IDC Japanは12月4日、国内産業分野別IT市場における2012年上半期の分析と、2012年から2016年の市場規模予測について発表した。

発表によると、2012年は復興財政支出、金融緩和策、エコカー補助金などによって景気が浮揚し、それに伴い国内IT市場は堅調な成長となり、2012年の国内IT市場規模は13兆5,189億円、前年比成長率2.6%とプラス成長を予測。

2011年~2016年の年間平均成長率(CAGR: Compound Annual Growth Rate)は0.9%、2016年のIT市場規模を13兆7,545億円と予測している。

国内IT市場 主要産業の前年比成長率の推移予測

2012年は、企業部門では原子力発電所事故などにより業績が大幅に悪化した電力会社を含む公共/公益のみがマイナス成長となり、公共/公益以外の全産業では景気拡大の恩恵を受けてプラス成長になるとみられている。

東日本大震災とその後の電力不足の影響を大きく受けた組立製造(2012年 前年比成長率 : 2.1%、市場規模1兆3,583億円)、プロセス製造(同 : 2.4%、7,195億円)といった製造業では、経営の早期立て直しによってプラス成長に回復する一方で、国内消費の低迷や円高などの要因により海外進出に拍車がかかり、今後の国内IT支出の伸びに影響を与えるとしている。

情報サービス業(同 : 3.1%、7,574億円)は、震災を契機とした需要の拡大が継続することでデータセンターの新設/拡充が進み、官公庁(同 : 0.7%、7,389億円)は、2011年に理化学研究所向けに納入された「京」の反動による落ち込みを見込んでいるが、「税/社会保障共通番号」システムおよび情報連携基盤の検討が進んでいるという。

さらに発表では、スマート化した機器の開発が進み、これら機器の操作端末になっているのがスマートフォンで、ITとは一見無関係の電化製品や自動車は、スマートフォンによる繋がりによってITの世界へと広がり、すなわちITベンダーのビジネス市場になるとしている。

その一方、利用者には利便性向上とコスト負担というジレンマが生み出され、スマートシティにおける製品/サービスへの利用に消極的になり、関連ビジネスが広がらない恐れも出てくるという。

これについて同社ITスペンディング シニアマーケットアナリストの福田馨氏は、「ITベンダーは、各産業のスマートシティのプレイヤーとのエコシステムをインフラだけでなくサービス展開まで構築することにより、利用者にとっての利用価値を高めていくことが重要である」と分析している。