日本アイ・ビー・エムは5月24日、東北大学が開始するプロジェクト「ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊の探索」に、サーバ「IBM System x iDataPlex」、ストレージ「IBM System Storage DCS9900」が採用されたと発表した。

IBM System x iDataPlex

同プロジェクトは、ビッグバン後の創生期の宇宙において、「反物質」が減少し「物質」だけが残ったメカニズムを探ることを目的としている。具体的には、素粒子「ニュートリノ」が発生しない二重ベータ崩壊の現象を実際にとらえ、その性質を解明することで、宇宙に反物質が存在しない理由に迫る。

二重ベータ崩壊では通常、不安定な原子核が崩壊し、電子と反ニュートリノが2個ずつ放出される。しかし、電荷を持たないニュートリノは反ニュートリノとニュートリノが同一であり、進行方向に対する回転の向きだけで区別されるという有力な仮説が長年議論されており、この仮説が真実であれば、2つの反ニュートリノ同士が打ち消し合い、反ニュートリノが発生しない現象が起こり得る。また、この現象をとらえることで、ニュートリノと反ニュートリノの同一性を実証できる。

ニュートリノと反ニュートリノの同一性を実証すれば、反粒子が粒子に変わり得ることがわかり、粒子と反粒子の数量の比が変化することが説明できるため、初期の宇宙で物質が残り、反物質が減少していった「物質・反物質の非対称性」発現の機構を究明できる。

同プロジェクトでは、岐阜県神岡町の実験施設において24時間体制で質量数136のキセノン同位体の二重ベータ崩壊を観測する。また、1日当たり約800GB以上発生する観測データを分析し、データから現象をコンピュータ上で再構成してシミュレーションしながら、二重ベータ崩壊においてニュートリノが発生しているかどうかを確認する。

今回刷新されたシステムにIBMのIBM System x iDataPlexとIBM System Storage DCS9900が採用された。新システムでは、複数ノードから高速アクセスが可能なIBMの分散共有ファイルシステム「General Parallel File System」を活用し、52台の計算用サーバへのデータ転送を高速化したことで、ニュートリノの観測データの解析速度を向上させることができた。