マイナビニュースでは2月1日(金) 東京・竹橋にてITインフラの運用に携わる方々にとって注目すべきセミナー「ネットワーク研究第一人者 東大 関谷准教授が語る! ネットワーク運用管理セミナー ~2013年にネットワーク管理者のやるべきアクションとは?~」を開催する。同セミナーでは、ネットワーク研究の第一人者である東京大学 情報基盤センター 准教授 関谷勇司氏による基調講演が行われる予定だ。本稿では同氏に、今後求められるようになるIT技術とスキルについて、2013年の展望を踏まえて語っていただいた内容をお伝えしよう。
SDN/OpenFlow旋風が沸き起こった2012年
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東京大学 情報基盤センター 准教授 関谷勇司氏。同氏の講演が直接聞ける注目のセミナー申し込みはこちらから |
2012年を振り返ると、「クラウドネットワーキングのカオス期」ともいえる年だったのではないでしょうか。
クラウドが一般化したことにより、管理下におかれる端末や企業の業務部門やエンドユーザーが望む「BYOD」に対応する設備や制度を整えるなど、ネットワークは複雑化の極みにきています。そのようななかで、ネットワークの分散化と集中化の有効性を見極めながら、各業務に即したインフラとソフトの整備に追われた方も多かったのではないかと思います。
そうした煩雑な業務を解決する術として世界中の期待が集まったのが、SDN(Software Defined Network)とその規格である「OpenFlow」です。
2008年に米国でコンソーシアムが立ち上がり、2012年に仕様が公開されたこの規格は、日本でも各SIerが採用をはじめつつあります。また、この動きを商機ととらえ、各ステークホルダーの期待も大きく高まっています。2012年に行った各講演で私がこのテーマを取り上げたところ、問い合わせが殺到し、いずれのセミナー会場も満席となりました。
"魔法の玉手箱"のように「何かを変えてくれる」との期待を一手に受けた感のあるSDNですが、本当にこれまでの業務における課題を一気に解決できるものかどうかということについては、いま一度考えていく必要がありそうです。
次代のネットワークは基盤技術の上に構築
SDNは、制御部とデータ転送部を分けてとらえ、外部のコントローラーから制御部に対して制御を行う、いわばシステム全体がひとつのスイッチのように動作する形態で、個々のデバイス側はデータ転送のみを担っています。
複雑化したシステムをワンストップで集中管理できることから、管理業務やコストの削減が見込まれます。また、コアバックボーンの上に仮想的に論理ネットワークを構築することで、インフラに手を加えることなく、サービスを作り出すことができます。しかもその際、実体がどこにあるかを意識する必要はありません。システムを上からみたらシンプルな2次元の絵に見えるけれど、横から見たら中間レイヤで情報同士が接続されているといった状態でしょうか。
これまで有効性が報告されているのは、工場の機器管理やデータセンターの集中管理、パス切り替えなどのルーチンワークにおいてです。とりわけ欧米では、ヒューマンエラーの許されないルーチン化された制御に、このSDNとその規格であるOpenFlowを採用しています。最大の強みは、ヒューマンエラーを最小化し、ワンストップでの制御を可能にすること。このために「何でもできる」との期待が高まっているのです。
まだ一部の用途に限定し導入されているのが実情ですが、その理由としては、OpenFlowの実用化がこれからという萌芽期であることがあげられます。いずれにせよ、基幹インフラに全面的に置き換わる技術ではないことを忘れてはいけません。
OpenFlowでは、ストレージにいくつもの情報が集約されることで、ある一定の情報が欠落した際に、トラブルの箇所や原因を特定化しにくいというデメリットを示唆する声もあります。
近年では、(ミッションクリティカルなシステムなどにおいて)ほんの一瞬サーバが止まるだけでも社会的な問題に発展するケースがありますし、一方で節電やセキュリティ対策といった社会的責任も負っていることから、ネットワーク管理におけるコンプライアンスを再度見直す時期に来ているのは確かといえます。
しかしながら、だかといって全面的に一システムに依存することで大きなリスクもはらんでしまう。日本人のこだわりから、SDNの導入範囲をすべてにきちんと適用したいと考えるむきもありますが、このワンストップが足かせになるケースもあります。
現在東大では、情報基盤センターでのネットワーク運用や大学間のクラウド構想を進めていますが、部局や研究者単位の要求は非常に多岐にわたります。たとえば「一定期間、数GBの転送をしたい」「この範囲だけファイアーウォールを設定したい」といったものです。そうしたイレギュラーな対応には、やはり中央一括の制御はそぐわず、柔軟な対応が求められます。
そのため、SDN/OpenFlowの導入においては、よくその有効性とデメリットを見極めながら、どのような領域で何を実現したいかを切り分けて考えていかなければなりません。
2013年は自社にふさわしいネットワークを確立するタイミング
ユーザーのニーズを見極めながらも、社会的責任を負った企業や団体においてどのようなネットワークを運用するか。解を見つけるのは、2013年といえるでしょう。
今までは製品頼みで設定・運用に注力してきたのが、これからは選定や各システムの組み合わせから携わらなければならない。また、さまざまなクラウドサービスの利点・欠点を踏まえながら、自社での管理を続けるか、クラウド移行かを選択していく必要もあります。
そうした観点では、より高次元でシステムのあり方を考えていかなければならない。ネットワーク管理者とシステムエンジニアの業務内容も大きく変わっていくことでしょう。
このような課題を踏まえながら、2月1日(金)に開催される『ネットワーク運用管理セミナー』では、大きな商機と変革を起こすと期待を高めているSDN/OpenFlowをはじめとしたネットワーク技術動向、それに伴うネットワーク管理者に求められるスキルについてお話したいと思います。ぜひ会場に足をお運びください。
