日本では530万人以上の患者がいるといわれる「慢性閉塞性肺疾患」(COPD)の息切れ症状を和らげるのに、鍼(はり)治療が有効であることが、京都大学大学院医学研究科の三嶋理晃教授や明治国際医療大学鍼灸学部の鈴木雅雄准教授などの共同研究で分かった。
慢性閉塞性肺疾患は、喫煙が主な原因として気道が狭くなり40歳以上で発症し、初めは階段を上がるなどの運動時の息切れや慢性の咳(せき)、痰(たん)が続き、さらに進行すると入浴や排泄、食事などの軽作業でも息切れが起き、寝たきりになることもあるという。
研究チームは、慢性閉塞性肺疾患によって薬物治療中の患者68人を無作為に2群に分けて、一方には鍼治療を12週間続け、一方は鍼を打つ格好だけのプラセボ群とした。鍼治療では「中府」や「関元」などの11の経穴(ツボ)を用い、6分間歩行試験によって歩行距離や息切れの度合いを評価し、動脈血酸素飽和度なども測定した。その結果、鍼治療群では有意にこれらの改善効果が認められた。また体格指数(BMI:ボディー・マス・インデックス)や血中の栄養タンパクの測定においても改善がみられたという。
慢性閉塞性肺疾患患者の主訴となる労作時呼吸困難(息切れ)に鍼治療の有効性を実証したのは初めてだという。「現代医学に日本の伝統医療(東洋医学)を融合させることで、患者の苦痛を軽減させることができる」としている。