「ユーザーの『めんどくさい』を解消したいという思いから、開発が始まりました」――ヤフーは10月28日から、Android端末向け「Yahoo! JAPAN」アプリに「スライド検索」機能を追加する。
同機能は、「いつでもどこでも、すぐに検索できる」をコンセプトに、どんなアプリを起動しているときでも、すぐに検索できることが特徴だ。
今回、スライド検索機能の企画・開発を行ったヤフー COO事業推進本部 起点獲得推進室 室長の岡 昌樹氏と、同本部 企画部 企画1(企画当時)の花井 陽子氏に開発の経緯などをうかがった。
Yahoo!検索はひと味違う?
既報の通り、ヤフーはGoogleの検索エンジンを2010年より導入している。日本最大の総合ポータルサイトであるヤフーだが、Googleが近年、検索サービスで国内シェアをじわじわと伸ばしており、ヤフーに迫りつつある。
花井氏は「Yahoo!で検索しようが、Googleで検索しようが同じでしょと思われるかもしれない」と前置きをした上で「『Yahoo!検索を使うと良いことがある』ということをユーザーに提供していきたい」と語る。
詳細な内容は個別の記事を参照していただきたいが、Yahoo!検索に着せかえテーマ機能を導入したり、ファミリーマートとの提携により検索するとクーポンが提供されるといった取り組みを行っており、「良いことがある」をポイントに、Google検索との差別化を一歩一歩着実に行っている。
また岡氏は、Yahoo! JAPAN検索サービスの1つである「リアルタイム検索」をスマートデバイス向けアプリとして提供している「話題なう」の開発も行った。Twitterだけではなく、Facebookも含めたソーシャルの盛り上がりをリアルタイムで知ることができるため、"今を知る"には便利なアプリ。
これらサービスと同様の流れで「検索機能をより手軽に使って欲しい」(花井氏)という思いからスライド検索機能の開発に至ったという。
スライド検索の前には"ボツ"になった幻の検索機能も
「ユーザーにとって手軽な検索機能とは何か」を分析するために、検索機能を使用する際のユーザー行動を調査した結果、大きく2つの目的に分けられることがわかったという。
岡氏は「『結婚した芸能人って何のドラマに出ていた人だっけ』や『このニュースになっている場所はどこなんだろう』といった接触した情報から始まる検索行動と、『そういえば夜ご飯は何にしようか』といった初めから検索したい答えがない情報、もともと考えていた検索欲求からの検索行動があることが分かった」と当時を振り返る。
二人は、後者の検索行動に注目。ユーザーにとって一番近い位置に検索窓を置けば検索してもらえるのではないかという考えから、「ロック画面を検索窓にする機能を最初に開発した」(岡氏)という。
確かに、電源キーを押して最初に検索窓があれば、そのまま検索行動に移りそうだが「社内でテストを行ったところ、結果は散々だった」と岡氏は苦笑い。
テストをしてもらった社員に「なぜ機能を利用しなかったか」と尋ねたところ、「検索窓の存在には気付いたけれど、(習慣的に)ロック画面から検索するという行動はとれなかった」という声が多く、ロック解除の場面ではユーザーニーズがないと判断したという。
その後、スライド検索機能へと繋がって行ったわけだが、こちらは「ブレストを行っている中で、『アプリを利用している途中でわざわざホームに戻り、ほかのアプリで検索を行うといった行動がめんどくさい』という声が出てきて、この機能の開発が始まった」(岡氏)のだという。
ユーザビリティを考えたスライド検索
スライド検索機能は下の動画を見ていただくと、どのような機能か分かりやすいだろう。
マップアプリの起動中に、右サイドに表示されている"タブ"を画面外からスワイプすることで、検索画面を引き出していることが見て取れる。
また、動画の途中でタブの位置を変更しているが、これは「ゲームアプリによっては、タブの位置が邪魔になる。位置を変更できるようにすることで、ユーザービリティを損ねないようにした」(花井氏)のだという。
ほかに、動画の中では触れていないものの、検索してたどり着いたページはアプリ下部に配置したボタンから簡単に共有できる。
「(ITリテラシーの高いユーザーからすると)意外かもしれないですが、Android端末で便利な共有機能を知らないユーザーは意外と多く、調査をしてみるとカカオトークやLINEで友達にURLを送る場合にブラウザのURLをいちいちコピーして貼り付けているケースが見られた」(花井氏)
URLコピーボタンと共有マークのボタンを大きく見せることで、簡単に他アプリへのWebサイト共有が可能となり、元のアプリにも戻りやすくなる。
スライド検索でより良い検索体験を
同機能の企画・開発は、岡氏と花井氏の2名で7月にスタート。現在はUIの微調整を続けているという。「スライド検索で重要な、機能を利用するための"タブ"が邪魔になっては元も子もないので、デザインやサイズを細かく調整している」(花井氏)
ほかに気を使っている点としては「このアプリに限らず、ヤフーのアプリやウィジェットはバックグラウンドで動く機能を持つものが多い。常駐している以上、アプリが落ちてしまうということはあってはならない」と岡氏。
毎日利用するプラットフォームが落ちてしまっては信頼を失ってしまうため、"安定して使える事"を第一に開発を行ってきたという。最近はAndroidバージョン4.0以上に限定したアプリも多い中で「Yahoo! JAPANアプリのいち機能ということもあってAndroid 2.1も対応端末に含まれている。お陰で検証しなくてはならない端末が非常に多く大変(笑)」(花井氏)という苦労も明かしてくれた。
また、スライド検索はデフォルトで"オフ"にしている。「Yahoo! JAPANは幅広いユーザーに利用していただいており、ユーザーに不自由があってはならない。機能を提供する際に、スライド検索機能のお知らせを出して、チェックを入れてもらえば利用できるようになる」(花井氏)
最後に、スライド検索機能を通して、Yahoo!検索をどのように使ってもらいたいかとの問いに、岡氏は「スマートフォン、とりわけAndroid端末はGoogle検索がしやすいように作られており、iPhoneと比較してYahoo!検索の一人あたり検索数が伸び悩んでいる。シームレスに使えることを重点に置いて開発したスライド検索を利用して『すぐに検索できる』というより良い検索体験をしてもらえれば」とユーザーへの思いを語った。