Googleは7月31日、Google Playに関する同社の取り組みや、開発者支援の状況を紹介する記者説明会を開催した。現在、Google Playには100万個の有償、無償アプリが登録されており、累計ダウンロード数は500億回にのぼるという。
Playストアでは、一般的に知られているアプリやゲームだけではなく、書籍と映画も販売されており、Googleが販売するAndroid端末その物もラインナップされている。
説明会に登場したGoogle エンジニアリングディレクターのクリス・ヤーガ氏は、「日本だけでも数百万人のユーザーが利用している。完全にクラウドベースで構築されており、自身が保有するAndroidデバイスであれば、全てのGoogle Playコンテンツが同期されることが強み」と語る。
Android端末は、5月に米国で行われたGoogle I/Oで「全世界で9億台がアクティベーションされている」と発表されるなど勢いはとどまるところを知らない。「Google Playにおいてもその勢いを感じている。累計のダウンロード数が500億回に達したが、プラットフォームがグローバルに広がっていなければ達成できない数字」とその好調ぶりに自信を見せた。
この勢いは、エコシステムがうまく回っているからに他ならないとヤーガ氏は語る。
「Googleは"ユーザー"、"ディベロッパー"、"Google"の3者にとって、良いエコシステムを作り上げるのが目標。Androidは公平な競争の場が提供されているので、多くのディベロッパーに、このエコシステムへ参加して欲しい」(ヤーガ氏)
ディベロッパーに負担をかけることなく、このエコシステムをさらに加速させるために、Googleでは開発者のサポートを行っている。「開発デザイン」から「配布・配信」、「収益化」まで、アプリ開発の全てにおいてサポート体制を整えていることをヤーガ氏は強調。「アプリのコードを書き始める前から、Androidアプリのデザインガイドラインを提供することで、見栄えの良さやユーザビリティなどを整えることができる」と語る。
また、Google I/Oで発表したSDK、「Androidスタジオ」ではAndroid開発の負担減を図ることができ、開発者から大きな反響があったという。「Androidでは、中心となるapi群も開発者がアクセスできるよう開放しており、GoogleマップのAndroid向けapiも提供。開発者がアプリ内でGoogleサービスとの連携を容易にできるようにしている」(ヤーガ氏)。
ほかにも、開発者支援をGoogleが直接行う「ディベロッパー リレーション チーム」が設けられており、大規模パートナーへのアドバイザリはもちろん、中小規模の開発会社支援も積極的に行っているという。
開発を終えた後もキッチリ支援するGoogle
開発を終えたアプリは「Google Playへアップロードして終わり」とはならないのがGoogleの支援体制だ。Google Playへアップロードする際に、「Playデベロッパーコンソール」を用意しており、配信先国や価格を細かく設定できるほか、アプリ売上の可視化ツールなども提供されている。
アプリのマネタイズは開発者にとっての悩みどころと言えるが、Google Playの好調ぶりはその面においてもいい結果を残しているようだ。
「Google Playは130カ国以上で提供されており、売り上げの67%はアメリカ以外で発生している。今年、Googleが開発者に対して支払ったレベニューは既に昨年1年間の総額を超え、アプリ開発者1人あたりのレベニューも2.5倍に増加した」(ヤーガ氏)
日本における収益化支援の中で、特に重要視しているのは携帯キャリアを通して支払いを行う「キャリア決済」だという。クレジットカードを持つことなく、スマートフォンでの決済が可能となるため、料金支払いの敷居が下がる。また、クレジットカード所有者であっても、キャリア決済の選択肢が用意されている場合は73%がキャリア決済を利用した料金支払いを行っていたという。
韓国においても同様にキャリア決済が普及しているといい、「両国でキャリア決済を導入したところ、導入前と比較して売り上げが14倍に増大した」(ヤーガ氏)結果になったという。
ほかの収益化支援の柱としては、「アプリ内課金」が挙げられる。アプリ内課金は、アプリの特定機能を利用する場合に課金を行うモデルで、Google Playの売り上げ上位24アプリのうち、23個がアプリ内課金で収益化を図っていたという。Googleではほかにも定期購入モデル(一定期間ごとに課金)なども開発者に対して提供している。
最後にヤーガ氏は、「規模の小さい『なまず速報』アプリが非常に大きな成功を納めるなど、日本の開発者が多く成功している現状がある。実際に、Google Playの国別売り上げで、日本は世界トップ5に入っている。私たちはこのことを誇りに思っているし、今後も魅力的な市場として考えている。だから、私は家族と共に日本へ転勤してきたんだよ(笑)」と話し、Googleとしても日本市場を大事に考えている姿勢を見せた。
また、ガンホー パズドラスタジオ プロデューサーの山本 大介氏も説明会に登場。iOS版、Android版の売上高、アクティブユーザー数の推移を示し、マネタイズが難しいとされてきたAndroid版が、iOS版を超える売り上げに達したことを説明した。
第3のOSは恐るるに足らず?
説明会終了後に質疑応答が行われた。
「発展途上国でのGoogle Playはどのような傾向があるか?」との質問には、「基本的に日米韓の後追いといった状況でアプリがダウンロードされている。アクティベーション数が加速的に増加しており。成功の余地は大きいと思う」(ヤーガ氏)と回答。
また、Google Playで個人情報を抜き取るアプリが相次いで発見されている点を問われると「Androidでは、アプリがどのような振る舞いをするのか権限を明示しているし、ユーザー自身が確認することで攻撃を食い止めることができる。もちろん、Googleとしても『バウンサー』という仕組みを利用してアプリスキャンを行い、怪しい振る舞いをするアプリを排除している」(ヤーガ氏)とした。
なお、Googleではそのような取り組み以外にも「本来うたっている目的とはかけ離れたアプリを何度もGoogle Playにアップロードする開発者に対してはストアからの退出をお願いしている」を行っている。
最後に、「HTML5ベースのTizen OSやFirefox OSといった"第3のOS"が今年後半より市場投入が始まるが、開発者がそちらにリソースを割く懸念がGoogleにないのか」との質問が投げかけられた。
これに対してヤーガ氏は「Good Question。パズドラの売り上げ推移を見てもらえればわかると思うが、開発者はレベニューが得られるプラットフォームに対して投資を行う。それに加えて、Googleでは世界の開発者のために様々な支援を行ってきた。OSの支援はその一部分に過ぎず、多岐に渡る支援を行うことでエコシステムを構築してきたし、それらを考慮した上で開発者の皆さんはリソースの配分先を考えてくれると思う」と述べ、Googleの開発者に対する手厚い支援に改めて自信を見せた。