モーションキャプチャ技術がWindowsアプリケーションに

Microsoft Researchは今春、「Kinect for Windows Beta SDK」をリリースする。Kinectは、コントローラを使わずにプレイヤーの動きだけでゲームを操作できるXbox 360用の周辺機器だ。そのモーションキャプチャ技術がWindowsアプリケーションにもたらされる。

携帯電話で音楽を奏でたり絵を描いたり、そんなことができるようになるとは数年前は想像できなかった。すべてを変えたのはiPhone……。正確には身近なタッチインタフェースが登場したからだ。タッチ操作は人間の五感をコンピューティングに用いるNUI(ナチュラルユーザーインタフェース)のひとつであり、ほかにも音声、視線、ジェスチャーなど、NUIにはまだまだ多くの可能性が残されている。Kinectが発売から半年を待たずに1,000万台を超える大ヒットになったのも、それが人間の動きをキャプチャする身近なモーションインタフェースであるからだ。ゲームを変えただけではない。ハッカーたちの努力によって、Kinectセンサーをパソコンに接続してモーションキャプチャを用いた様々な試みが可能になったことがKinectの評価を高めた。こうしたハッカーたちの草の根的な活動が、SDKの登場によって公式にサポートされることになる。

Kinect for Windows Beta SDKでアクセスできる機能には、Kinectフィールド内の1人または2人のスケルトンイメージをトラックするRobust Skeletal Tracking、サウンドソースを特定し音声認識APIと連係する先進的なオーディオ機能、距離データを扱うXYZ深度カメラなどが含まれる。しばらくは、非商用のWindows 7アプリケーションの作成にライセンスを制限するという。

イメージボックスを作り、センサーとイベントを指定。キーノート中の数分の間に画面をペイントするプログラムを作成して見せた

「MIX11」では、Microsoftの技術者によるいくつかのアイディアが紹介された。例えば「Jellybean」はリクライニングチェアにKinectセンサーと電動の車輪を取り付けたもので、座ったまま手を前にかざすと、まるでフォースで動いているかのように椅子が動き出す。圧巻だったのは、Jonathan Fay氏による天体観測アプリケーション「World Wide Telescope」のKinectを使ったプレゼンテーションだ。体全体の動きで同アプリを操作しながら惑星と銀河系、宇宙全体を説明したのだが、まるでFay氏が宇宙をコントロールしているかのようでとても神秘的だった。

リクライニングチェアには4つの車輪が組み込まれており、右手で右側の2つ、左手で左側の2つの車輪の動きを操作する

ダイナミックなアクションで「World Wide Telescope」(右画像)を操作しながら、天体を説明するJonathan Fay氏

将来Kinectセンサーが広くPCに接続されるようになるかは、今の段階では分からない。まだMicrosoft Researchの試みに過ぎないのだ。ただ、例えばネット対応テレビをジェスチャーで操作できたらどうだろう。数年後にInternet of Thingsの時代がやってくるのなら、Windowsの操作にKinectが統合されることだって起こり得るように思える。