ユーザーの好みに合わせてニュースをレコメンド

PCでのGunosy利用画面。個人の興味関心に応じたコンテンツが並ぶ。サービスコンセプトは「あなたに合った記事を毎日おとどけします」

Web上には大量のコンテンツがある。毎日発信されるニュースも膨大だ。この膨大な情報の中から自分が読みたいものを拾い出すにはそれなりの検索能力や情報選別能力と、ある程度の量を読む労力が必要となる。しかし、その技術と労力をカットして、誰もが自分の関心のあるニュースだけを集めて手軽に読める環境を作ってくれるサービス。それがレコメンドサービス「Gunosy」だ。

Gunosyは、TwitterやFacebookへの投稿内容や「いいね!」など、本人から発信される嗜好情報を分析し、情報の選別に利用する。この仕組みを作り、2011年10月にGunosyをスタートさせたのは、当時、東大大学院生だった3人の青年だ。公開後、Gunosyは順調に利用者数を増やし、2012年11月には法人化。2013年4月時点で、ユーザー数は13万を超えたという。

Gunosy 代表取締役 福島 良典氏

「学部時代の同級生で、大学院では専門が違っていたのですがそれぞれデータマイニング系の研究をしていました。集まって何かアプリを作ろうと考えた時、自分自身がRSSリーダーに未読記事が溜まるなどうまく使いこなせていなかったので、何か解決策となるアプリを作ろうと思ったのです」と語るのは、Gunosy 代表取締役の福島 良典氏だ。

「当初は自分たちが欲しいものを作って、大学の友人100人くらいに使ってもらえればいいなと思っていました。ところがTwitterでつぶやいたら、著名な人に拾ってもらえたのです。そこから広がり、ユーザーが増え始めました」と開発部の関 喜史氏は語る。

開発部 関 喜史氏

技術者が本業以外に技術を披露する場を持っていることは、今となっては珍しくない。しかし、Gunosyの成長はその範疇を超えていた。2013年春に卒業を控えた立ち上げメンバーが将来を考えた時、就職して片手間に運営を続けられるものではないと判断したという。

「思いのほか反応がよく、(当時の)2万人のユーザーのうち70%が継続的に利用してくれている状態でした。このままやるしかないと考え、法人化を決意しました」と福島氏は語る。

短期的な収益獲得よりサービス成長を重視

法人化したGunosyは、ますますユーザー数を伸ばしている。しかし技術の切り売りで短期的に収益をあげることは目指していないようだ。

「まずはGunosyというサービスを充実、成長させることを重視しています。広告表示なども考えないわけではありませんが、まだその時期ではないと思っています。ベンチャーというのは資金を集めやすいものですが、Gunosyは特に認めていただいていて投資を受けやすい状況です。無理に収益を上げることより、利用者層を広げることを優先したいですね」と語るのは、マーケティング部 アライアンス担当の竹谷 祐哉氏。

マーケティング部 アライアンス担当 竹谷 祐哉氏

竹谷氏はスタートメンバーではなく、後からマーケティング担当としてGunosyに参加した。外部から想像していたGunosyと、実際に中に入って見える光景には違いがあるという。

「東大大学院の人が3人で作ったとなると、机上でいろいろやっているんだろうと思っていたのですが、実際には違いましたね。みんな数字が大好きなので、検証も予測もしっかりと数字を出して話しますし、技術的に難しいことを導入するよりもよい結果が出せる方法があればそちらを優先するという感じです」と竹谷氏。

ユーザーの要望は潜在的なものも含めて、積極的に取り入れられている。頻繁にアップデートする中でカラーリングやコンテンツの配置にも配慮し、実際のユーザー行動を分析した上でよりよいものを次々と投入している。Gunosyを成長させることに、誰もが熱心だ。

「将来的にはレコメンドエンジンをベースとしたサービス展開を積極的にやりたいと思っています。レコメンドエンジンというのは汎用的なものではないので、Gunosyのものをそのまま転用するという形にはなりません。きちんとGunosyの技術を使っているという形で表に出しながら使っていただけるものはやりたいですね」と関氏。

メディアサイト内での関連記事抽出はもちろん、複数メディアを跨いだ記事閲覧状況を見える化するサービスなども考えているというが、まずはGunosy本体のブラッシュアップに注力しつつ、将来的には技術提供なども行いたいという意向のようだ。

100万ユーザー獲得が1つの目標

Gunosyは、まずTwitterなどの投稿から最初にユーザーの興味の傾向を判断し、ニュースの選別を行う。その後は配信された記事のクリック率も含めたチューニングを行い、配信内容を変化させて行く。日々配信されるニュースを見ているうちに利用者が気に入ったポータルサイトをみつけ、そこに直接アクセスするようになれば、Gunosyではそのジャンルの記事があまり配信されなくなり、別の興味関心に合うようなニュースをレコメンドしてくる。

「私の場合、最初はITニュース中心だったものがサッカーになり、今は経済ニュース中心になっています。まんべんなくニュースを提供する媒体は、新聞をはじめとしてたくさんあります。Gunosyはパーソナライズされた新聞の一面的なポータルです。もしGunosyに欲しい情報が入っていないようならば、検索をすればいい。Gunosyはその検索すべきワードがわからない、この情報が欲しいとわからない人の入口でありたいですね」と関氏は語る。

新聞でもテレビニュースでも、すべてのジャンルの全記事を注意深く読むということはない。必ず自分の中で興味があるものとないものをフィルタリングしている。しかしWebの膨大な情報を意識的にフィルタリングするのは難しい。そこに、自然な形でのフィルタを提供するのがGunosyだ。つまり、自分で確たるフィルタを持たない人、うまくフィルタリングが行えない人のためのサポートツールということだ。

Gunosyサービス利用者の推移。Webサービスに始まり、スマートフォンアプリの提供と順調に利用者を伸ばし、直近の4月に13万を突破。DAU率も高い数字だという

「実際には、20~30代のビジネスマンが中心ユーザーで、ある程度ネットが使いこなせているアーリーアダプターが使っているという状態です。13万ユーザーといっても、日本国民全体から考えれば0.1%。これが100万人を越えて1%の人が使っているという状態になれば、いろいろなことが変わってくるでしょう」と福島氏。その100万ユーザーを越えるのはいつかといえば、「年内には突破できそう」だという。

将来的な展望を聞く中で、繰り返し語られたのは「メディアとのリレーション」についてだった。ニュースを配信する各メディアとGunosyはライバルではなく、よい関係を作れるものだという。

「Gunosyはメディアと読者を"つなぐ"存在です。メディアの発信するものを借りている立場ですから、メディアとのリレーションを大切にしたいですね。世の中に価値を生み出す企業でありたいと考えています」と竹谷氏。

先に述べたようなレコメンドエンジンのサービス展開なども含め、メディアサイトの記事品質向上に役立つ技術や情報の提供も考えているようだ。

サービス提供開始から約1年半、法人化から約半年が経った現在、Gunosy利用者数の成長は順調だ。この先、利用者数100万人という目標を達成できるか、利用者やメディアとの良好な関係を保ちつつ収益化を図れるかどうか、Gunosyの進む道は平坦ではないが若い彼らの挑戦に注目だ。

左から関さん、福島さん、竹谷さん