インターネットイニシアティブ(IIJ)の提供する「IIJ GIO」は、IaaSやSaaS、PaaS、監視・運用サービスのほか、同社が得意とするバックボーンネットワークやCDN(コンテンツデリバリネットワーク)などのネットワークサービスを組み合わせ、ソリューションとして利用できるクラウドサービスである。

中核となるIaaS「IIJ GIOコンポーネントサービス」のカバレッジは広く、サーバは仮想・専有のいずれからも選択でき、ニーズに合わせてリソースをオーダーメイドすることが可能で、“持たないプライベートクラウド”も実現される。

株式会社インターネットイニシアティブ サービス推進本部 GIO推進部 部長 神谷修氏

サービス推進本部 GIO推進部 部長の神谷修氏は、「パブリックサービスでありながら、既存のオンプレミスシステムをそのまま移行できるシンプルさが最大の特長です。従来の使い勝手を損なうことなく、クラウド技術のメリットを享受できます」と述べる。

IIJは、エンジニアの質の高さにも定評があり、フロントの開発からバックエンドのサポートまで幅広く対応できる人材を揃えている。クラウドサービスといえども、もともと得意とするインテグレーション力をベースに、フェイス・トゥ・フェイスのサポートを提供するのが同社の強みだ。

運用・移行の負荷を軽減

上述した“持たないプライベートクラウド”を実現するのが、「IIJ GIOコンポーネントサービス 仮想化プラットフォーム VWシリーズ」である。企業のシステムインフラとして標準となりつつあるVMware製品を基盤に、IIJ GIOコンポーネントサービスの各種アドオンと連携して、ニーズに合わせた柔軟なシステム構成を実現する。

IIJ GIOコンポーネントサービス 仮想化プラットフォーム VWシリーズ

「オンプレミスでプライベートクラウドを構築しているユーザーから、簡単にバックアップサイトを構築できないだろうかといった相談を受けていたのがはじまりです。オンプレミスのサイトをそのままコピーできるようなシステムを目指して、このクラウドサービスを開発しました」(神谷氏)

IIJ GIO VWシリーズの構成は確かにシンプルだ。サーバリソースは「VMware vSphere ESXi」をそのまま提供し、NFS/iSCSI/Fibre Channelの各種インタフェースで接続できるデータストアを用意。インターネットだけでなくユーザー個別の専用線やIP-VPNなどをマルチキャリアで収容することも可能と、柔軟なネットワーク構成が可能なところはIIJらしさがうかがえる。

「クラウドサービスを利用するにあたって、実はネットワークの調達が最も時間のかかる部分でもあります。専用線やIP-VPNの回線調達には2ヶ月程度必要となることも多い。当社では、はじめにインターネットを介して安全に接続可能なリモートアクセス環境を提供します。お客さまはその環境を利用して、回線調達を待たずにシステムを構築可能となるため、クラウドの“迅速性”を失うことはありません」(神谷氏)

オンプレミスシステムをクラウドサービスに移行したり、BCP環境を構築したりする場合、移行や運用の“手間”が問題となる。いわゆるパブリッククラウドとして提供されているサービスの場合、クラウド環境を管理するための独自ツールを提供しており、チューニングや運用方法の改定などに時間がかかる。IIJ GIO VWシリーズの場合、管理基盤である「VMware vCenter Server」の機能をそのまま提供している。

株式会社インターネットイニシアティブ ソリューション本部 エンタープライズソリューション部 クラウドソリューション課 課長 鈴木透氏

ソリューション本部 エンタープライズソリューション部 クラウドソリューション課 課長の鈴木透氏は、「従来からVMware製品を運用してノウハウを蓄積しているユーザーにとって、管理負荷はそれほど増大しないでしょう。もちろん、vCenterを提供する基盤は最大限の安全性を確保するようにシステムを構成しているため、安心してお使いいただけます」と述べる。

IIJ GIO VWシリーズのもう1つの特長は、VMware vSphere ESXiに対応したソフトウェアライブラリを豊富に揃えているところだ。
OSやミドルウェア、仮想アプライアンスなども用意されており、用途に合わせて自由に選択してシステムを構築できる。エンドユーザーへ独自の専用ライブラリを提供することも可能だ。データストアにも信頼性が高く高機能なシステムを採用しており、安定的で高品質なストレージサービスを利用できることから、ミッションクリティカルなエンタープライズシステムも安心して任せることができる。

堅牢なサービスを支えるVMware製品の信頼性

化粧品メーカーのノエビアホールディングスは、基幹系・情報系のオンプレミスシステムをすべてクラウド化することにした。そのプラットフォームとして選択されたのが、IIJ GIO VWシリーズを中核としたIIJのソリューションだ。従来と遜色ないパフォーマンスと使い勝手に加えて、堅牢なIIJのデータセンターを活用することでBCPにも対応できるようになった。従来は160台ものサーバを抱えていたが、“持たざるプライベートクラウド=持たざる経営”を実現したことにより、ROE・ROAの向上にも大きく貢献した。

総合物流企業の日本通運では、基幹系を含むオンプレミスシステムからクラウドサービスへの移行を進めている。プライベートクラウドとパブリッククラウドをバランスよくハイブリッド構成にすることを目指し、前者の基盤としてIIJ GIO VWシリーズを採用した。オンプレミスと同様の環境のため移行が容易で、インフラの運用・保守から開放されたことにより、エンジニアリングをIT戦略に振り分けることが可能になった。TCOは40%も削減できる見込みとのことだ。

株式会社インターネットイニシアティブ プラットフォーム本部 システム基盤技術部 サーバ技術1課長 平野由介氏

プラットフォーム本部 システム基盤技術部 サーバ技術1課長 平野由介氏は、「ユーザーに提供するシステムを支える基盤、つまり私たちが管理する裏のシステムもVMwareのソリューションで構築しており、2012年のサービスイン以降、非常に安定して稼働しています。だからこそ、ユーザーが安心して利用でき、さまざまなメリットを享受できるサービスを提供できるのだと実感しています」と述べる。

ヴイエムウェアとのパートナーシップについて、神谷氏は、すでにIIJ GIOのユーザーの中にはヴイエムウェアが提供するクラウドサービス「VMware vCloud Air」をバックアップとして利用しているケースも登場しており、「両者の共存が今後のテーマになるだろう」とする。現在のvCloud AirなどいわゆるIaaSがリソースプールの提供にとどまっているとすれば、IIJのようにユーザーと一体となってシステムを作り上げていくアプローチは重要なことだ。

IIJ では、IIJ GIOを活用するためのノウハウを「IIJ GIOベストプラクティス」としてWeb公開している。「VMwareのアドオン製品を利用したベストプラクティスも積極的に展開していきたいと考えています。特に、NSXを利用したマイクロセグメンテーションに注目しており、社内で検証評価を行いました。VWシリーズのネットワーク運用性向上、セキュリティ対策のベストプラクティスとして、Web公開しています」(鈴木氏)

「現在、私たちが提供しているサービスは実にシンプルなものです。一方で、ヴイエムウェアはクラウド管理を高度化するために、魅力的な技術を開発しています。今後は私たちも、さまざまなVMwareの技術を採り入れ、サービスやソリューションの拡充を目指したいと考えています」(鈴木氏)