KDDI 代表取締役社長 田中 孝司氏

KDDIは2月13日、電子マネーカードを提供し、ポイントサービスを提供する新サービス「au WALLET」を5月より開始する。同社では2012年より成長戦略の「3M戦略」を発表しており、2012年の「スマートパスポート構想」、2013年の「スマートリレーションズ構想」を打ち出しており、「au WALLET構想」は、その第三弾となる。

記者会見にはKDDI 代表取締役社長の田中孝司氏が登壇した。田中氏は初めに、これまでの3M戦略を振り返った上で「ネットに閉じることなく、リアルな世界で飛び出したいという思いがあった」と、au WALLETに至った経緯を説明。「最初のスマートパスポート構想から用意していたau IDだが、一歩踏み出せていないことがあった。そして第三弾でようやくau IDがキーファクターとして、リアルとの融合の起点になる」と語った。

Online To Offline(O2O)は近年、ビジネスにおける一つのキーワードとして盛んに叫ばれているが、田中社長は「オンラインからオフラインへの一方通行に限った話ではなく、オフラインからオンラインへの誘導も、このau WALLETでは進めていく。本当はオンラインアンドオフライン、"O&O"と呼びたかったんだけど」と、ネットとリアルの融合を進める事業の狙いを説明した。

この事業はKDDIが持つ顧客基盤、約3400万契約(総契約数は3980万)とau ID契約者数1700万、auスマートパス契約者数1000万をベース(いずれも2013年度末見込み)としており、au IDを中核に据える。サービスを垂直展開するために、WebMoneyの残高管理・決済システムとMasterCardのプリペイド決済システムを活用。MasterCardは210以上の国と地域で約3600万の加盟店を持つため、KDDIの顧客基盤との相乗効果で、2016年度中までに流通規模1兆円が期待できるという。

また、同社はau WALLETで決済機能だけではなく、従来から提供してきたポイントプログラムを「au WALLET ポイントプログラム」に一新。au WALLETで決済を行なった場合に、リアル店舗やネットなどの区別なくポイントが貯まるほか、ポイント利用も様々なシーンで利用できる。特に、これまでは利用できなかった通信料支払いにもポイント利用ができるようになるとしており(8月開始予定)、田中氏は「ユーザーから要望の多かった料金支払いでもauポイントを利用できることも合わせて、ポイント利用場所がグッと広がる。このプログラムを"最強のポイント"にしたい」と語った。

このポイントプログラムはそれ以外にも、これまでの3M戦略でも一部利用されてきたO2O店舗送客スキームも活用する。そのため、au WALLET ポイントプログラムの特約店を募り、「ポイントを2倍付与」やauスマートパスとの連携、auトップからの送客といった多段階の顧客アプローチを提供するようだ。

au WALLETに対するチャージは、auショップ各店舗における現金チャージや、スマートフォン連携アプリを利用したauかんたん決済によるチャージ、オートチャージなどの複数の選択肢を用意する。最初はプリペイドカードでの提供を予定しているが「クレジットカードといった他の決済方式も検討している」といい、含みを持たせた。

しかしながら、当初はおサイフケータイが提供されない点について記者から指摘を受けた田中氏は「最近の端末はだいたいNFCも入っているので、一緒にした方が良いんじゃないかと思われるが、決済端末の方でNFCの導入がまだまだ進んでいない。それにユーザー心理として、物理的にカードを持ちたいという人がいる。(iPhoneの存在があるから導入しないのかという質問に対して)おサイフケータイとの距離を置くわけではない。単純に一つのソリューションと結びつけるのはいかがなものかという思いもある」と、やや釈然としない返答を行なっていた。

au WALLETポイントは、Tポイントや楽天カードポイントといったポイントプログラムと競合し、いずれも「ネットとリアルの融合」を標榜している。その点での差別化について田中氏は「ベースラインは電子マネーやポイントシステム。その上に差別化要素としてMasterCardの3600万店舗という基盤がある。本当に広くあまねく1枚で完結できるau WALLETで新たな経済圏の創出を目指していきたい」と語った。