レッドハットは7月22日、コンテナ・アプリケーションのための開発基盤と本番環境の基盤までをサポートする、企業システム向けコンテナベースのアプリケーション基盤「OpenShift Enterprise 3」の国内提供を開始した。今年6月24日に米国で開催されたイベント「RED HAT SUMMIT 2015」で発表された。

同製品は、同社のPaaS(Platform as aService)製品の最新版で、Docker をベースにRed Hat Enterprise Linux を用いたコンテナ・ベースのアプリケーション・プラットフォームを実現している。OSとしてRed Hat Enterprise Linux 7、コンテナAPIとしてDocker、オーケストレーション機能としてKubernetes、各種PaaSサービス(開発言語、ミドルウェア、データベース)、Web UIから構成される。

価格は63万9600円から(税別、サブスクリプション含む)で、最小構成は2コアからとなっている。

「OpenShift Enterprise 3」の構成

レッドハットのアプリケーション基盤のポートフォリオ

レッドハット ミドルウェア事業部 事業部長 岡下浩明氏

ミドルウェア事業部 事業部長の岡下浩明氏は冒頭に、「OpenShift Enterprise 3は、PaaSの概念を超え、Dockerアプリケーションのためのシステム基盤」と述べた。

同氏は、企業は現在Dockerのよさを知っていながらもノウハウがわからないため、導入に壁があるとして、OpenShift Enterprise 3が企業がDockerを導入するための課題を解決すると説明した。

Dockerを利用するメリットとして、Dockerはアプリケーションとシステム環境をイメージ化するため、バージョン管理が容易であり、新たなサービスを迅速に切り替えることができる点が挙げられた。

「OpenShift Enterprise 3」の特徴の1つに、エンタープライズ・アプリケーションのオーケストレーション機能として、Googleと共同開発を行っている自動拡張可能なオープンソース・ベースのコンテナオーケストレーションおよび運用管理機能を持つ「Kubernetes」と統合している点がある。

同氏は、Dockerを利用する際には、運用のためのフレームワークが必要になるため、独自で開発している企業もあるが、OpenShift Enterprise 3を利用すれば、Kubernetesによって運用が容易になると語った。

さらに、同氏は「OpenShift Enterprise 3はDockerを学ばなくてもDockerを利用できるシステム基盤」であるとして、Dockerアプリケーションのライフサイクルにおける同製品の役割を説明した。

「開発」のフェーズでは、57種類のDockerのプロジェクトテンプレートが同梱されているうえ、イメージのビルドプロセスを自動化できるため、Dockerを詳しく知らなくてもアプリケーションの開発が行える。

「本番」のフェーズでは、開発からテストや本番への切り替えが自動化できるほか、コマンド1つでデプロイをロールバックできる。また、コンテナのネットワークも自動で設定される。

「運用」のフェーズでは、障害発生時に自動で復旧できるほか、スケジューラによる起動・停止に対応している。また、インスタンスのスケールアウト機能を提供し、バージョン3.1からはパラメータによるオートスケールが利用可能になる。

「更新」のフェーズでは、タグを使ってDockerのイメージを管理できるほか、管理イメージ内のOSやミドルウェアへのパッチ適用や再ビルドが行える。

Dockerアプリケーションのライフサイクルにおける「OpenShift Enterprise 3」の利用メリット

同氏は「レッドハットはOpenShiftを提供するベンダーとして後発として見られているが」と前置きしたうえで、競合との差別化のポイントとして「OpenShift Enterprise 3がDockerアプリケーションの開発と運用のためのPaaS基盤である点」「Red Hat JBoss製品と統合されている点」「Red Hat Enterprise Atomic Platformなどの他の基盤からワンストップでプラットフォームを提供できる点」を挙げた。

同社は今後、Dockerの利用を拡大するため、さまざまな施策を行う。企業における採用の促進に向けては、無償ハンズオンマテリアルを配布し、有償トレーニングとコンサルティングメニューの拡充を図る。また、パッケージソフトウェアのクラウド化の手段としての利用を促進するために、セルフサービスを充実させ、よりよいカスタマイズ開発環境を提供していく。