COO事業推進本部 起点獲得推進室 室長 岡 昌樹氏(左)とCOO事業推進本部 制作部 制作2 リーダー 会田 智史氏

ヤフーは12月12日、同社のポータルアプリ「Yahoo! JAPAN」で、Android向けに提供される「メモリ最適化」の機能と、AndroidだけではなくiOS向けにも提供される「トップページ下部のニュース記事レコメンド」機能を新たに追加した。

10月のアップデートで追加された「スライド検索」機能について「【動画あり】ヤフーがAndroid向けにアプリ起動中の検索機能を提供」で話をうかがった、COO事業推進本部 起点獲得推進室で室長を務める岡 昌樹氏と、COO事業推進本部 制作部 制作2でリーダーを務める会田 智史氏に、スライド検索の現状と新機能の狙いについて話を聞いた。

「スライド検索」は想定通りの滑り出しである一方で課題も

「『スライド検索』は、アプリのアップデート時にプロモーションをしていないにも関わらず、多数のユーザー様にご利用いただいている」と岡氏。詳細は該当記事をお読みいただきたいが、画面サイドに表示してあるタブを引き出すことで検索画面が出てくるスライド検索は、手軽に検索機能を利用できるメリットに魅力を感じているユーザーも多いようだ。

その一方で、ロンチ後に浮かび上がった課題も見えてきて、一部機能の改良を行ったという。

チュートリアルを用意してタブ移動がわかるように改善を図った

「実は、スライド検索を引き出す"タブ"が移動できることに気付かないユーザーが非常に多かった。スライド検索を有効にしたあと、無効にしたユーザー向けのアンケートでは『タブが邪魔』という声を多数いただいた」(岡氏)

デフォルトの位置では文字入力やゲームをする際に触れやすい右サイド中央に表示されているため、使いづらい印象を与えてしまった可能性があるという。

岡氏らは、これらの意見をもとに、スライド検索を有効にした際、タブ移動ができるチュートリアルを取り入れた。これにより、継続利用率が劇的に改善したという。また、当初は右サイドに限定していたタブの位置を左にもずらすことができるようにしている。

「ほかにもタブのデザインをいくつか追加する。スライド検索は女性の支持もいただいてもり、『可愛いタブがあれば嬉しい』といったご要望もいただいた。ほかにも、もっと目立たないタブや、引き出しやすい大きいタブなどを検討している」(岡氏)

新機能の「メモリ最適化」

ヤフーがAndroid向けに「Yahoo!スマホ最適化ツール」を出していることをご存知の読者はいるだろうか。同アプリは、電池持ちや端末の動作が気になるユーザー向けに提供されている最適化アプリで、バックグラウンドで動いているしばらく起動していないアプリを終了させて、電池持ちと動作の改善を図っている。

このアプリの機能が、「Yahoo! JAPAN」アプリの一つの機能として新たに組み込まれた。別アプリとして提供するよりも、日々利用してもらうアプリに組み込むことで、ユーザーが利用しやすいようにしたものだと岡氏と会田氏は説明する。

「意識することなく、普段使いでYahoo! JAPANアプリを利用していただいているケースが多いので、ほかのアプリを含めて少しでも軽快に動くように、スマートフォンを利用する際のストレスを減らす目的で移植を行った」(会田氏)

ユーザーが気付きやすいように、Yahoo! JAPANアプリのトップに「快適」アイコンを設置。アイコン画像も多数用意してアンケート調査を行って絞り込んだという。

多数のデザイン候補からアンケートを利用して絞り込んだ

「デザインは気付きやすいものをメインに複数の要素から絞って選びました。"機能が分かるアイコン"や"状態が分かるアイコン"、"押したくなるアイコン"など、それぞれ異なる結果が出ましたが、総合的な観点で決定しました」(会田氏)

最適化を行う際には、アニメーションで端末の状態を最適化する状況を表現する。「某社のサイクロン掃除機を思い浮かべて、このアニメーションにしました(笑)」(岡氏)。

なお、最適化のアニメーションを見せてもらった端末はGoogleの最新端末「Nexus 5」で、早くもAndroid 4.4 KitKatにアプリを正式対応させている。日本最大のポータルサイト運営会社として、Android 2.1~4.4まで幅広くサポートすることは重要な要素の一つだと岡氏は語っていた。

AndroidだけではないiOS版でも提供される「トップページ下部のニュース記事レコメンド」機能

冒頭で触れた「スライド検索」機能はAndroidのメリットである自由なデザインガイドライン、「メモリ最適化」機能はバックグラウンドで多くのアプリが動作するAndroidが抱えるデメリットのために用意されている。

そのため、同じYahoo! JAPANアプリでも、iOS版については大きな機能拡張の話題が少なかった。しかし、今回は「トップページ下部のレコメンド記事」がAndroid版と同時に提供される。

「これまでにもニュース記事の表示は行っていましたが、全員一律で『社会でなにが起きているのか』という点をベースにトピックスのような形で提供していました。今回の"レコメンド"は閲覧履歴などから、ユーザーそれぞれに最適化されたオススメ記事を表示するようになります」(会田氏)

先日、Yahoo!ニュースのリニューアルが行われ、こちらもパーソナライズの強化をうたっているが、アプリの追加機能とは異なる動きだという。

「アプリ内の検索キーワードやニュース記事の閲覧履歴をもとにレコメンドします。それに加えて"Yahoo!マーケット"や様々な雑誌の最新記事が読める"X BRAND"などのソースも含んでいます」(会田氏)

アプリ公開時にはニュース記事をメインに配信する予定だが、いずれは「Yahoo!知恵袋」やYahoo! JAPAN外のコンテンツなども配信を検討しているという。

「インタレストマッチに近いシステムでレコメンドの仕組みを構築している。フレッシュな情報を出していきたいと考えているのでリアルタイムで適宜レコメンドを出す。この機能は、ちょっとした空き時間でスマートフォンを利用する5~10分をYahoo! JAPANアプリで過ごしていただくことが目的。お客様がほしいと思っている情報が全て入ってくるような機能にしていきたい」(岡氏)

現在はニュース記事のレコメンドがメイン

「パーソナライズ機能が嫌だ」という人については設定でオフにできるといい、ユーザーに負担を感じさせないアプリ作りは「スライド検索」の実装方法と変わっていない。

「その一方で、レコメンド機能を求めるユーザーにとって、将来的にはYahoo JAPAN IDとデータを統合することが重要だと考えている。現在は、ヤフー内のそれぞれのサービスが持ついい部分をそれぞれ生かし合っていけるようにしたい」(岡氏)

最後に、Yahoo! JAPANアプリの開発にあたっての思いを会田氏が語ってくれた。

「日々、速度改善やUI改善に情熱を注いでいます。バグが見つかったら迅速に対処する。お客様の声を一つ一つ真摯に受け止めなければ改善は進まないし、改善した結果、お客様が『サクサク動く』という声をいただけることが一番嬉しい。大きな機能追加は頻繁に出せるわけではありませんが、アプリの改良と改善を毎日いかに進めていくかが重要な仕事だと思っています」(会田氏)