アクセンチュアは8月3日、エンタープライズ・モビリティの動向についての記者説明会を開催し、昨年の9月に発表した企業向けのモビリティ・サービスを、今後本格的に日本で展開していくと発表した。
アクセンチュア モビリティサービスグループ アジアパシフィック統括 エグゼクティブ・パートナー Jung-Wook Kim氏によれば、モビリティは、同社が今後もっとも注力していく分野で、グローバルで約4,000名の社員がかかわっているという。このうち、3,000名はノキアの社員で、これらの人間は、モビリティ・ソフトウェアサービスに関わり、アプリケーション、デバイス・プラットフォームの分野に従事するという。
国内のモビリティサービスグループを統括しているアクセンチュア モビリティサービスグループ 統括 エグゼクティブ・パートナー 清水新氏は、モビリティ環境を変化させた2大トレンドとして、「マルチデバイス化」と「ソーシャルメディアの爆発的普及・拡大」を挙げ、顧客に対するマーケティングプロセスは、今後、ソーシャルメディアによる利用体験の評価・フィードバック・増幅が大きな力を持つようになると述べた。
同氏は、エンタープライズ・モビリティの発展シナリオには、「コミュニケーションツールとしての活用」、「部署内での業務最適化」、「経営管理の合理化」の3つのステージがあると指摘。
社内メール/スケジュール連携などの「コミュニケーションツールとしての活用」では、セキュリティ基準の見直し、開発コストの抑制が、SFA連携、カタログの電子化などの「部署内での業務最適化」では、業務の優先順位の決定や業務の標準化が重要だという。標準化により、トップ成績の社員のノウハウをモビリティで実現できるという。
そして、グローバル経営、市場やコストの見える化を実現する「経営管理の合理化」では、最前線現場での細かい単位でのデータ収集や現場に報告させない仕組みが必要だという。これは、部下にさまざまな報告をさせてから判断するのではなく、経営層自らが現場データを閲覧し、スピード感を持って経営判断を行うことだという。
これらに対して、アクセンチュアのモビリティ・サービスでは、企業のモビリティ戦略の策定から、スマートデバイス向けアプリケーションやプラットフォームの設計・構築、実際のサービスまでを提供し、主に「エンタープライズ・モビリティ」、「M2M」、「Testing as a Service」の3分野で展開される。
エンタープライズ・モビリティでは、スマートデバイスを用いて粒度の細かい情報をリアルタイムで得ることにより、経営判断の迅速化や調達・生産の最適化などのプロセス改革を支援し、M2Mでは、スマートデバイスをはじめとするさまざまな機器からのセンサーデータを分析し、経営に資する情報として提供し、支援する。
そして、Testing as a Serviceでは、福島県会津市の会津大学内に環境を構築し、アプリ開発者や企業内システムの担当者向けに、実機を用いたリモートによるアプリの動作テストが行える環境を提供する。
Android端末は、OSのバージョンや機種が多数存在しており、新機種が出た場合のアプリ互換性チェックが大きな負担になっている。アクセンチュアでは、この問題を解決するため、エミュレータではなく、実機を使ったテスト環境をTesting as a Serviceとして提供する。このサービスでは、利用者は各種ボタンを含め、リモートでアプリを操作でき、その様子をビデオカメラで撮影した映像を通して確認できる。また、操作をスクリプトで自動化させることも可能になっている。価格は月額48万円/IDで、オプションでテスト代行や技術コンサルティングサービスも提供する。
清水氏は「フィーチャーフォンからスマートフォンに変化していく中では、オープンソフトを使うことの難しさがあり、Androidは機種差分のテストをしていかなければならない。エンタープライズ環境では、テスト環境がないため、テスティングサービスのプラットフォームを用意した。ポイントは自働化を組み入れている点だ」と説明した。