ポスト・スマートフォン時代の新デバイス「Runcible」
スペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2015」では、米Mozillaがブースを出展した。ブース内には多数のFirefox OSスマートフォンが並び、その中にはKDDIが2014年12月に発売した「Fx0」の姿もあった(関連記事:バレンタインデーの男たちの熱い戦い - Firefox OS WoTハッカソン)。
MWC2015に合わせてKDDIは、ベンチャーファンド「Open Innovation Fund」を通して米カリフォルニア州バークレーを拠点とするベンチャー企業「Monohm(モノーム)」に出資したことを発表し、MozillaブースでMonohmが開発する新デバイス「Runcible(ルンシブル)」を披露した。
通信機能としてBluetooth LEやWi-Fi、LTE、GPSなどを搭載しており、Bluetoothヘッドセットを使えばスマートフォンのように音声電話にも使えるという。しかし、MonohmはRuncibleをスマートフォンではなくIoT(Internet of Things)時代の中核となるデバイスと位置付けている。
「今日のスマートフォンは、時と場所を選ばずSNSの通知が飛んでくる」とArriola氏は指摘する。
Runcibleでは、もっとさりげない形で通知する仕組みを提供するといい、円形のボディを活かして自動車や自転車のハンドルに取り付けたり、身体に装着してフィットネスの記録に用いるといった具体的な利用シーンも挙げた。Arriola氏は「机の上に置いて物理的に回転させることで、スピーカーの音量を調節するリモコンにもなる」と語る。
液晶ディスプレイの周囲はタッチ操作を認識し、スクロールなどに利用できる。充電は本体に備えたUSBポートを利用する。
オープンなWeb技術への取り組みにKDDIも支援
RuncibleのプラットフォームとしてFirefox OSを採用した理由としてArriola氏は、オープンなWeb開発コミュニティの存在を挙げる。「Firefox OSなら、HTML5/CSS/JavaScriptといったオープン技術でエコシステムに参加できる。iOSのObjective-CやAndroidのJavaよりも広い、世界で最も大きな開発コミュニティにアクセスできる」(Arriola氏)とメリットを挙げた。
ソフトウェアの実装にあたっては、KDDIと協力しながら開発を進める「Positron」と「Sensible」という2種類のライブラリを利用しているという。PositronはUIのラピッド開発を可能にするHTMLフレームワークで、Runcibleのユーザーインタフェースの実装に利用している。Firefox OSだけでなく、iOSやAndroid、PCのChromeやSafariなどモダンブラウザ―を広くサポートするライブラリとなっている。
Sensibleは通信機能のライブラリとなっており、デバイス間のPeer-to-Peer接続のようにIoT時代に求められるインタラクションを容易に実装できるという。Arriola氏によると、「どちらのライブラリもMITライセンスで提供しており、誰もがダウンロードして利用できる」とのことだ。
Arriola氏は日本企業でのゲーム開発経験もあり、日本語も堪能。製品名のRuncibleについても、英語読みでは「ランシブル」となるはずだが、あえて日本のローマ字読みに近い「ルンシブル」という呼び方を採用するなどのこだわりを語った。
このRuncibleは、今後KDDIから国内でも発売されるのだろうか。KDDI プロダクト企画本部 プロダクト企画1部 端末1グループ マネージャーの長池輪氏は、「現時点ではそういった事業との具体的な関連性はない」と説明する。
むしろ、同社が2014年から取り組んでいる、Firefox OSを中心としたWeb開発コミュニティの拡大や、Webを通してあらゆるモノがつながる世界観「WoT」(Web of Things)の実現に向けた取り組みが、背景にあるという。KDDIは今後もMonohmと連携し、日本語化や日本国内での活動をサポートしていくとしている。
MWC2015関連記事
認証技術の"プレミアム"、虹彩認証でスマホのセキュリティは変わるか - 富士通担当者インタビュー
Windows Phoneは法人向けスマホとして圧倒的 - freetel CEO 増田氏インタビュー
マウスコンピュータがWindows Phoneを手がける理由
Apple & IBM連合への対抗馬? Android for Workでゲーム・チェンジを狙うGoogleとSAP、両者に聞くエンタープライズ戦略