ヴイエムウェアは、企業ITの将来のあり方として、パブリック、プライベート、マネージド クラウドにまたがる統合ハイブリッド・クラウドを提唱しているが、その基盤となるのが「Software-Defined Data Center(SDDC)」だ。今回、2015年上半期のSDDCにおける取り組みに関する説明会が開催された。

VMware クラウド インフラストラクチャ/管理ソリューション担当上級副社長のラグー・ラグラム氏が説明を行った。

VMware クラウド インフラストラクチャ/管理ソリューション担当上級副社長 ラグー・ラグラム氏

初めに、2015年第1四半期には、SDDCを実現する製品の最新版として、サーバ仮想化ソフトウェア「「VMware vSphere 6」、OpenStackディストリビューション「VMware Integrated OpenStack」、ストレージ仮想化ソフトウェア「VMware Virtual SAN 6」を発表したことが紹介された。

また今年6月には、同社のパブリッククラウド「VMware vCloud Air」の日本のデータセンターからネットワーク機能「VMware vCloud Air Advanced Networking Services」が新たに提供され、災害復旧(DR)サービス「VMware vCloud Air Disaster Recovery」の機能強化も図られた。

ラグラム氏は、これらの製品とサービスはユーザーに、「CAPEXが下がる」「運用の簡素化を図ることができる」「マイクロ セグメンテーションを導入できる」「アプリケーションの俊敏性を向上する」といったメリットをもたらすと話した。

同社は「One Cloud, Any Application, Any Device」という戦略を掲げており、あらゆるアプリケーションがハイブリッド・クラウド上で稼働することを目指している。そうした観点から、クラウド・ネイティブ・アプリの開発について積極的に取り組んでいる。

その取り組みの成果の1つが、今年4月に発表された2つのオープンソース・プロジェクトだ。

「Project Photon」は、コンテナ化されたアプリケーションに最適化された軽量なLinuxOSを開発するプロジェクトだ。「Project Photon」を利用することで、企業は単一プラットフォーム上でコンテナと仮想マシンの両方をネイティブに稼働させることができ、仮想マシン内でコンテナを稼働させる際にコンテナを分離することができる。

一方、「Project Lightwave」は、コンテナのID/アクセス管理に関する技術を開発するプロジェクトで、企業向けのセキュリティ機能をクラウド・ネイティブ・アプリケーションでも実現する。具体的には、シングルサインオン(SSO)、認証、および名前とパスワード/トークン/証明書を利用した権限管理などの機能を提供する。

今年6月に開催された「DockerCon 2015」では、APIとコマンドラインインタフェースで操作できる開発者向けのハイパーバイザー「VMware AppCatalyst」、DockerコンテナのVMware vSphereプラットフォームへのシームレスな統合を実現する「Project Bonneville」が発表された。

開発者は「VMware AppCatalys」を利用すると、コンテナ化されたマイクロサービスべ―スのアプリケーションのビルドやテストを実施するために、デスクトップのローカル上にプライベート クラウド環境を複製できる。

また、「Project Bonneville」により、Docker Hubからコンテナをダウンロードして、VMware vSphereのInstant Clone機能を活用して最小限のオーバーヘッドでコンテナを仮想マシン上で隔離しながら起動できるようになる。

ラグラム氏は、こうした技術により、Dockerにセキュリティ機能、ストレージ、ネットワーク、管理機能を提供することが可能になり、「エンタープライズ・コンテナ」を提供できるようになると説明した。

ラグラム氏は、企業がクラウド・ネイティブ・アプリケーションを利用するうえでの課題として「セキュリティ」と「管理」があるとして、それを解決するため、同社はさまざまなプロジェクトを進めているようだ。

ソフトウェアベンダーである同社がオープンソース・プロジェクトを手がける理由について、ラグラム氏は「開発者はオープンソースを好む傾向があるから」としたうえで、同社は2つの方向性をとっていると述べた。

また、同社がコンテナに積極的に取り組んでいる背景には、「アプリケーションの開発とビルドを容易にする点から、開発者はコンテナを好むが、コンテナはセキュリティが弱いという側面がある」(ラグラム氏)という。