最初に、ちょっとお断り。「隕石が落ちる」と言いますが、正確には、地球に落ちたら「隕石」で、落ちる前は「小天体」です。ややこしいので、この記事では両方とも隕石ということにしますね。キュレーターやっていると、まわりに口うるさい人が大勢いて……すみません。
隕石はたくさん落ちている、けど珍しい
さて、隕石ですが、地球には実は驚くほどたくさん落ちています。100g以上の隕石だと年間3万個。毎日100個が地球のどこかに落ちていると推定されているのです。ただ、地球の7割は海ですし、人が住んでいないところも多いわけで、実際に落下が目撃されたのは、有史以来1000個程度にすぎません。うーん、一気に稀少になってきました。
隕石は、原則としてロンドンの自然史博物館が刊行している「隕石カタログ」に記載されています。それ以外の隕石もあるのですが、標本としての価値は著しく落ちます。動物の「血統書」とか宝石の「鑑定書」みたいなもんですね。
多くの隕石は博物館に収蔵されています。アメリカのニューヨークにある自然史博物館では立派な隕石がシンボルになっています。日本では東京・上野の国立科学博物館が有名です。ここには隕石の専門家がいて、日本中の隕石を把握しています。えーと、こちらのリストに日本に落ちた隕石が載っています。全部で52個です。
一番古いのが861年。最近のものが2018年の広島に落ちたもののようです。1990年代は2年に1個くらいですね。「隕石の確率」なんて歌もあるわけですが、やっぱりすごく珍しいといっていいようです。
隕石の値段は1000円程から、東急ハンズでも買えます
ところで、私は隕石を持っています。「裏のルート」をつかったわけではなく、ごくふつうに購入したのです。どこで? 東急ハンズで。
隕石が珍しいといいました。落下が目撃されているのは1000個くらいといいました。ウソではありません。でも、隕石は数万件発見されており、さらに隕石がバラバラになって、多数見つかることもよくあるのです。これには「隕石ハンター」の活躍を無視できません。有名なのはハーグという隕石ハンターですが、彼は博物館などに買ってもらう隕石を探すのを商売にしています。どうしているかというと、
すでに隕石が発見されたあたりをもう一回さがす。二匹目のドジョウ作戦
隕石について現地の人にレクチャーし、お小遣いをあげてさがす。人海戦術作戦
といったことのようです。
隕石ハンターが主にねらうのは鉄でできた隕石です。ほぼ鉄とニッケルのかたまりで、もちろん磁石につきます。そんな石が鉱山や鉄工場が近くにないのにあったら、隕石である可能性が高いというわけです。
ところで、磁石につかない隕石もあります。というか、その方が多く8割以上だといわれています。ただ、そうした隕石はみつけにくく、また風化しやすいので発見数が減るのですね。でも、地域にある石とは明らかに特徴が違うものがあれば、隕石である可能性がグッと増します。
また、そうした石の隕石にはルーペでみると丸い模様がたくさんみられることが多く、プロならみわけられるそうです。私にはわからないですけどね。
そうして発見された隕石は、博物館以外にも、学校用の科学標本として売られたり、愛好家向けに「ミネラルショー」といった即売会にも出品されたりします。そのさい、1つの隕石をスライスして(スライスした模様が独特で美しい)何十個の標本になったりもします。隕石はそれほど稀少ではないのです。
さて気になる値段はというと、1gあたり1000円からといったところ。小さなものは石くずみたいなものですが、隕石のかけらであることには間違いありません。ただ、転売しようにも価値がありませんし「血統書」が失われてしまうと意味がないので、自分だけのロマンというくらいでしょうか。
ちょっと高価なものとしては、石と鉄がまじった隕石があり、これは数が少ないのと、ある程度大きくないと標本としておもしろくないのでぐっと高くなります。でも、一握りの石が100万円とかいうことにはなりません。
隕石を買いたい! どこで販売している?
購入する先としては、いくつかのきちんとした鉱物標本店がおすすめです。さすがに割高にはなりますが「血統書」つきですし、価格も良心的です。これらの店で値段が高い場合も、それなりの理由があります。
・東京サイエンス @tokyoscience:新宿の紀伊國屋書店に実店舗があります
告知ー11月29日(金)より新宿ショールーム(紀伊國屋書店新宿本店1階)にて、新着フェア-ミュンヘンフェア2019-を開催します!只今準備中ですが、少し商品紹介。アラゴナイト(スペイン産)UVライト(長波)で蛍光します。明後日からフェア開催です!皆様のご来店お待ちしております。 pic.twitter.com/UE8hb1WoMb
— 株式会社東京サイエンス (@tokyoscience) November 27, 2019
・ホリミネラロジー @Horimineralogy:通販がメインの店です
「ミネラルコレクティング Autumn '19」ミュンヘン新着品 ルーマニア産の藍鉄鉱 今年発見の新産地と言うことで話題の標本です。有名なボリビア産のものは安定した美しさを保つので人気がありますが、今回のルーマニア産は新しいためボリビア産と同じくらい保存が効くのかどうかは未知です。 pic.twitter.com/cOWiDM5TlH
— ホリミネラロジー (@Horimineralogy) November 20, 2019
・リンネの庭:通販がメインの店です (2019年追記 : 閉店してしまいました)
なお、東急ハンズでは、東京サイエンスなどから卸してもらった隕石を販売しているようです。また、各地で開かれるミネラルショーなどの即売会でも隕石購入のチャンスがあるほか、科学博物館の売店などで販売していたり、本の付録になっていることもあるようです。
隕石もどき? よく一緒に売られている「テクタイト」とは
ところで、隕石と一緒に「テクタイト」といった石が売られていることがあります。こちらはたいてい、お手頃価格です。テクタイトは隕石そのものではなく、隕石落下の衝撃で、地球の石が溶けてまた固まったものだと考えられています。隕石よりずっとたくさん発見されています。隕石そのものではないのですが、関係しているのは確かです。
また、この地球は多数の隕石が衝突、合体して46億年前にできた星です。それらは一回ドロドロにとけてまた固まったのですが、地球のあらゆる石が隕石と思っても良いですね。
著者プロフィール
東明六郎(しののめろくろう)科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。