先端的な家電製品を生み出し続けるバルミューダ株式会社。 前回は、同社の大ヒット製品である「GreenFan」が、どのような発想の元に生まれたのかについて紹介した。 連載2回目となる今回は、同社の「ものづくり」が、どのような流れで行われているのか、その手順について紹介する。

試作による実験を繰り返すことで、品質を高める

バルミューダ株式会社
代表取締役社長 寺尾 玄 氏

バルミューダ社では、設計は全て3次元CADで行っている。3Dデータがあれば、コンピュータ上で様々なシミュレーションが行える。さらにはシミュレーションで得たデータを加味して試作品を製作し、実験を何度も繰り返して製品化にいたるとのことだ。

例えば、大ヒット製品となった「GreenFan」の場合、三ヶ月間の間に数十枚のファンを試作。その都度、実験を行った。流体が関わるものは、実際に人がどう感じるかが重要になる。だからこそ「実験して体験することが必要」だと、寺尾氏は語る。それは、同社の最新製品である暖房器具「SmartHeater」においても同様である。



ヒーターにとって最も重要な点は、無駄なく部屋全体を暖める能力である。それを実現するために、「SmartHeater」では熱伝導性の高いアルミ製のラジエーターを採用している。その中でも、特に重要な部分だったのが、アルミ中空構造のフィンである。同社では、完成品に辿り着くまでに、フィンの枚数や厚さなどが異なる4つの試作品を製作し、それぞれについて実験を繰り返していった。いくつもの試作品を製作して実験を繰り返すことは、コスト増につながるとして敬遠されがちである。確かに、単純なコストで考えるのであれば、設計段階で選別していくべきなのだろう。だがバルミューダでは、試作による実験にこだわる。

「試さなければ分からないことは沢山あります。試さずに妥協するより、試して改良する。その方が、不完全なものを市場に出して売れ残るより、はるかに経済的な行為であるはずです」(寺尾氏)

このような試行錯誤によって完成した「SmartHeater」は、従来のオイルヒーターと比較しても立ち上がり速度が約5倍も早くなっている。その他にも、外出先でも操作可能なWi-Fi通信機能搭載、見やすい有機ELディスプレイなど、「SmartHeater」には"より人々が使いやすいものを"というバルミューダのこだわりが注ぎ込まれている。

まず、各チームがベストなものを考える。それがバルミューダ方式

2013年11月に発売された「SmartHeater」 独自構造のアルミラジエーター方式により、従来のオイルヒーターと比べて約5倍早い立ち上がりを実現。Wi-Fi機能を搭載し、外出先からの操作が可能。

製品の開発は、実現可能か、コストが現実的なレベルで収まるか、などを念頭において設計するものである。だがバルミューダの場合は、「できる、できないは関係なしに、自由に、まずはベストなものを考えてもらう」(寺尾氏)

デザインチームの場合、まずはCADデータで外観をデザインする。その段階で、数千枚のレンダリング数となることも多いとのことだ。そして、吟味したものについてモックアップを作成する。同様に、設計チームや、ソフトウェア開発チームなど、それぞれのチームがベストと思われるものを考え、それを持ち寄ってすり合わせ、試作して実験を行う。それを繰り返す。

「大抵の場合、最初の試作では期待する結果は出てきません。しかし実験を繰り返していけば、求める性能を出すためには何が必要なのかが分かってきます」(寺尾氏)

同社の製品は、設計からデザイン、製品に組み込むソフトウェア、そしてEMSに委託している量産の管理を含めて、すべて自社内にて行っている。そのひとつ一つにおいて、各チームが知恵を絞り、試作と実験を繰り返し、アイデアを形にしていく。これによって、独創的なデザインと機能を持った製品が生まれてくる。それがバルミューダの求める「ものづくり」、言うなれば「バルミューダ方式」である。

いいものを生み出す為に、手間を惜しまず、あらゆる手段を尽くすバルミューダのものづくり。その中で、同社が最も注意するポイントがある。それは一体何なのか・・・・・・? 次回、乞うご期待。