シームレスなIT管理と操作性を強調

米国VMware社長兼COOのCarl Eschenbach(カール・エッシェンバック)氏

米国サンフランシスコで開催中の「VMworld 2013」(8月25日~29日)。2日目の基調講演には、米国VMware社長兼COOのCarl Eschenbach(カール・エッシェンバック)氏と同社の上級エンジニアが登壇し、26日に発表した「VMware NSX」および「VMware Virtual SAN」について、デモを交えながら紹介した。

講演冒頭Eschenbach氏は、現在企業が抱える課題として、IT部門とビジネス部門の「乖離」を指摘。ITインフラに欠かせない3要素して、「すべてのITを仮想化すること」「管理を自動化すること」「互換性のあるハイブリッドクラウドによるユビキタス環境を構築すること」を挙げ、ITとビジネス部門の乖離を埋めるためには、「顧客や従業員がどこからでも自分の使いたいアプリケーションにすぐアクセスできる『IT as a Service(IaaS)』環境を構築することが重要である」と強調した。

ITインフラに欠かせない3要素

こうした環境を実現するのが「Software-Defined Data Center(以下、SDDC)」であり、その中核を担うのが「VMware NSX」であるというのが、今回のコンファレンスのメッセージである。SDDCですべてのITリソースを仮想化し、ソフトウェアによってシームレスにITリソースを管理しようという戦略だ。

デモンストレーションでは「vCloud Suite」に包含されている自動管理ツール「VMware vCloud Automation Center」を利用し、ユーザーがクラウドサービスを、コストを比較しながら選択できる機能が紹介された。操作はプルダウンメニューから利用したいクラウドサービスを選択するだけであり、それがプライベートかパブリックかはユーザー側には一切意識させないインタフェースとなっている。「ユーザーはノード数を設定するだけ」(Eschenbach氏)だという。

さまざまなクラウドサービスを比較しながら選択できる

また、「vCloud application directory」機能は、アプリケーションとインフラを切り分けて表示させるもので、レガシー環境のように利用するアプリケーションによってインフラを気にする必要がない。プロビジョニングは数クリックで終了し、設定も数分で終了する。

「VMware NSXは物理スイッチを自動で論理スイッチにするだけでなく、ルーティングも自動化する。さらに、ネットワークセキュリティポリシーの設定も容易だ。もちろん、現在物理環境で利用しているアプリケーションはすべて利用できる。VMware NSXは(新たにハードウェアを購入する)投資を抑制するだけでなく、既存のハードウェアを拡張して活用できる」(Eschenbach氏)

App StoreからITインフラを提供するように…

こうした特性は、VMware Virtual SANの管理も同様である。VMware Virtual SANはポリシーベースのストレージ管理のアプローチを採用しており、VMware NSXと同様に、アプリケーションのニーズに合わせてストレージサービスをリニアに拡張できる「分散アーキテクチャ」が基盤となっている。

個別の仮想マシンのポリシーを遵守するために、実行中のワークロードの状態の変更に合わせて、セルフチューニングと負荷分散を動的に実施する。VMware vSphereから直接提供されるアプリケーション視点の仮想データサービスとして、バックアップ/クローン/レプリケーションも可能になっている。

また、プロビジョニング/管理の自動化で、マニュアル作業が不要になったことも大きい。実は、自動化のメリットの1つは、人的ミスがなくなることだ。これにより、SLA(サービスレベルアグリーメント)も改善できる。

「自動化によりアプリケーションを素早く市場に投入できることはビジネスにとって大きなメリットだ」と語るEschenbach氏

Eschenbach氏は「こうした自動化による優位性は、既存のシステムのボトルネックを解消する」と強調する。

初日の基調講演で同社CEOであるPat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏は同社が目指すIaaSのあり方について、「App Storeからアプリケーションをダウンロードするのと同様に、顧客が利用したいIT環境――そこには管理やセキュリティも包含される――を入手し、すぐに利用できる環境を目指す。それがVMwareのビジョンだ」と語っている。