LyncからSkype for Businessに名称変更

日本マイクロソフトは4月21日、「Skype for Business」に関する説明会を開催した。これまでLyncの名前で知られてきたコミュニケーションプラットフォームの製品をリニューアルするに至った経緯について、同社 執行役 常務 パブリックセクター担当の織田浩義氏が説明を行った。

Skype for Businessやワークスタイルの改革について解説する、日本マイクロソフト 執行役 常務 パブリックセクター担当の織田浩義氏

日本マイクロソフト社内では、2010年にLyncを導入したという。「Lyncを導入するまで、コストと時間をかけて全員で出社し、仕事をしてきた。しかしLync導入以降は、誰がどこにいても、最適に活躍できる環境になった」(織田氏)と社内の事例を挙げ、ワークスタイルが大きく変化したことを振り返った。

最新の数字としては、「Lyncを含むOffice 365は、日経225企業の70%が採用し、売上は2年間で5.5倍に成長した。Lyncユーザーは世界で1億人、コンシューマー向けのSkypeは3億人のアクティブユーザーが存在する。国際通話の38%はSkype経由であるというデータもある」(織田氏)と語った。

企業向けのLyncは1億人、コンシューマー向けのSkypeは3億人のユーザー規模を誇る

このLyncについて、ブランドを「Skype for Business」に変更することが2014年11月にグローバルで発表され、2015年4月14日には米国でSkype for Businessが正式にロンチしている。これに合わせて日本国内においても、2015年4月中旬より順次、既存のLyncユーザーをSkype for Businessにアップデートしていくという。

織田氏は、すでにLyncを導入している企業ユーザーからの、Skype for Businessへの期待の声を取り上げた。「ヤマハ、資生堂などの企業では、コスト削減やスピード、生産性の向上に役立つとの声がある。アスクルやパソナは女性比率が高いという特徴があり、女性のさまざまな働き方をサポートするダイバーシティの観点からも支持を得ている」として、Skype for Businessをワークスタイル改革のための中核的なツールと位置付けた。

資生堂、ヤマハなどのLyncユーザー企業がSkype for Businessの登場を歓迎

企業用途以外でも、教育面での利用も促進していくという。すでにマイクロソフトは教育機関向けに「Office 365 Education」を無償で提供。さらに、4月1日からは学校教育法施行規則改正により、全国の高校における遠隔授業が解禁されたという。織田氏は「慶応義塾大学SFC研究所との間で、Skype for Businessの教育利用を研究開発していくことで合意した。熊本では、複数の教室をSkypeでつなぐ交流授業を行っている」と事例を挙げる。

今後はSkype for Businessを日本市場で積極的に展開し、2016会計年度(2015年7月?2016年6月期)中に売上を2倍にするという。

LyncアプリはそのままSkype for Businessでも使える

Skype for Businessの詳細については、日本マイクロソフト Officeビジネス本部 エグゼクティブプロダクトマネージャーの小国幸司氏が解説を行った。

日本マイクロソフト Officeビジネス本部 エグゼクティブプロダクトマネージャーの小国幸司氏

Skype for Businessの主な特徴として、機能面ではLyncをすべて引き継いでいるという。iOS、Androidなどのモバイルアプリについて、Skype for Businessのアプリは今後提供予定としているが、それまでの間は既存のLyncアプリをそのまま使えるという。また、ヘッドセットなど、デバイス向けの認証もそのまま継続するとした。

アプリのユーザー インタフェースについては、コンシューマー向けのSkypeアプリのデザインを採り入れていく。「Skypeアプリは、3億ユーザーのフィードバックを反映しており使い勝手に優れる」(小国氏)と説明する。

提供形態については、クラウドだけでなく、オンプレミスだけの運用や、クラウドとオンプレミスの組み合わせというハイブリッド構成にも対応する。「新しい製品を立ち上げるのではなく、すでにエンタープライズ品質で実績のあるLyncの基盤をそのまま利用したもの」(小国氏)と強調した。

これまで企業向けとして展開してきたLyncのブランドを変更する理由については、「Lyncといっても、まだまだ知らないお客様も多い。ブランド認知度として圧倒的に大きいSkypeを利用することにメリットがあると考える」(小国氏)と説明した。

画面デザインはSkypeベースに

製品デモでは、既存のコンシューマー向けSkypeアプリと、新たに提供するSkype for Businessアプリの画面を比較した。Lyncとの違いとして、ボタンや使い勝手がSkypeベースになっている点が特徴となる。「当初はデスクトップOS向けのリリースが先行するが、今後はスマートフォン、タブレット、Webクライアントにおいてもデザインを統一していく」(小国氏)と語った。

Skypeの画面(左)と、Skype for Businessの画面(右)

基本的なデザインをSkypeに合わせていくとしている

「一時退席中」など現在の状態を表すプレゼンスも強化。Skypeでは簡単なステータスを選択するだけだったのに対し、Skype for BusinessではPCの状態を自動的に検出して「画面ロック中」なども表示できる。

Officeとの統合により、ExcelやPowerPoint文書の「作成者」の欄にもSkype for Businessのプレゼンスが表示されるようになり、文書を作った人にその場で連絡できるかどうかを判断できる。さらにSkype for Businessを導入している企業間では、相互にプレゼンスを共有することで、組織の壁を超えたコミュニケーションも可能になるとした。

今後の新機能として、Lyncでは250人までだった会議機能を数千人レベルまで拡張するという。また、84インチの大画面デバイス「Surface Hub」のような会議デバイスへの対応、モバイルやWebを視野に入れたAPIの提供も行っていく予定があるとした。

Skype for Businessの今後の展開。マルチプラットフォーム展開、機能拡張やAPI提供を予定する