昨今、規模の大小を問わず企業内において「業務効率化」や「経営の最適化」が声高に叫ばれている。そこで注目を集めているのがERP(Enterprise Resource Planning)だ。人材、設備、資材、資金といった企業が有する様々な資源を統合的に管理・配分する手法がERPで、その実現の手段として統合型業務ソフトウェアパッケージ(ERPパッケージ)を導入、あるいは導入を検討する企業も多く見受けられる。内部統制やセキュリティの観点からもその必要性は高くなってきている。だが、場合によってはプロジェクトが遅延・頓挫してしまう、予算の超過など、ある種のハードルが存在するのもまた事実だ。

では、そのハードルをなくす、あるいは下げることはできないのだろうか?答えは、"可能"だ。ERPの導入・再構築を行う際にソフトウェアベンダに対して提出する提案依頼書、RFP(Request For Proposal)を、如何に精度高く纏め上げることができるかが鍵を握ることになるのだという。

その"勘所"について、株式会社システムインテグレータ営業本部ERPソリューション営業部部長の尾崎雅朋氏にお話を伺った。「RFPには、目的やリリース時期、スコープや要件といった基本的な内容が記載されていることが多いですね。また、添付資料として機能一覧表や業務フローなどの資料も別に用意されるケースもあります。」と尾崎氏。

株式会社システムインテグレータ営業本部ERPソリューション営業部部長の尾崎雅朋氏

企業の基幹を担うシステムの導入となるわけだから、場合によっては億を超える案件となる。企業の情報システム担当者は「これだけの資料を用意したのだから、こちらの意に沿った提案をしてもらえるはず」と思いがちだが、ここにひとつの落とし穴が潜んでいるのだという。

「RFPを見ただけでは、各ベンダーからの提案の軸がぶれることが多いのです。機能一覧表ひとつをとってみても、お客さまの機能に対するプライオリティを把握しきれていないケースも多く、場合によってはすべて"○"と記載し『運用で回避』というパターンになることもあります」

実際には、その部分をシステム化したかった、などというケースも。もちろん、金額面においても軸がぶれてしまえば当然各社バラバラな見積となってしまい方向を修正するのが難しくなってしまう。

また、ステークホルダーによって目的意識も異なるので、経営層であれば目的やコスト面、現場サイドであればコスト度外視で課題要求……。それら相反するリクエストがじっくり煮詰められたRFPを作ることは非常に難しい。だが、軸を極力ぶらさずに案件を進める方法もあるのだという。

「RFPは基本的に会社の総意でなければならない。ですが、そうはいかない事情のお客さまがいらっしゃるのもまた事実です。そこで、例えば機能要件に優先順位を付ける、提案を求む、など一言添えてもらうだけで提案の軸はグッと狭まってくると言えるのではないでしょうか」

実際に数多くのRFPを見てきたシステムインテグレータだからわかる"RFPの勘所"

尾崎氏が言うように、RFPの作成は一筋縄ではいかないことは想像に難くない。同社は、11月25日に「プロジェクト成否はここで決まる!実例 RFP(提案依頼書)からノウハウを提供します~ERPコンサル、ベンダーが語るRFPと予算について~」を主催する。

セミナーでは、実際に株式会社システムインテグレータが顧客からのRFPを受けて作成した提案資料を実例として取り上げる。「こういったインプット(RFP)があるとアウトプット(提案)はこうなるのでは?」と、"ベンダーサイドから見たRFPの勘所"も紐解いてくれるのだ。

実際にRFPを作成しなくてはならない情報システム部門の方はもちろん、経営層にとってもRFPの善し悪しを把握するまたとない機会となるだろう。また、ベンダー選定の際に留意しなければならないポイントについてもセミナーでは紹介する予定だという。

「お客さまが各ベンダーからの提案を評価する際に、単に提案製品のフィット率のスコアを鵜呑みにしないほうがいいでしょう。そうでないと、いざ要件定義の段階で求めていた機能が実は実装されていない、などということも起こりうる」と尾崎氏。

また、評価せねばならない提案内容の精査をより確実なものにするためにベンダーサイドの視点からみるとRFP作成段階において重要なのは以下の3つだという。

●To Beモデル(理想型)かCan Beモデル(現実的解)か?

機能要求がプロジェクト方針と合致しておらず、現場の要望すべてを取り入れたものになっている場合、カスタマイズやアドオン開発の規模が膨れ上がってしまい、ERP導入のメリットが享受できない。かつ、コストが無限に膨らんでしまうリスクも生じる。

●現状課題が明確化されているか?

課題が具体的に記載されていない場合、当該課題と機能要求の関連性が表面化されていないため、機能回答に対する提案が十分になされないケースになる。

●スケジュールが自社都合になってないか?

自社都合を優先して稼働させる場合には、何らかのトレードオフが必要にもかかわらず、システム要求にそれが反映されていない。

同社は、「プロジェクト成否はここで決まる!実例 RFP(提案依頼書)からノウハウを提供します~ERPコンサル、ベンダーが語るRFPと予算について~」と題したセミナーを11月25日に東京会場で、27日には大阪会場でそれぞれ開催する。

同セミナーでは、みずほ情報総研株式会社の太田智久氏によるセッション「基幹システムプロジェクトにおける計画策定の重要性と予算について」で語られる"RFPを作る側"の視点も学べる。加えて、上記3つの"RFPを受け取り提案する側"の要素が付加されていれば、難しいとされるRFPの作成やタッグを組むベンダーの選定はもちろん、その後の業務もスムーズに進められるのではないだろうか。

今、ERPの導入で関係各者にヒアリングのために東奔西走している方はもちろん、情報システム部の一員や最終的な意思決定を下す経営層の方にも、このセミナーは有益な情報が得られるまたとないチャンスとなることだろう。