米国や新興国における経済成長の鈍化、欧州での財政危機、急激な円高、さらには国内外における大規模な天変地異など、ビジネスを取り巻く環境は、近年特に厳しさを増す方向へと動いているようだ。また、その変化のスピードも従来以上に速まっている。

「環境に合わせて変化するものが生き残る」というよく知られた言葉のとおり、この厳しい環境の中で「生き残る企業」となるために、変化にスピーディに対応する能力が必要となっている。

規模と複雑さを増す企業活動を見通して、現状を把握し、環境の変化に対応できる仕組みを作るための取り組みとして「ビジネスプロセスマネジメント(BPM)」が注目を集めて久しい。一方、BPMを十分に活用できている企業は多くないようだ。それはなぜだろうか? そして、BPMを通じて変化に迅速に対応できる組織を作り上げるには、何が必要なのだろうか?

属人的な作業による「例外処理」が多い通信業界

日本プログレス 通信・メディア ビジネスソリューションマネージャー 島田信治氏

企業向けにシステムの「接続」「集約」そして「可視化」といった領域に特化したソフトウェアを提供している日本プログレスは、12月13日に「真のリアルタイム可視化とは? BPMによる業務効率向上セミナー」と題したセミナーを開催する。同セミナーでは、BPMを用いた企業の継続的な成長の実現方法、同社が提供しているBPMの実現をサポートするITツールなどが紹介される。

BPMの手法はあらゆる業界、業種において有益だが、今回のセミナーでは特に通信事業者におけるBPMとその最適化のためのソリューションについて、日本プログレス 通信・メディア ビジネスソリューションマネージャーの島田信治氏が講演を行う。

通信業界に特化したシステムインテグレーターなどでのキャリアを持つ島田氏は、通信事業者が基幹システムに求める要件の実現や業務の中で抱える課題の解決に長く取り組んできた。90年代後半には、ユーザーごとに手組みで作っていたシステムから、より低コストかつ短期間での導入が可能なパッケージシステムへの移行を促すためのローカライゼーションなどにも関わったという。

顧客へのシステム導入にあたり、通信事業者の業務を熟知する必要性を実感するなかで、「システムと業務を適合させつつ、そのシステムの上で展開する業務プロセスを改善し続けていくには、システムとユーザーが意思疎通するための「ツール」の存在が重要であることを強く感じた」と、島田氏は語る。

通信業界の業務が抱える課題として、同氏が挙げるのが、「業務プロセスが複雑になり、システムと実際の業務との隔たりが広がってしまっている」ことだ。

「回線開通の申し込み1つとっても、その業務プロセスは極めて複雑です。コンシューマー向け、法人向けで異なっていることに加え、特に法人向けビジネスでは、納期短縮などの顧客固有の要望に合わせて、標準化しているプロセスを崩して融通を利かせる必要があります。こうした処理は「例外」として扱われますが、実に法人顧客における案件の80%が例外処理になっているというデータもあります。そうした案件では、プロセスとして標準化されたシステムは使われず、紙の書類や個人のExcelファイルなどで属人的に処理されてしまうケースがほとんどです」(島田氏)

法人案件の大半を占める「例外処理」。その対応が属人的かつ場当たり的に行われることが定例化すれば、結果として、業務プロセスの進行状況は誰からも見えなくなり、継続的な業務改善も、変化への迅速な対応も望めなくなってしまう。

こうしたシステムと実際の業務とのギャップを埋め、業務プロセスの可視化と担当者間の意思疎通を可能とする手法の1つが「BPM」であり、それをIT面でサポートするのが「BPMソリューション」と島田氏は言う。

低コストで高適合率-日本プログレスの通信事業者向けBPMソリューション

日本プログレスは、BPMの実現をIT面でサポートするために「Responsive Process Management(RPM9」と「Responsive Business Integration(RBI)」と呼ばれるソリューションを提供している。

RPMは、同社のBPM製品「Savvion」に、通信事業者のフルフィルメント業務(注文から発送までの業務)に特化したテンプレートとツールキットを組み込んで提供するもの。「Responsive(敏感な)」という言葉のとおり、他の基幹系、情報系システムとリアルタイムに連携しつつ、ビジネスプロセスの可視化と改善をサポートするさまざまな機能をモジュールとして提供する。

RPMには、ユーザーの位置情報やプロフィールなどのデータを起点にユーザードリブンなサービス提供を可能にする「Location Based Promotion(LBP)」、ワークフローエンジンと商品情報とを直結させて頻繁な商品構成の変更にも自動的にワークフローを対応させる「Communication Order Management(COM)」、複数のオーダー管理システムを統合し、オーダー状況をリアルタイムに可視化できる「Order Visibility Assurance(OVA)」、障害の発生から解決までのプロセスを管理し、その改善を支援する「Integrated Trouble Management(ITM)」が含まれる。

一方のRBIは、世界の主要な通信事業者や通信機器ベンダー、ソフトウェアベンダーが参加する標準化団体「テレマネジメントフォーラム(TMF)」が定めた標準規格に準拠したデータ連携基盤の構築を支援するソリューションとなる。同製品は、あるシステムで扱うデータの変更に伴う他システムへの影響を最小限に抑えることを可能にするという。

RPMの特徴として、島田氏は「パッケージベースソリューションならではの低価格で導入が可能でありながら、各顧客にとって適合率の高いシステムが構築できること」を挙げる。

「パッケージソリューションが持つ良くないイメージの1つは、実際には使わない機能までもがセットとして提供されてしまう点にあります。Progress RPMで提供する機能は最低限に抑えられており、顧客に必要な機能はSI事業者がSDKを使って開発して導入する形態をとります。そのため、パッケージでありながら非常に適合率の高いシステムの構築が可能になっているのです」(島田氏)

12月13日のセミナーでは、島田氏から、実際に同社の製品を短期間で導入して業務プロセスの大幅な改善やROIの向上を果たした企業の事例などが紹介される予定だ。同セミナーでは、島田氏のほか、 日本プログレスの社員でありながら日本BPM協会の運営幹事も務める宇野澤庸弘が「現場業務部門の視点から始まるBPM」というテーマで講演を行う。「業務効率の向上」「BPM」に興味を持っている通信事業者にとって、足を運ぶ価値のある情報が提供されるはずだ。