「ヤマハ TLFスピーカー」(利用例)

ヤマハは、サウンドサイネージ(音響看板)を実現する第一弾商品として、スピーカーとアンプをセットにした「ヤマハ TLFスピーカーサンプルセット」を発表した。10月上旬より出荷が開始され、サンプル価格は105,000円。

サウンドサイネージは同社が提唱する新しい概念で「音声による的確な情報供給媒体」と定義されている。

「TLFスピーカー(Thin-Light-Flexible Speaker)」は、早稲田大学 山崎芳男教授の基本アイデアをもとに、同社が独自に開発した薄型・軽量の静電スピーカー。通常のスピーカーは、電磁コイルに電流を流して音を出すしくみだが、静電スピーカーは、電気を通すと引き合う力を利用して振動膜を振動させて音を出す。

サンプルセットに付属するアンプ

静電スピーカーの概要

通常のスピーカーは、音の波形が球状になるが、静電スピーカーでは、板のような平面になる。そのため指向性が強く、減衰しにくいという特性がある。これにより、必要なところに必要な音を届けることができ、周囲に音をばらまかない、大きな音を出す必要がないというメリットが得られる。また、スピーカーはフレキシブルな構造のため、曲面での利用も可能で、平面だけではなく円筒面など、形にとらわれない自由な設置・利用ができるという。

静電スピーカーの波形の特徴

ヤマハ サウンドネットワーク事業部 事業部長 長谷川豊氏

ヤマハ サウンドネットワーク事業部 事業部長 長谷川豊氏は、「音は耳に残る、印象に残るという特性をもっているにもかかわらず、デジタルサイネージでは、音がうまく活用されていない」と、今回の製品を開発した背景を説明。同社の長年にわたる音響技術の研究成果を応用し、新製品を開発した。

開発を担当したヤマハ サウンドネットワーク事業部 TLF推進室 企画担当部長 室井國昌氏はその特徴を、「薄くて軽くて、フレキシブル。なおかつ省電力」と表現する。消費電力は2Wだ。 ただし、低音域で出ない音があり、音響用途には向かないという。また、耐水性はなく、屋外での用途は想定していない。現状では、スピーカーに広告を印刷した布を被せて使う「音の出るポスター」「音の出るPOP」としての利用が考えられている。すでに、駅やイベントでの実証実験も行われており、反応もいいという。12月からは量産出荷も開始される予定だ。

TLFスピーカーを手に説明する室井國昌氏。実際利用する場合は、この上にポスター用の布を被せる

現在のところ、一般ユーザーへの直接販売は予定しておらず、印刷会社、広告代理店など通したBtoBビジネスとして展開される予定。

アサヒ飲料が駅でのポスターで利用した例

日本テレビがイベントで利用した例

製品は、A0サイズ(W811×D1,159×H1.5mm、460g)、B1サイズ(W698×D1,000×H1.5mm、350g)の2種類が用意され、価格は同一で105,000円。出力レベルは、A0サイズが最大92dB B1サイズが最大89dBで、再生周波数帯域はいずれも400~4,000Hz。最大20台を接続して利用することも可能だ。サンプル出荷予定数は合計100セットで、3年後には10億円の事業規模を見込んでいる。