自社サイトをメディアにして顧客との関係を構築し、ファンを育てていく、オウンドメディア。「競合優位性を見出せない」「顧客をリピートできない」「広告予算がない」「採用力がない」など、多くの企業が抱える課題を解決する手法として、注目を集めている。いかにして、オウンドメディアを作り出していけるのか。

「伝説のウェブデザイナーを探して」や「秒速結婚」など、バズコンテンツを続々と生み出し、オウンドメディアを実践している株式会社LIGの代表取締役 社長 岩上貴洋氏と、LIGのグループ会社であり、動画マーケティングを得意とする東京マイルドファウンデーション代表取締役 社長 橘健一氏を招き、4月16日(水)に竹橋にて「Creator’s Career Lounge(CCL)web vol.5」が開催された。

オウンメディアに挑戦し、LIGはどう変わったか!すべてを公開!

LIG代表取締役 社長 岩上貴洋氏

2部構成となっていたセミナーの第1部を担当したのはLIGの岩上氏。情報発信がしやすくなった今の時代を、LIGに昨年入社し「世界一即戦力な男」菊池良氏がネット上でバズった事例などを用いてグラフで解説。そして、お金ではなくて「手間と考え方(アイデア)」次第で、多くの人にリーチできることを提案した。

今でこそ、オウンドメディアとして圧倒的なブランド力をもつ同社だが、情報配信する前は、普通のWEB制作会社だったという。「Blog記事をスタートしたのは2年半前。オウンドメディアという言葉もない時代でした。その頃、LIGは、『人月単価が安い』『採用力が弱い』『未来への投資ができない』など・・・多くの課題を抱えていました。そんな状況の中、まずは自分たちができることをやろうと考え、Blogを立ち上げました」と岩上氏。

同社では、技術力訴求・信頼性向上のための技術系記事と、拡散目的のネタ系記事を8対2の割合で配信しているという。「会社のことを広く知ってもらうためには、この8対2という記事バランスがとても重要です」と同氏。続いてBlogの運用においては、「全員顔出し」「伝わる文章」「社員全員が月1本」「炎上回避」「アウトプット(社員教育)」の5つの重要ポイントを挙げていった。

さらに同氏が強調したのは、コンテンツ配信では同社の編集部が重要な役割を担っているという点だ。ユーザーに記事をシェアしてもらうために、1日の配信本数や配信タイミングなどの調整は、全て編集部が行っている。

また彼らは、記事のクオリティチェックや書き手である社員のモチベーションアップにも積極的に関与。同社の場合は1日3本、ユーザーの通勤時間の午前中に記事を配信し、効果的なバズコンテンツを生み出している。

そして、ソーシャルでの記事の反応を定期的に社員へ共有し、書き手のモチベーション向上を図っている。他にも、月にアクセスの多い記事や、役に立った記事を社内で表彰する制度も行われているという。こうした継続的な情報発信ができるマネジメント力や整備された環境がLIGの強みなのだろう。

この結果、LIGの効果は劇的に改善。

新規の問い合わせ 月10件→月70件
求職者の応募数 月1~2件→月20件

という数字の変化はもちろん、クライアントから企画提案を数多く求められるようになり、業務の幅も大きく広がったという。「他にも『応援しています』とメッセージのついたお菓子が届いたり、旧オフィスの借り手を募集するとたくさんの方に応募いただいたりと、いろんな反響がありました。単純にコンバージョンなどの数字だけでは計れない価値が、オウンドメディアにはあると思います」と同氏は付け加えた。

誰に届ける記事なのか!ターゲットを明確にすることが重要!

中盤では、LIGが考えるオウンドメディアについて同氏が解説。オウンドメディアを成功させるために、気をつけなければならないポイントを「対象キーワードと接触キーワード」「出逢い方」「炎上に関して」「ネタ系コンテンツに関して」という4つにまとめていた。

その中の1つ「対象キーワードと接触キーワード」では、直接的にコンバージョンに影響するキーワードの「対象キーワード」だけでなく、ターゲットであるWEB担当者が検索しそうなキーワード(これを接触キーワードと呼ぶ)も考慮して記事を作ることが大切であると、具体例を交えながら解説した。そのために同社では、ターゲットをペルソナ分析しているという。

第1部の最後には、LIGの記事「アクセス増加を狙え!読みたくなる記事タイトルの付け方、7つの秘密」を参照しながら、明日からすぐにできるTipsなどを紹介。ここで同氏が繰り返し言っていたのが「誰」に対する記事なのかということだった。

「多くの人は書く内容は考えているが、誰に向けて書くのかがおろそかになりがちです。これを忘れてしまうと、いいコンテンツでも届かないことが多い」という。

具体的なテクニックとしては、SNSでの情報発信の際のキャラクター化や、トレンドやシーズンを意識したコンテンツ作り、記事タイトルのルールやアイキャッチの必要性などに触れた。中でも興味深かったのがキーワードを検索した回数などを調べることができるgoogleのキーワードプランナーの活用だ。ユーザーが何を求めているのか、どういう検索が多いのかを把握できる重宝するツールのようだ。

数多くの経験を重ねてきた同氏の言葉は、一つ一つが具体的で、説得力があった。大変なことではあるが、ターゲットを見極め、情報配信し続ける重要性を、参加者の皆さんは痛感したことだろう。