日本プログレスは2011年12月13日、通信業界における企業の業務改善を支援するITソリューションの紹介イベント「マイナビニュースITサミット~BPMによる業務効率向上セミナー」を開催した。

同セミナーにおいて、日本プログレス、ソリューションコンサルタント テレコミュニケーション&メディアの島田信治氏は、多くの業界が共通で抱えるビジネス上の課題、特に通信業界においてその課題に取り組んでいくべきかについて、同社が提供するソリューションを軸に解説を行った。

必要だが実現は難しい「リアルタイム化」と「可視化」

日本プログレス、ソリューションコンサルタント テレコミュニケーション&メディアの島田信治氏

島田氏は、業界を問わず、現在のマーケットが持つ傾向として「さまざまなトランザクションや業務がスタートしてから完了するまでの時間(リードタイム)が、短縮され続けている」点を挙げた。

Gartnerの調査によれば、金融業界でのアルゴリズム取引であれば100ミリ秒から20ミリ秒へ、コールセンターへの問い合わせ対応であれば8時間から10秒へ、オーダーメイドPCの納期であれば4週間から1日へと、あらゆるジャンルでのリードタイム短縮が加速しているという。島田氏は、ビジネスにおいて顧客の期待値を超えるオペレーションを実現するには、こうした「リアルタイム性」の向上が必須であるとした。

この「リアルタイム」の必要性は、企業側も強く認識している。ある調査会社が米欧400社を対象に行ったアンケートの結果では、約94%の企業が「リアルタイムに情報を把握し迅速に対処することはビジネスにとって重要」と回答し、また91%の企業が「顧客の側に立ち、パーソナライズされたサービスを提供できるようにすることは大事」と回答したという。

一方で、そうした環境の実現が簡単ではないことも同じアンケートの結果が示唆している。「現在既にリアルタイム情報に応じたビジネスを展開している」と答えた企業は、わずか8%にとどまったという。その理由として挙げられたのは「複雑な環境により、プロセスが健全に機能しているかを統合的に可視化できない」(89%)、「Webやモバイル、SNSによって引き起こされた情報の大洪水に翻弄されている」(74%)などだという。

さまざまな環境で蓄積されるデータの連携と可視化、そして大規模データへの対応といった点で課題を抱える企業が多いことが、このアンケートの結果から見えてくる。

リアルタイムな可視化を実現する「Progress RPM/RBI」

日本プログレスは、これらの課題の解決策として「Progress RPM」「Progress RBI」と呼ばれる2つのソリューションを提供している。RPMは「Responsive Process Management」、RBIは「Responsive Business Integration」の略称だ。

島田氏は、RPMは「エンドユーザーが、どのサービスをどのようなシーンで利用しているかを的確に理解し、次のアクションへとつなげる仕組み」、RBIは「アプリケーションの統合およびアプリケーション間でのデータ連携をシステムに統合するためのもの。インフラストラクチャ全体を可視化して管理することで、強固なビジネス基盤を確立する仕組み」と説明した。

「Progress RPM」と「Progress RBI」の仕組み

Progress RPMは「Actional」「Apama」「Savvion」の各製品と管理ツールから構成されている。

Actionalはビジネストランザクション管理製品である。通常、ネットでの商取引プロセスでは、1つのトランザクションが複数のシステムを経由して処理を完了する。例えば、製品カタログ、CRM、受発注管理、在庫管理、出荷配送システムといったものが相互に連携する必要がある。Actionalでは、これらのプロセスとプロセス内部での処理の流れ(トランザクション)をリアルタイムでモニタリングする環境を実現できる。

一方のApamaは複合イベント処理のエンジンで、近年話題となっているビッグデータをリアルタイムに処理し、活用するための基盤となるものだ。電力業界では「スマートグリッド」「スマートメーター」といった技術や、それによって実現される次世代のサービス環境が注目を集めているが、この環境は、顧客がどのようなサービスを、どれくらい利用しているのかということがリアルタイムで把握できなければ実現不可能だ。通信業界であれば、スマートフォンの普及などで、今後増えていくと予想されるデータパケットのトラフィックをどのように把握・コントロールしていくかを考えるにあたって必要不可欠な機能となる。

そしてこれらを全体的な業務プロセスの視点で統合し、改善していくための基盤となるのがビジネスプロセス管理(BPM)製品のSavvionである。島田氏はSavvionについて、「ITユーザーよりも、業務ユーザー寄りに作られており、彼らが自分たちの業務に対して可視化を行える製品」と説明した。単なるプロセス図のドローツールではなく、書いたモデルをそのまま業務システムに反映し、改善を続けていける点がポイントとなる。

一方のRBIでは、「Actional」「Sonic ESB」「DataXtend」「DataDirect」といった製品が提供される。

Sonic ESBは、異なるシステム間のスムーズな連携を実現する、いわゆるサービス指向アーキテクチャ(SOA)を実現するためのエンタープライズサービスバス(ESB)となるもの。システムを止めずに新たなサービスを追加できる強固なメッセージ基盤、高度な分散機能を提供する。

DataXtend Semantic Integrator(DXSI)は、データモデルやアプリケーションとの接続を容易に行うためのツール。既存のインタフェースやスキーマ定義をインポートしたうえで、データベース間、アプリケーション間でスキーマのマッピングが行える。通信業界の標準化組織「TMF(TeleManagement Forum)」で定義されているデータモデルを標準で持っている点が特徴だ。

「Progress RPM」「Progress RBI」が提供する製品群

通信業界が「申込業務」に抱える課題をいかに解決するか

島田氏は、通信業界でのProgress RPM/RBIの適用ケースとして、多くの通信事業者が共通で抱えている「申込業務」に関連する課題への対応を示した。申込業務においては「業務プロセス」「業務ルール」「情報管理」の各項目に課題が存在するという。

「業務プロセスの問題は多くの事業者で認識されているものの、整理ができていないのが実情」と島田氏は言う。場当たり的な対応を避け状況を可視化するには、業務プロセスの標準化が必須だ。この課題への対応策としては、ワークフローを導入して業務範囲や役割分担を明確にし、BPMによる定義を行ってKPIを測定することが有効とのことだ。

業務ルールでの課題は、日々大量に発生する「例外処理」に対する対応処理が属人化してしまう点にある。また、ルールの複雑化や変更の多発がルールの標準化を妨げる一因にもなっている。これについては、ビジネスルールをなるべく細かい粒度で「部品化」し、それらをうまく組み合わせることで再利用につなげていくことが重要だとする。

情報管理においては「ツールの統一がカギ」になる。現在、ExcelやAccessといったツールで部分最適化されてしまっている案件に関するデータを汎用性の高いツールで集約・共有することにより、進捗管理やステークホルダー間での情報連携を迅速に行えるようにする。また、システム間の連携を柔軟に行える仕組みの導入もポイントだ。

これらの課題への解決策として、日本プログレスが提供している製品の1つが「Communication Order Management(COM)」である。COMは、オーダーのライフサイクル全体を可視化し、現在の状況を把握できる環境を提供する。エンドツーエンドでのオーダープロセスの測定と、KPI把握を可能にすることによって、妥当性の高いビジネスプロセスの評価が可能になる。また、ビジネスルールを業務ユーザーにわかりやすい形でモデル化し、それらの依存状況や同期を管理できるほか、部品化されたモデルの組み合わせによる動的な例外処理への対応、プロセスの継続的な改善を実現する。

「Order Visibility Assurance(OVA)」と呼ばれる製品は、オーダー処理に関するすべてのトランザクションをエンドツーエンドで可視化すると同時に、リアルタイムでその状況を分析する。複雑かつ複合的なトランザクションのパターンから、問題が起きる「予兆」を検知することにより、プロアクティブ(予防的)な対応を可能にするという。

そのほかにも、障害のライフサイクルを可視化し、検知・解析・解決のプロセスを全体で管理できる「Integrated Trouble Management(ITM)」、顧客の位置情報や携帯電話の利用パターンをリアルタイムに収集、分析し、パーソナライズされたプロモーションを提供できる「Situation Based Promotion(SBP)」といった製品を用意している。

島田氏は、これらのソリューションによって実現されるプロセスマネジメントとリアルタイム化により、業務効率と顧客満足度の向上、そしてビジネス状況の可視化による継続的なプロセス改善のサイクルを実現できる点を強調した。

Savvionがもたらした数々の効果-通信業界での導入事例

日商エレクトロニクス エンタープライズ事業本部 亀岡雅弘氏

講演の後半では、Progress Savvionの日本語化と販売を行っている日商エレクトロニクス(以下、日商エレ)により、通信業界における導入事例の紹介が行われた。エンタープライズ事業本部の亀岡雅弘氏によると、同社は1969年の創業当初から、ドキュメントイメージングを端緒としたビジネスプロセスソリューションに取り組んできたという。

ビジネスプロセス管理基盤であるSavvionの取り扱いは2007年10月より開始。さまざまな規模での導入が可能なSavvionだが、特に通信業界・製造業界での導入実績が多いという。亀岡氏は、ある通信事業者のサービスオーダー業務における導入事例を紹介した。

そのユーザーは以前、他社システムのワークフローオプションを使ってサービスオーダー業務を行っていたが、いくつかの課題を抱えていた。課題の1つは「システムの運用コストの高さ」だ。ワークフローオプションを利用しているものの、実際にプロセスを実装する場合はほぼスクラッチでの開発作業が必要になっていたほか、ユーザーインタフェースはJavaで開発しており、そのつど必要な開発リソースを確保しなければならなかったという。

また、プロセス実装までの開発期間が長くなることで、副次的に「ユーザーリクエストへの対応の遅れ」や「システム全体の品質低下」といった問題も引き起こされる。同社は開発生産性が高く、プロセスの変更に柔軟に対応できるアーキテクチャを採用する必要に迫られていた。

新たなシステムを選定する際の要件としては、ビジュアルな業務プロセス図を活用して、ノンプログラミングで迅速にプロセスの変更が行える開発生産性の高さ、業務プロセスとユーザーインタフェースの開発を同じプラットフォームで行えることなどに加えて、Webサービスなどの新しい技術に対応していること、Active Directory連携、代理承認、外部からのシステム自動起動といった現行のシステムが持つ機能を持っており、バージョンアップ時に影響が出ないことが提示された。複数の競合製品を検討した結果、これらすべての条件を満たすSavvionの導入が決まったというわけだ。

導入の効果としては、開発生産性の向上に加え、ユーザー部門の要求に合った短納期なシステム開発基盤を実現し、顧客へのサービスレベルを向上させた点で高い評価を得たという。また、ビジネスプロセスとユーザーインタフェースの構築を統合したシステムであるため、運用効率も向上し、導入前の3分の2以下のリソースで運用体制を構築できた点も見逃せない。結果的に、サービスオーダー業務の実行状況がリアルタイムで可視化され、サポート担当者も即座に進捗を報告できるようになり、業務の最適化を継続的に行える環境が実現できたそうだ。

亀岡氏は、日商エレのBPMソリューションのメリットとして「リーディングカンパニーであるプログレスのITツールとこれまで培ってきたBPMのノウハウをベースに、システムのコンサルティングから、導入、保守、運用、アウトソーシングまでをワンストップで提供できる体制がある」点を強調した。