2020年の東京オリンピックに限らず、訪日外国人が増加している日本。外国人が日本人に対して、気になっていることの一つに"口臭"がある。

歯ぐきの健康を通じて身体全体の健康を推進する「オーラルプロテクトコンソーシアム」は、今年の8月に在日外国人(米国:60名、欧州:40名)に対して、「オーラルケアの実態に関する意識調査」を実施した。その結果、在日外国人の約7割が「日本人の口臭にガッカリした経験がある」と回答している。外国人に限らず、日本人でも他人の口臭に不快感を抱いたことはあるだろう。

このような結果が出る中、歯科衛生士たちによる「Goodbye Perio プロジェクト」という歯周病予防の啓発活動が行われている。今回は、ロッテで開催された歯周病予防の講習内容について、レポートする。

口臭の原因は?

厚生労働省によると、毎日歯をみがく人の割合は95.5%となっている(平成23年歯科疾患実態調査より)。その中で、程度のレベルはあるものの、歯周疾患の有病状態は、15歳~24歳でも約70%、35歳以上になると約80%、65歳を超えると約90%の割合で発症しているという(厚生労働省 e-ヘルスネットより)。口臭の原因はさまざまだが、歯周病が原因となっているケースが多く考えられる。

歯周病は初期の段階では症状に気づきにくいという。歯ぐきが少し赤くなり、歯みがきをする時にたまに出血することがあっても、痛みがないため、自覚しにくい。いよいよ末期の状態になり、歯が抜けるような状態になっても、痛みを伴わずに抜けてしまうという。

歯周病初期段階である歯肉炎の段階で、健康な状態に戻すことが重要。歯周炎になってしまうと、治すことができない

なぜ、毎日歯をみがいている人がほとんどであるにも関わらず、高い割合で歯周病にかかってしまっているのだろうか?

歯周病の原因となるのが、歯に付着している白くべたっとしたプラーク(歯垢)である。この中に、1億以上の細菌が潜んでいるという。この細菌が歯ぐきの中に入ることで、炎症を起こし、歯周病となる。歯ブラシによるケアだけでは、歯ぐきの際をみがくことが難しいため、細菌が住み続けてしまうのだ。

歯科衛生士の成瀬千絵美氏によると、歯周病は口内の病気ではあるものの、全身の健康に関わっていることが判明しているという。

「歯周病菌が歯ぐきの中の血管を通って全身を巡っていくことによって、がんや心疾患、脳疾患にも影響していることがわかっている。また、妊娠時における低胎児出産の危険は、飲酒や喫煙よりも歯周病のリスクが一番高くなっている」(成瀬氏)

2011年に行われた全国調査(歯科疾患実態調査)によると、75歳以上の残存歯数は本来持っている歯数(28本)から、半数以上が失われている状況だという。写真左は20年後、現在の歯数がそのまま残っている状態のイメージで、右は12本になってしまった状態のイメージ。見た目もかなり変わってしまう

また、歯周病は世界で一番感染しやすい病気とされており、ギネスにも認定されている。キスすることでも感染してしまう。

このようなリスクも高く、感染もしやすい歯周病を防ぐには、どのように予防すればよいのか。ケアの手順を見ていこう。

歯周病の予防法

歯周病予防には、毎日の歯ブラシに加えて、デンタルフロスを使用することが有効となっている。デンタルフロスとは、歯間のプラークなどを除去するための細い糸のことである。

デンタルフロス

歯ブラシだけでは、歯ぐきまわりや、歯と歯の隙間の汚れが落ちにくい。デンタルフロスを使うと、歯ブラシでは落ちにくい汚れを落とすことができる。

歯ブラシを使用した後の状態

デンタルフロスを使用した後の状態

デンタルフロスの使い方は次のようになっている。

STEP1:フロスを中指に巻きつける

STEP2:歯ぐきの中、2~3mmまで入れる

STEP3:1箇所ずつきれいなフロスを使う

デンタルフロスと同様な使われ方をしている糸付きようじもあるが、糸付きようじだとデンタルフロスよりも硬すぎてしまい、歯ぐきを傷つけてしまう可能性があるという。また、1箇所使用した後に、ほかの箇所にも使いがちだが、実は最初に掃除をした時に、歯周病菌が付着している状態のため、ほかの箇所を掃除する時には、使い回さない方がよいとされている。このような理由からも、デンタルフロスの方が使いやすいという。

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歯周病予防対策は最も効率的な口臭予防となっている。また、虫歯と歯周病を予防すれば、歯を失うことはほとんどないという。健康とエチケットのためにも、デンタルフロスによる対策と、定期的に歯科医院へ行くことが重要だ。