米国本社社長兼CEOのジム・ホワイトハースト氏

レッドハットは11月4日、都内で「Red Hat Forum」を開催した。米国本社の社長兼CEOであるジム・ホワイトハースト氏が登壇したほか、同日にMBaaS(Mobile Backend asa Service)の「Red Hat Mobile Application Platform」と、クラウド管理者向けシステム管理分析サービスの「Red Hat Insight」の日本国内における提供開始を発表した。

冒頭、ホワイトハースト氏は今後の戦略について「これまで、企業の強みは製造設備などの有形資産に紐付いていたが、近年では価値の創造は情報がベースになっている。UberやFacebookなどの企業は情報を核としたビジネスモデルで、その中で最も重要な役割を果たすのがITだ」と語った。

そして「現在のITはスケールアウトアーキテクチャが台頭し、アプリケーションがステートレスでスピーディにスケールアップ/ダウンできるものが企業では重要視されている。これまで我々はオープンソースプロジェクトの活用や証券取引などの基幹業務システムを構築してきたが、基幹システムなどのオペレーションのサポートだけでなく、スケールアウトのインフラも手がけてきた」と同氏は述べた。

また、同社の事業展開がバイモーダルだと主張し「近年、140万のオープンソースプロジェクトが存在しているが、我々は5000以上のプロジェクトに参加しており、最も重要なものは次世代技術であるコンテナ関連だ。『Docker』『kubernetes』などに貢献しており、主要なオープンソースプロジェクトに関わっている。従来はコスト削減の一環としてオープンソースを活用していたが、ここ2~3年の動向としてはイノベーションを牽引するものに変貌している」と述べた。

同社は同フォーラムの開催に併せて「Red Hat Mobile Application Platform」と「Red Hat Insight」の国内投入も発表した。

Red Hat Mobile Application Platformについて説明を行う米国本社モバイル製品部門副社長兼ゼネラルマネージャーのキャサル・マクグロイン氏

Red Hat Mobile Application Platformは、同社が2014年に買収したFeedHenryの技術をRed Hat JBoss MiddlewareやOpenShift PaaSポートフォリオといった製品・サービスを組み合わせた、企業向けモバイルアプリケーション向けソリューションプラットフォーム。モバイル端末から既存の企業システムへの連携を容易にし、アプリケーションの開発と実行、運用基盤を提供する。

すでに同社のクラウドサービスとして評価利用を開始しており、サブスクリプションサービスの販売開始は年内を予定。価格は未定ながらサブスクリプションの販売開始日までに決定するとする。

また、企業のバックエンドシステムにセキュアかつスケーラブルに接続するため、Node.jsを活用したMBaaSソリューションでiOSやAndroid、Windows Mobileなど、さまざまなモバイル端末に対応したアプリケーション開発のために共通的なツールやAPIを提供し、開発者が好みのSDKを取り込むことを可能とする。 さらに、モバイルアプリケーションのプロトタイプ開発を迅速にするためのコードレスフォームビルダーを提供していくとともに、開発のためのDevOpsプラットフォームを提供し、チーム開発のサポートができることを特徴としている。

モバイルのベストプラクティステクノロジー

モバイルアプリケーションプラットフォームのメリット

同プラットフォームについてマクグロイン氏は「これまでバックエンドなどが技術の核だったが、どのようにして顧客とやり取りをし、またデバイスから情報のやり取りをするかが重要となっており、そうした意味でもモバイルは重要な技術だ。顧客はモバイルの可能性を理解・適用することでイノベーションおよび柔軟性を生み出しており、最終的にコスト削減や生産性の向上に結び付けている。顧客とのやり取りをモバイルで行い、新たな収入源を生み出すビジネスモデルを構築することを考えれば、最終的にモバイルはコアな技術になると考えている」と説明した。

デジタル改革促進の流れ

さらに「デジタル化の流れは生活の中でソーシャルメディアなど消費者から始まり、現在はどのようにソフトウェアを開発し、どれだけ柔軟性を駆使できるかが重要だ。モバイルはパブリックネットワークにあるバックエンドのシステムに接続し、多くのデータが生成され、そして消費される世界だ。開発者はスピーディに開発・リリースできるようにしたいと考えおり、企業が多くのモバイルソリューションを企業用に展開できるような仕組みとして新製品を提供する」と同氏は述べた。

一方、システム管理分析サービスであるRed Hat Insightも評価利用を開始しており、サブスクリプションサービスの販売開始は2016年3月を予定している。価格は未定ながらサブスクリプションの販売開始日までに決定するという。

同サービスはRed Hat Enterprise LinuxとRed Hat Cloud Infrastructureの環境において可視性を高め、IT部門が技術的な課題を解決できるようにデザインされている。IT基盤のプロアクティブなモニタリングと分析を行うことで、実際のビジネスオペレーションに重大な問題が生じる前に、技術的な課題へのアプローチを可能とし、ダウンタイムを削減する。

また、同サービスはナレッジベースに基づき分析し、注意が必要な重要事項は同サービスのユーザー・インタフェースに重要度ごとに表示するほか、それらの解決策と方法が段階的に状況に応じてITマネージャーやシステム・アドミニストレーターに提案される。

これにより、重要な問題に向き合うと同時に将来の問題を回避することが可能となる。同サービスのエンジンは700名以上のRed Hat認定エンジニア、3万ページ以上の文書化された技術ソリューション、そして100万件以上の解決済みの問題から構成されており、決定論的法則が常に更新されるという。