化された2つのインフラがIT運用をより複雑にする中で、『可変的リソースプール』『ユニファイドAPI』『ソフトウェア・デファインド・インテリジェンス』という3つの特徴を持つコンポーザブル・インフラストラクチャは、今後の企業にとって必要不可欠な存在となるだろう」
さらに、従来の物理・仮想環境は需要予測から余剰リソースを持つ必要があり、同時にシステムの増設コストや管理の複雑性増加といった、非効率なリソース配備が見受けられることを指摘。しかし、リソースプールを自由に変更できるコンポーザブル・インフラストラクチャであれば、あらゆるアプリケーション稼働に必要なリソースをすぐに確保し、余剰・遊休リソースの排除が可能になるという。
発表会の後半では、日本ヒューレット・パッカード サーバー製品統括本部 サーバー製品本部 本部長の中井大士氏が、新製品に関する解説を行った。
「コンポーザブル・インフラストラクチャはあらゆるサービスを統合し、クラウド型の運用をオンプレミス環境で実現できる」と同氏。運用管理やリソース展開を共通化し、シームレスなハイブリッド環境への移行を支援するという。
今回発表された主な製品は、コンピュートモジュール「HPE Synergy 480/620/660/680」、マスターモジュールとして動作する「HPE バーチャルコネクト SE 40Gb F8/16Gb FC」、インターコネクトリンクモジュール「HPE Synergy 20Gb/10Gb」など。現在のところ価格は未定で、第2四半期以降に販売が開始される予定だ。
HPE Synergyはオンプレミスでも月額従量課金を実現しており、将来的にはパブリッククラウドも含めて、契約窓口を一本化することが可能になるという。