米ベンチャーキャピタルKhosla VenturesのKV CEOサミットで、Googleの創業者であるLarry Page氏とSergey Brin氏がVinod Khosla氏のインタビューを受ける映像が公開された。初期の頃にExciteへの売却を取り止めにした理由、様々な分野に事業を広げる理由、2人が考える近未来 (5年~15年)の重要分野、Goverment 2.0など、話題は多岐にわたる。2人が揃って公の場に現れるのは珍しく、今でも起業当時のパートナーのままのような2人の関係が伝わってくる貴重なインタビューだ。

1997年、検索エンジンとしてGoogleを完成させていなかったPage氏とBrin氏は検索企業への売却を計画した。当時Exciteは、Googleに興味を示した複数の検索企業の中で最も熱心で、交渉で示された金額にも不満はなかった。それでも最終的に売却に踏み切らなかった。理由は、Exciteを含む交渉した全ての検索企業が興味を持ったのは開発チームであり、Page氏とBrin氏が示した検索の構想ではなかったからだ。検索によるインターネットの未来を共有できない場所では働けないと判断した。「食事はブリトーか、そんな感じのもの」(Page氏)だった大学院生が、経済的な安定になびかず、失敗に終わるかもしれないビジョンを優先した。それがGoogleの原点である。

Googleは、検索からモバイルOS、ウエアラブルデバイス、そして自動運転カーまで様々な分野にプロジェクトを広げている。Apple創業者のSteve Jobs氏から「キミたちは手を広げすぎだ」と言われたこともあったという。Page氏は「ある意味、彼は正しい」と認めながら、「これだけ大きな企業で、わずか5つのことしかやってなかったらもったいとことだと思う」と述べた。全てのプロジェクトが成功する必要はない。「少なくともGoogleにふさわしいものであれば、投資を試みている」(Brin氏)という。

Googleにふさわしいプロジェクトには、大小の差はあれども、社会をより良く変えようという志がある。例えば、最近もっとも注目を集めた完全自動運転カーは、自動運転カーの開発を超えて、車は所有するものという常識を覆そうとしている。移動が必要な時にマイカーを使うのではなく、完全自動運転カーを呼んで目的地に乗っていく。サービスとして車を使う。そんな社会に変えることで、市街地の渋滞が緩和され、今は駐車場が30%-50%を占める市街地のスペースを有効に使用できるようになる。

コンピューティングについても、効率的に時間を使いこなせるものになっていないと指摘した。「時間の浪費でしかない。情報にたどりつくためにタッチスクリーンの携帯をスクロールし続けている。車に乗ったら、揺れるから(タッチスクリーンは)扱えなくなる」とPage氏。「コンピュータから取得できている知識量と、それを使用している時間を比べたら効率性は相当悪い。その問題の解決がわれわれの仕事であり、その意味でわれわれがやっている多くのことは筋が通っている」とBrin氏が続けた。

検索製品の未来も視野に、Googleは人工知能のプロジェクトをいくつか進めている。例えば、機械学習にフォーカスしたブレイン・プロジェクトは、映像入力の処理技術が自動運転カーに採用されている。その先には、自ら学び、思考するマシンの実現がある。

そうしたマシンの登場に人間の雇用が奪われるという懸念もあるが、Page氏は「かつて90%が農業に従事していた時代があった」と指摘した。現在、米国の農業に必要な労働人口は全体の2%程度である。それと同じ成長と変化が今も起きている。多くの人は働くことに生き甲斐を感じているが、同時に家族との時間や個人の興味を満たす時間も求めている。生活のために仕事に追われるのではなく、マシンは「裕福な時間」を生み出してくれるとPage氏は述べた。