筆者の所属するグローバルナレッジネットワークでは、2008年から社内システムの一部にHyper-Vを導入している。Hyper-VはWindows Serverの標準機能であり、仮想化環境の根幹を成すものなので、導入に興味を持つ方も多いだろう。本記事では、Hyper-Vを採用するに至った経緯や、実際の構築作業などを2回にわたり紹介する。

なお、実際のプロジェクトではさらに多くの検討事項やリスクがあったのだが、今回の記事とは無関係なので割愛する。システム全体の開発裏話は弊社のパンフレットに掲載したので、興味のある方はダウンロードして読んでいただければ幸いである。

執筆者紹介

横山哲也(YOKOYAMA Tetsuya) - グローバルナレッジネットワーク


1994年からITプロフェッショナル向けWindows Server教育に従事。2007年にはVirtual Server、2008年からHyper-Vの教育コースを担当している。社内システムの仮想化に関しても、技術アドバイスと一部実作業を実施した。

2003年からMicrosoft MVP(Directory Services)を毎年取得。主な著書に「実践Active Directory逆引きリファレンス」(毎日コミュニケーションズ)がある。趣味は猫写真。Twitterアカウントは@yokoyamat。

システムの背景

グローバルナレッジネットワークは、IT分野を中心とした教育サービスを提供している。マイクロソフトやシスコ、オラクルなどのベンダー教育では、ほぼ毎年何らかのアワードを受賞しており、業界では一定の地位を占めていると自負している。特にマイクロソフトに関しては教育アワード創設以来毎年欠かさず受賞している。

サービス業では、顧客満足度が重要な評価項目である。グローバルナレッジでもコース終了後にアンケートを取り、今後の参考にさせていただいている。このアンケートシステムは、20年以上にわたりマークシートリーダーが使われてきたが、以下のような問題点があった。

  • 読み取れるのはマークだけなので、自由記述していただいた内容を共有するのが難しい
  • シートはある程度まとめて読み取るため、集計に時間がかかる(通常は最大1週間)
  • アンケート用紙のストック管理や、記入済みアンケートの管理が面倒

これらの問題を解決するために、オンラインアンケートシステム構築プロジェクト、コード名「Graviton」がスタートした。2007年11月のことである。Gravitonは「重力子」のことであるが、プロジェクトに対しての意味はない。システム設計担当者が「物理」好きだっただけだ。そもそもコード名は、本来の目的を隠すためなので、内容を想像されてはならないのである。その後正式名を付け忘れたので、社内では単に「オンラインQA(Quality Assurance)システム」と読んでいる。

プロジェクトメンバーはすべて社員であり、外注はしていない。プロジェクトマネージャ1名と、プログラマ3名(全体設計、Web担当、データベース担当)。筆者はOSと仮想化を含むインフラ設計を担当した。プロジェクトマネージャは元トレーナ、筆者を含むその他4名は全員現役トレーナである(写真)。

左がデータベース担当者、右がシステム全体設計の担当者でGravitonの命名者である