最近、注目のITトレンドとして挙げられることが多い「BYOD(Bring Your Own Device:私物利用)」だが、国内で本格的にBYODを導入して成功した企業の事例はほとんど聞かない。その理由の1つとして想定されるのが、BYODで求められるモバイル環境からのアクセスに対するセキュリティの確保が十分でないことであろう。そしてもう1つの理由は、そもそもBYODに取り組む企業の動向があまり見えてこないことにあるのではなかろうか。

このように、あまり実態が見えなかったBYOD、さらには職場でのモバイル端末利用全般の動向が、世界5カ国を対象に実施したジュニパーネットワークスによる調査結果から明らかになった。その中でもとりわけ興味深い内容を抜粋してお届けしよう。

出遅れている日本企業のモバイル端末の業務利用

9月19日に開催される「BYOD時代の企業IT/ネットワーク戦略の鍵がここに!」で後援するジュニパーネットワークス マーケティング部 エンタープライズ ソリューションマーケティングのマネージャー 小川直樹氏

ジュニパーネットワークスが実施したのは、第1回「Trusted Mobility Index」調査だ。対象は米国、英国、ドイツ、日本、中国の4,037人のモバイル端末ユーザーとIT部門責任者だ。

この調査結果の中で特に注目したいのは、個人所有のモバイル端末を業務に利用していると答えたユーザーの比率が全体で56%だったのに対し、日本の回答者は33%にとどまっている点である。この数値について、ジュニパーネットワークス マーケティング部 エンタープライズ ソリューションマーケティングのマネージャー、小川直樹氏は、次のような見解を述べる。

「残念ながら、BYODにおいては他国に比べて日本での正式導入率は低い結果となっている。BYODを一部実現している企業も、多くは正式に導入しているのではなく、従業員が勝手に持ち込んで使用しているのを黙認しているケースが多いのではないでしょうか。日本企業は、現状で良しとせずに、BYODの導入にあたっては個人情報をどのようにして保護するのかに注意して欲しいと思います」

では、日本のビジネスユーザーがBYODに消極的なのかというと、それは違うようだ。日本のモバイル端末ユーザーの59%が、「会社からは自分が必要としている端末を支給してもらえない」と回答し、業務で使用するモバイル端末を自分で選びたいと考えていることも判明している。この結果から、日本企業の中でBYOD導入を求める声が高まっていることがうかがえる。

BYODに立ちふさがるセキュリティへの懸念

これだけ日本企業内においても必要性が叫ばれながら、BYODが海外企業に比べて今ひとつ進んでいないのも、冒頭で挙げたセキュリティへの懸念があるからだと言える。日本企業の74%のユーザーは、会社が個人のモバイル端末の業務利用を認めるとともに、必要なセキュリティ対策をとってほしいと考えていることが調査結果からわかったのだ。

このように、日本企業のBYOD導入における課題となっている感がある「セキュリティ対策」への取り組みについて、小川氏はこうアドバイスする。

「iOSやAndroidだけでなく、既存のPCも含めたマルチデバイスという観点でモバイルアクセスのセキュリティを高めるのが、BYODを安全に導入するポイントの1つです。どのデバイスからアクセスしても同じポリシーが適用されれば、セキュリティが向上するだけではなく利便性も高まるからです」

こうしたマルチデバイスによるセキュアなモバイルアクセスの具体的な実現方法と、今回簡単に紹介したジュニパーネットワークスのBYODの動向調査結果の詳細については、9月19日に東京で開催される同社のセミナーで解説される。BYODの導入を検討している企業のIT担当者にとっては、その最初の一歩を踏み出すまたとない機会となるに違いないので、ぜひ参加されてはいかがだろうか。