米Dellが、テキサス州オースティンの同社本社において、世界各国の報道関係者を対象にした「Dell Precision Press Day」を開催した。この中で、米DellのPrecisionワークステーション担当エグゼクティブディレクターのAndy Rhodes(アンディ・ローズ)氏が、日本人プレスを対象にグループインタビューに応じ、「モバイルワークステーションと仮想化という、ワークステーションを取り巻く新たな潮流に対して、デルはリーダー的存在でありたい」などと、ワークステーション事業に対する基本的姿勢を示した。

--デルのワークステーション事業の特徴は何か?

米DellのPrecisionワークステーション担当エグゼクティブディレクターのAndy Rhodes(アンディ・ローズ)氏

ローズ氏 ひとつは、モバイルワークステーションという新たな市場を切り開いたことだ。これまでのワークステーションは、机の下に置かれ、エンジニアを机の前から移動できない状態としていた。これは古い仕事の仕方だ。だが、これまでのモバイルワークステーションは、軽量化するにはパフォーマンスを犠牲にしなくてはいけなかった。ユーザーの要望は、軽くするのはいいが、パフォーマンスは犠牲にしないでほしいというものだ。 デルは、当社が持つエンジニアリング能力の高さを生かして、小さな筐体のなかに、高い性能を埋め込んだ。プロフェッショナルが求めるレベルのグラフィックカードでは、多くの熱が出るため、いかに熱を逃すかが鍵になる。デルが持つ、電気的設計技術、工学的な設計技術によって、それを実現した。

また、設計段階から、インテルやAMD、NVIDIAと緊密な関係を結び、各社が持つノウハウを生かしながら、最適な環境で動作させることができるようになった。

もうひとつは、これまでのワークステーションでは予算が高く、導入できなかった人たちに、高いパフォーマンスを持ったワークステーションを提供できる点だ。適切なツールを与えられていなかったエンジニアに対して、解決策を提示することができる。いまの状況は、手術室の医者がメスを持たずに、包丁を持っているようなものだ。多くのエンジニアが、専門性の高い性能を持ったツールを利用できるようにするべきだ。

--ワークステーション市場における今後のトレンドをどう捉えているか?

ローズ氏 ワークステーション市場では、小型化が大きな潮流になっている。当社は、モバイルワークステーションのリーダーとして、Windows 7を搭載した15.6型のDell Precision M4800や17.3型のDell Precision M6800を投入してきた経緯があり、最新のCore i7を搭載したDell Precision M3800は、18mmという薄さを実現しながら、パフォーマンスと信頼性を達成したモバイルワークステーションとして高い評価を得ている。これは、世界で最も薄く、最軽量のワークステーションとなる。

Dell Precision M3800

Dell Precision M6800

新たに投入するDell Precision M2800

これに、新たにエントリークラスのモバイルワークステーション「Dell Precision M2800」を追加した。価格は1,119ドルからの設定となり、妥協しない性能を持ったモバイルワークステーションをより多くの人に提供できるようになる。ビジネス向けノートPCで我慢していた人たちに、モバイルワークステーションを提供できる。

もうひとつの潮流は、仮想化だ。

企業では新製品の開発や、映画などのコンテンツ制作にワークステーションを利用しているが、これらの情報やコンテンツの一部が流出してしまうことは致命的となる。仮想化によって、セキュアな環境が実現できるというメリットがある。また、地域や部門をまたいだコラボレーション型の仕事も容易にできるようになる。より少ない台数でワークステーション環境を利用でき、IT管理の一元化が可能になる。

デルは、このほど、「Dell Wyse Datacenter for Virtual workstation」を提供することを発表した。これは、仮想環境に専用化して開発されたリファレンスアーキテクチャーであり、認定されたワークステーション向けアプリケーションを、信頼性が高く、安全な仮想デスクトップ環境で実現するものになる。

また、テキサス州オースティンの米本社内に、Virtual Workstation on Center of Excellenceを開設した。Virtual workstation on Center of Excellenceは、チャネルパートナーやISVパートナーを対象に提供する、ワークステーション向けの初の仮想化センターであり、仮想環境において、アプリケーションのパフォーマンスを検証することができる。 今後、多くのユーザーが、モバイルワークステーションと、仮想化を活用することになるだろう。仮想化は今後数年に渡って、ワークステーションを革新するものとなり、デルは仮想化においても、リーダー的存在になりたいと考えている。

モバイルワークステーションと仮想化という2つの潮流によって、今後のワークステーションは、机の下から、モバイルへと移行し、さらにデータセンターへと移行することになる。そして、デスクの下にワークステーションを持ちながら、仮想化されたデータセンター内のワークステーションを同時に利用するといったことも一般化するだろう。

--デルにとって、ワークステーション事業はどんな役割を果たすのか?

ローズ氏 デルは、非公開化によって新たな企業となったが、そのなかで、ワークステーションは、重要な製品のひとつに位置づけられる。デルは、タブレットからデータセンターまでの幅広い製品を網羅し、これらをトータルに提案できるところに強みがある。ワークステーションもそのひとつの構成要素となる。また、ワークステーション事業は収益性が高く、ハードウェアの上に付加価値を乗せて提案する、ひとつのビジネスモデルとなる。付加価値を提供するには、オートデスクやソリッドワークスといった主要ソリューションに最適化したハードウェアを提供していることがポイントとなっている。

モバイルワークステーション「Dell Precision M3800」を手に持つローズ氏

デルは、ソフトウェアエンジニアに対する投資を加速しており、ISVのアプリケーションが、デルのワークステーション上では、他社のハードウェアよりも速く動作するようにしている。

私はこの部門のリーダーに就任して以来、7カ月間で約150件のお客様と話しをしてきたが、トータルソリューションを求める声が多いことがわかった。デルの強みを発揮できるものだといえる。

一方で、PCとワークステーションの違いを的確に理解していないユーザーが多く、データを入力するデバイスと、演算をするデバイスの境界を曖昧に捉えている。これは言い方を変えると、適切な製品が投入されていない市場であるということもでき、多くの顧客が、本来使うべきものではない製品を利用しているともいえる。そうした問題を解決するのがデルの役割となる。

デルは、世界中において、ワークステーション部門の営業部門を大幅に増強している。これは、単なる営業スキルを持った人材で構成されるのではなく、専門知識を持ったテクニカルエキスパートに近い人材で構成させるチームとなる。さらに、チャネルパートナーに対する投資も加速している。マーケティング資料をはじめとして、様々な資料を提供し、研修を行い、デモ用機器を提供する。IDCの調査では、2四半期連続でデルの成長率は、市場の平均成長率を上回っている。そして、デルは、収益とともに、顧客満足度も伸びている。この勢いをさらに維持していきたい。