東京大学は11月14日、動物の生後発達期のシナプス結合を識別するメカニズムを解明したと発表した。今回の成果は、東京大学大学院医学系研究科 機能生物学専攻 神経生理学分野 教授の狩野方伸氏らグループによるもので、同日に科学雑誌「Nature Communications」のオンライン版で公開された。

生後発達期に脳の神経回路が形成される過程では、必要なシナプス結合の強化と不必要なシナプス結合の除去(シナプス刈り込み)が同時期に起こり、神経回路の大規模な再編成が行われている。この必要な結合の強化や不必要な結合の除去は、一般的に神経細胞の活動に依存するとされており、神経細胞の活動に依存して機能するさまざまな分子がシナプス刈り込みに関わる因子として同定されている。しかし、脳内における神経細胞のどういった活動がシナプス結合の選別に重要なのかはほとんどわかっていなかった。

そこで狩野方伸教授らのグループは、ラットとマウスを用いた実験を行い、発達期の小脳において必要なシナプス結合の強化とシナプス刈り込みに関わる神経細胞の活動パターンを同定し、シナプス結合が選別されるルールを明らかにした。

また、多数の弱いシナプス入力(情報を伝える側の神経細胞が発する電位・電流変化)が働くことで、受け手側の神経細胞に発火を引き起こし(バースト発火)、その発火に最も寄与した入力側の神経細胞とのシナプス結合のみが強化されることが分かったという。さらに、このバースト発火が神経細胞内のカルシウム濃度を上昇させ、最も近接したタイミングで活動した入力側の神経細胞とのシナプス結合だけを強めることを明らかにした。

同研究で得られた結果は、発達期のシナプス結合の選別のメカニズムとして、多数の弱いシナプス入力が協働することで神経細胞の発火を引き起こし、その発火に最も寄与する入力を選択的に強化することで、最終的に残る入力線維を選ぶことを示している。生後発達期においては、小脳に限らず、大脳や海馬をはじめとする多くの脳領域で神経細胞の同期的活動があることが広く知られているが、同グループが明らかにしたシナプス結合の選別のメカニズムによって、ヒトを含む動物の脳の生後発達期における神経回路形成の共通メカニズムとして働いていると期待されている。

バースト発火のタイミングと大きさの関係が発達にともなってどのように変化するかを調べたところ、バースト発火に最も近いタイミングで入力するシナプス結合が選択的に強くなるという