ソーシャルメディアマーケティングラボが、 なんとなく分かっているつもりでも、実はよくわからなくて「もやもや」 している?! 今話題のウェブマーケティング用語を分かりやすく解説!

第四回は「アトリビューション」です。

用語説明:【アトリビューション(Attribution)】

英語のAttribute(おかげと考える/~に起因する)を語源とし、もともとは金融業界で使われていた用語。ファンドの運用成績を評価・分析するパフォーマンス評価において、投資元本に対するリターンがどのような要因から発生したのかを明確にし、導き出された結果をベースに先々の運用方針を決定する分析手法を「アトリビューション分析」という。

※出典:「アトリビューション 広告効果の考え方を根底から覆す新手法」田中 弦, 佐藤 康夫, 杉原 剛, 有園 雄一:著、インプレスジャパン

広告・マーケティングに関して使われる場合は主に、直接成果につながった流入経路・広告だけではなく、成果に至るまでのすべての接触履歴を解析し、成果への貢献度を測る取り組みのことを指す。

解説

企業のソーシャルメディア活用が一般化し、またDSP(デマンドサイドプラットフォーム)※1やRTB(Real-Time Bidding=リアルタイム入札)※2等、アドテクノロジーの進化により、企業と消費者のタッチポイントが飛躍的に拡大・多様化する中で、ラストクリックだけを評価するのではなく、それぞれのタッチポイントがどのように消費者に作用したのかを把握することが重要であるという認識が高まってきました。

そうした状況で、ネット広告やメルマガ、ブログ記事、SNSなどのソーシャルメディアのコンテンツや施策が、コンバージョン(商品購入や会員登録などサイト運営者が定めた最終目的)にどの程度貢献しているかを測定する手法として、「アトリビューション」が注目されるようになりました。

コンバージョンに至るまで、ユーザーがどのように行動(アクセス)しているかを調査・測定。その結果、コンバージョンを得やすい最適な流入方法やアクセス経路を見極めることで、各施策やコンテンツの是非を判断し、効果を得にくいPR施策の費用削減や、新たなプロモーションプランの作成が可能になると期待されています。

ラストクリック偏重の傾向からインタラクティブなアトリビューション評価へ

例えば、あるユーザーがSNSで友達に紹介されていた商品に興味を持ったとします。その後度々バナー広告を見かけるので「話題になっている」と思い、ある日バナー広告をクリックして商品詳細ページを閲覧、その後検索をしてクチコミを精読した後、検索結果ページに表示されていたリスティング広告をクリックして商品を購入しました。

この場合、従来だと評価されるのは「リスティング広告」(ラストクリック)だけになりますが、商品購入に至るまでの経路で「消費者がどんなメディアに接触して、それによって感情や行動にどのような変化が起きたのか」を調査・分析し、それぞれを評価しようとする取り組みがアトリビューション分析です。ただしそのためには、膨大なデータを分析し、複雑な消費者行動をより詳しく把握しなくてはなりません。

また、先ほどの例でいうと、最初に好印象を与えたSNSを評価の対象にする「ファーストクリック評価」、クリックしたバナー広告を評価の対象とする「クリックスルー評価」、また何度も見かけたがクリックはしなかったバナー広告も対象にする「ビュースルー評価」など、アトリビューション分析には様々な評価方法があり、ビジネスモデルや商材、目的やゴールによって、最適な貢献度配分が異なってきます。

分析だけで終わってはいけない、全体最適化への取り組み

日本では取り組みを総称して便宜的に「アトリビューション」と呼ばれることが多いですが、本来は目的に応じて、以下のように異なる用語が使われます。

アトリビューション分析(Attribution Analysis): コンバージョンに至るまでの流入元の履歴のデータを使い、コンバージョンへの貢献度を分析・評価すること

アトリビューション・モデリング(Attribution Modeling): ビジネスモデル、業種、キャンペーン内容を考慮して、貢献度を的確に重み付けした「分析モデル」を設計すること

アトリビューション・マネジメント(Attribution Management): 貢献度に応じて予算配分の変更や施策の「組み替え」を行うこと

このように、分析だけに留まらず、認知獲得から購買・利用に至るまでの消費者接点全てにおいての取り組みを評価し、広告・マーケティング施策全体の最適化を図るところまでが「アトリビューション」ということなのです。

貢献度評価はソーシャルメディアの効果測定指標になる?

現在は、広告の効果測定や予算配分といった部分が注目されていますが、従来のラストクリック重視から、ファーストクリックやビュースルーといった途中経過の影響へも目が向けられるようになることで、ソーシャルメディアの果たしている役割がより正確に把握されるようになれば、ソーシャルメディアマーケティングのROI(投資対効果)見直しにつながるかもしれません。

「アトリビューション」によってソーシャルメディアの貢献が正しく評価されるようになることで、今後、企業と消費者のコミュニケーションに関する施策が、マーケティング・プランに占める重要度は、ますます高まっていくのではないでしょうか。

※1 DSP(デマンドサイドプラットフォーム)とは、広告主側が行う予算管理、入稿管理、掲載面の管理、予算やターゲットとするユーザー属性などに基づいた最適な広告枠の選定、あるいは、過去の成果を反映することで行われる配信条件の最適化、といった機能を提供し、広告効果の最大化を支援するツールのこと

※2 RTB(Real-Time Bidding=リアルタイム入札)とは、購入者(広告主)があらかじめ、ターゲットとなるユーザー属性、広告の掲載基準、掲載面、クリエイティブや入札価格などの条件を設定しておき、広告のインプレッションが発生するたびに、条件に合致する購入者(広告主)によって配信する広告枠の競争入札が行われる仕組み

イラスト

速瀬 みさき

1993年よりホラー誌デビュー。漫画家として活動しながらエッセイ、イラスト、デザインなども手掛ける。近著コミックスは、メイド喫茶にバイトで潜入取材漫画。広告代理店勤務の夫を持ちながらも、マーケティングなにそれ?状態で執筆中!

公式サイト : http://www.nanacom.com/
Facebookページ : http://www.facebook.com/hayase.mi
用語解説:ソーシャルメディアマーケティングラボ
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