サクセスファクターズジャパン 代表取締役社長
木下雄介氏

サクセスファクターズジャパンは4月13日、日本市場への進出から約3年が経過した現在について、同社のビジネス戦略や導入事例に関する記者説明会を開催した。同社はSaaS形式で、企業組織における社員の採用・配置・育成・キャリア形成といったプロセスを管理するタレントマネジメントシステム「SuccessFactors Business Execution Suite」を提供している。

同社 代表取締役社長 木下雄介氏はまず、サクセスファクターズの成長を紹介。米サクセスファクターズが設立された2001年から約11年間、クラウドでのサービスを提供し、現在、SuccessFactorsはグローバルで3500社・1500万ユーザの導入実績となっている。サービス自体も34言語で提供しており、168ヵ国で利用されている。また、GartnerやIDC、FORRESTERなどの調査で、タレントマネジメントシステム市場においてリーダーポジションにあることも強調した。

サクセスファクターズ 概要

各種調査会社による市場調査の結果。右上部分がリーダーポジションとなる

2009年に進出した日本市場においても、伊藤忠商事や楽天、NECなどで採用されており、外資系企業の日本法人を含めると200社・6万ユーザに導入されているという。同社の製品はパートナーを通じての提供となるが、日本でのパートナー企業についても4月2日には電通国際情報サービス (ISID)との提携を発表するなど順調に推移しているという。

なお、木下氏によると、日本企業における導入の人材マネジメントにおけるニーズとしては、「国内需要の低迷などからグローバル展開が加速する中、(国内大手企業であってもグローバルでの採用などに弱い部分もあり)サクセッションマネジメントとしての導入例が多い」とのことだ。採用企業規模も、もっともユーザ数が少ない事例で3人から、最大では200万ユーザ規模までと幅広く利用されているという。また、SaaS形式で提供することから、比較的短期での導入が可能となっている。

国内での導入実績

伊藤忠商事での導入概要

木下氏は、SuccessFactorsの製品コンセプトを、企業のコスト構造で一般的に多くの部分を占める人件費について「(一般管理費などの経費は削減するかどうかだが)人財・人件費の部分は、改善することによって生産性や社員のモチベーションの向上などによって売上のアップにもつなげられることに着目」した製品と述べる。企業活動における戦略と実行では、いくら戦略が良くても、その戦略の理解不足や伝達ミス、実行アクションが不明確といったことから「実行の段階で4割もの付加価値が失われている」とされる中で、同社製品は「実行部分を改善することにフォーカスしたソリューションを提供している」と述べた。

企業において人件費は大きな割合を占める

ハーバード ビジネス レビューによる、実行時にバリューが失われる要因

同社製品群は、このような戦略から実行そして成果へとつなげる段階の中で、「実行」を「Align」「Optimize」「Accelerate」という3つに区分し、各製品が対応するようになっている。企業が戦略をたて、それを現場に割り当て実行へと移す段階(Align)では、目標管理と評価のシステムを提供している。企業の戦略を細分化し、整合性を保ちつつ、社員一人一人のレベルで個別の具体的な目標を割り当てられるようになっており、この目標を定期的にモニタリングし、期末の評価を行うといった仕組みで、ビジネスとの整合性向上が図られることになる。

また、最適な人材を採用し、人材の確保・維持のための報酬計画、キャリアプランや育成計画、サクセッションマネジメントなどのソリューションが「Optimize」の段階に用意されている。そして、このような動きをさらに加速(Accelerate)させるために、Jamという社内SNSサービスや要員分析が用意されている。

木下氏は、同社がコンサルティング会社に委託したアンケート結果も紹介。これは同社製品を導入する500社の幹部を対象としたもので、同社製品の導入によってコスト削減や生産性向上などの結果が出ており、特に最終的なビジネスの成果においては「売上1%分の純利益が増加」となったという。木下氏は「特に大企業においては、この1%というのは大きなインパクトとなる」としている。

実行の3段階の対応する製品群

SuccessFactors導入企業へのアンケート結果

木下氏は、サクセッションマネジメントの簡単なデモも紹介した。サクセッションマネジメントでは、専用の組織図が用意されており、フラグによって、ある人が辞めそうな場合には辞めた場合の影響度や退職理由などの情報を付加できるようになっている。また、役職候補者の準備状況がどのようなステータスにあるのかといったことも示すことが可能だ。

ある人が退職となった場合には、その後継者(後任)候補を同画面から検索できる。人材プロファイルなどの情報からスキルや経歴・専攻などの条件で検索し、さらに候補者リストから詳細な比較なども可能となっている。これはピンポイントのサクセッションマネジメントとして比較的単純な例だが、このほかさまざまな機能が提供されているという。

人材プロファイル画面。基礎情報やバックグラウンド情報など様々な項目が掲載できる

サクセッションマネジメント組織図画面。辞めそうな人がいると、その場合の影響度をフラグで示すといったことが可能となっている

この日は、サクセスファクターズ 要員分析計画担当 バイスプレジデントのアナスタシア・エラビー氏と、ビジネス業務遂行担当 プリンシパルディレクターのスティーブン・ハント氏による説明も行われた。

サクセスファクターズ 要員分析計画担当 バイスプレジデント
アナスタシア・エラビー氏

アナスタシア・エラビー氏は、企業における要員分析 (WFP : WorkForce Planning)について、まず「他のビジネス遂行にあたっての判断と比較して、採用などに関わるマネージャーの判断の難しさが挙げられる」とし、「そのためにも要員分析・要員計画を行っていくことがこの判断の鍵となる」した。

その上で要員計画には、ビジネスの「戦略の明確化」が重要と述べ、その中からビジネスにおける人材の課題を考えると、データの中からどのような知見を得ればいいのかが見えてくるとした。さらに、得られた要員に関するリスクや知見の認識が、キャリアパスやサクセッションマネジメントといった次へのアクションへとつながり、最終的なビジネスへの効果へとつながっていくという。

また、要員計画が成功している企業の特徴について、WFPの管轄を人事ではなく各部署にすること、中長期的な視点で見ること、最初の予測作業においては欠くことのできないような重要なポジションについて重点を置くこと、スキルのみを見るのではなく適切なコストでの人材プランを策定することなどを挙げた。

要員計画において、常に発生するテーマ

サクセスファクターズの人材プランニング技法

サクセスファクターズ ビジネス業務遂行担当 プリンシパルディレクター
スティーブン・ハント氏

ビジネス業務遂行担当 プリンシパルディレクターのスティーブン・ハント氏は、企業のビジネス遂行について説明した。ビジネスの成功には、企業として戦略、その戦略を実行するための資金のみではなくテクノロジーや人材といった資産、そしてこの資産をきちんと活用して実行することが必要とした。これは、例えれば「9月までに10kg痩せるという戦略をたて、そのためにスポーツジムに入会し、実際にスポーツジムに通うことで戦略を実行する」ようなイメージと紹介した。

また同社が掲げるビジネスを遂行していくための6つのポイントして、一人一人が企業の戦略を理解しているかという整合性、社員がきちんと仕事をしているかという生産性、人材を投資に見合うよう最適に活用しているかという効率性、誰かが退職しても知識などが継承されているかや要職に就く人の管理はできているかという持続性、戦略に応じ人材を確保できるかというスケーラビリティ、そしてリスク管理としてのガバナンスを挙げた。

同社製品の価値を最も引き出している企業とは、単にプロセスを自動化して管理するだけではなく、企業全体として戦略を達成するための向上を目指しており、そのためにこの6点を必要に応じてピックアップして取り組んでいるという。

ビジネス遂行能力についての評価項目例

ビジネス遂行における6つの推進要因