太陽系が誕生して間もない約40億年前、地球から見える月は今とかなり違っていたらしい。太古の月の自転軸は現在と45~60度ずれていたことを、九州大学大学院理学研究院の高橋太(たかはし ふとし)准教授と東京工業大学大学院理工学研究科の綱川秀夫(つながわ ひでお)教授らが月探査機「かぐや」などの観測データを解析して明らかにした。この研究で、約 40 億年前の月の中心部では、溶けた鉄が活発に運動して、地球と同じように大規模な磁場が存在していたことを裏付けた。5 月 4 日付の英科学誌ネイチャージオサイエンスのオンライン版で発表した。

図1. 約40億年前の月の磁極を現在の月北極側から見た図。
青い星印は「かぐや」の結果、赤い星印は「ルナ・プロスペクター」による結果。(提供:「かぐや」月磁場研究グループ)

人工衛星の観測でこれまで、月には局所的に磁場の強い磁気異常の地域が数多く存在することが知られていた。月の岩石は約40億年前にできたことがわかっており、この磁気異常も約40億年前の磁場を記録している。2007年に打ち上げられて09年まで観測したJAXAの月周回探査機「かぐや」で磁気異常データが飛躍的に増えた。「かぐや」の月磁力計と、NASAが1998、99に運用した月探査機「ルナ・プロスペクター」の大量データを使い、磁気異常から約40億年前の月の磁極を推定した。その結果、現在の月の極付近と月裏側の中低緯度付近の2カ所に磁極が集中していた。

図2. 約40億年前の過去と現在の月の北極と南極の位置(提供:「かぐや」月磁場研究グループ)

この解析で、太古の月には、地球と同様に、鉄を主成分とする中心コアが溶けて運動し、ダイナモ作用で大規模な磁場が存在していたことが浮かび上がった。天体の磁極の位置は自転軸の極とほぼ一致する。2カ所のうち、より古い磁極は45~60度ずれていることから、研究グループは「約40億年前の月の自転軸は現在より45~60度ずれた位置にあり、その後、現在の自転軸に近い位置に移った」と結論づけ、地球から見て現在と異なる月の画像を示した。

綱川教授は「月にも大規模な磁場があったことは、地球・月システムを理解するのに重要なことだと思う。月の向きが変わるという出来事が起きたことも加味して、月の進化を再構築するのが今後の課題だろう」と話している。

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