2015年5月14日と15日の2日間にわたり、東京国際フォーラムにおいて富士通最大のイベントである「富士通フォーラム2015」が開催された。「Human Centric Innovation in Action」をテーマに掲げた今回は、IoTやビッグデータ、モバイルなどの最先端テクノロジーから、イノベーションを実現するICTソリューションまで、97の展示と80を超える個別セッションが設けられた。

ここでは、パートナー・ベンダーによるテクニカル・セッション/ワークショップの中から、ICTイノベーションを支える富士通のクラウド戦略を紹介した「仮想化・クラウドインフラ運用の最適化のポイント」と、「ICT最適化の実現に向けた理想的なハイブリッドクラウドとは」の両セッションで語られた内容を紹介しよう。

富士通フォーラム 2015 レポート

「富士通フォーラム 2015」のレポートを以下にも掲載しております。併せてご覧ください。

【レポート】仮想環境のストレージ管理を徹底的に簡略/自動化、管理者の負荷を削減 - 富士通のディスクストレージシステム「富士通フォーラム 2015」

戦略的ICTインフラ構築のポイントとは

ICTリソースの有効活用やコスト削減を実現するため、クラウドサービスを利用する企業は増加している。総務省が公開した「平成26年版 情報通信白書」によると、平成25年末の時点で、「すでにクラウドを導入している、もしくは今後導入の予定がある」と回答した企業は50.5%に上った。この数字は2年前よりも6.8ポイント高い。

ますます利活用が進む、クラウドサービス

その内訳を見ると、電子メールやファイルサーバの利用、スケジュール管理といった情報系でクラウドサービスが活用されていることが多い。財務会計や営業支援など、いわゆる業務系や基幹系は、オンプレミス環境での利用が多いことから、クラウドサービスという新たな選択肢をうまく活用していく一方で、オンプレミス環境も引き続き重要な手段といえる。

こうした状況について、富士通プラットフォーム技術本部クラウドインフラセンターでセンター長を務める上田健治氏は、「企業競争力を強化するためには、柔軟かつ迅速にICTリソースを最適化しなければならない。そのためには、オンプレミスとクラウドが融合したハイブリッドクラウドで戦略的な使い分けをし、ICTの価値を高めていく必要がある」と指摘する。

富士通プラットフォーム技術本部 クラウドインフラセンター センター長 上田健治氏

上田氏は、“戦略的ICTインフラの構築”のポイントは、「運用管理の統一化/自動化」と、「オンプレミス環境を変革し、柔軟性・利便性の高いアーキテクチャにすること」であると説く。

オンプレミス環境を変革するためには、インフラレイヤごとに個別最適化されて複雑化したアーキテクチャを見直すこと。そして、属人化した運用作業を見える化して統一し、自動化を進めて運用の効率性、品質を高めていくことだ。そのためには、クラウド技術やその設計思想、運用の考え方を取り入れていく必要がある。上田氏は、「これからのオンプレミス環境の構築思想には、運用/管理の効率化を実現した『クラウドライクなアーキテクチャ』を取り入れ、シンプルな運用を目指すことが重要だ」と力説した。

クラウドライクなアーキテクチャは、運用の統一化・自動化、仮想マシンを基点とした設計思想の2点が最適化のポイントとなる

仮想/物理レイヤを統一化・自動化し、管理者負担を軽減

では、戦略的ICTインフラを実現するクラウドライクなアーキテクチャ構築のポイントは何か。上田氏は、「仮想レイヤ運用の統一化・自動化」「物理レイヤ運用の統一化・自動化」「仮想マシンベースとしたシンプルな運用を実現するアーキテクチャの採用」の3つを挙げ、それぞれについて説明した。

具体的に落とし込まれた3つのポイント。来場者もひときわ聞き入っていた部分だ

仮想レイヤ(マシン)の運用で課題となっているのは、管理の複雑性だ。特に、オンプレミス(プライベートクラウド)環境で管理者の手を煩わせているのは、手作業での仮想マシン作成である。各部門からのリクエストを受け付けてから要件確認し、リソースの空き状況などを確認したうえで、仮想マシンを作成する。このプロセスでは、申請から配備までに工数も時間も要するのが現状である。

この課題を解決するには、各部門のシステムに合わせ、あらかじめ仮想マシンのスペックを型決めしておくことだ。それを実現するのが、ダイナミックリソース管理ソフトウェアの「ServerView Resource Orchestrator」である。物理サーバ、ストレージ、ネットワークをプール化し、スペックに合わせた仮想マシンを提供する。同ソフトを利用して仮想サーバのスペックをテンプレート化し、メニューとして利用部門に公開しておけば、ユーザーはセルフサービスポータルで利用申請できる。メニューから必要なスペックを選択するだけで、すぐに仮想マシンが配備されるようになるので、管理者の手を煩わせることがない。

また、ServerView Resource Orchestratorは、複数ハイパーバイザー環境での統一管理機能も提供している。従来はそれぞれのハイパーバイザー専用管理ツールで、個々の仮想化環境を配備していた。しかし、同ソフトを利用すれば、複数ハイパーバイザー環境でも自動配備が可能。属人的な運用を排除し、作業品質の向上と効率化を実現できる。

ServerView Resource Orchestratorで提供される複数ハイパーバイザー環境での統一管理機能

また、物理レイヤでの運用の統一化・自動化を実現しているのが「ServerView Infrastructure Manager」だ。種類の異なるハードウェアとその構成情報、さらにファームウェアも統一して管理する。種類の異なるハードウェアのログ収集のインタフェースを統一し、ログ収集方法を共通化する機能も提供する。上田氏は、「仮想化の導入で管理者は、ハードウェアのログに加えてハイパーバイザーにかかわるログも収集しなければならなくなった。その結果、トラブル発生時の障害の切り分けに時間がかかるなど、リスクも増大している。しかし、ServerView Infrastructure Managerを活用すれば、サーバ、ストレージ、ネットワークスイッチなど、異なる機器のログを同じオペレーションで収集でき、また、サーバのログだけでなく、ハイパーバイザーのログも一括で収集できる」と、そのメリットを強調した。