浜松ホトニクス(浜ホト)は10月8日、高速応答性を約3倍向上し、高S/N(信号雑音比)を実現したヘッドオン型38mm径光電子増倍管「R12845」を、次世代TOF-PETや高エネルギー物理学実験、放射線モニターなどの用途に向けて、10月10日から国内外のPET装置メーカーなどに提供を開始すると発表した。
近年、PET(陽電子放出断層撮像)装置は、S/Nの良い鮮明な画像を得るために、ガンマ線の飛行時間差を利用したTOF-PETの開発が進んでおり、次世代TOF-PETには、陽電子の消滅地点を特定するために、放射線検出器のさらなる高速応答性の向上が求められていた。
同製品は、現在のTOF-PETに用いられているヘッドオン型38mm径光電子増倍管を改良し、高速応答性のパラメーターである電子走行時間分布(T.T.S.)を550psから190psと約3倍に向上することに成功。また、光電面の場所の違いによる出力感度の不均一性(ユニフォミティ)を解消し、均一な検出効率を得ることも可能としたほか、電子増倍部の電極構造をシンプルにして、量産対応を可能にしたとのことで、従来1日2-3本の生産であったものが1日200-300本の生産が可能であるという。
同社では同製品について、高速応答性を生かすことでPET装置以外の高エネルギー物理学実験や放射線計測機器への応用にも期待できるとしており、ヘッドオン型28mm径光電子増倍管で、同製品と同じ改良により、電子走行時間分布190psを実現した「R12844」と合わせて、そうした分野に展開を図っていきたいとしている。なお価格は2製品ともに8万4000円で、販売1年目で2000万円、3年後には2億円の売り上げを目指すとしている。